| 2009年3月23日 
   
     3.1.5 知識エリア: エンタープライズ分析: 何故(WHY)このプロジェクトが必要かを明確にします この知識エリアには5つのタスクがあります。 -ビジネスニーズを定義する -能力GAPを診断する -ソリューションアプローチを決める -ソリューションスコープを定義する -ビジネスケースを定義する 
  
 
   ビジネスアナリシスの真骨頂です。この知識エリアがBAの価値を決めると言っても過言ではありません。ソリューションを開発する真の理由(ビジネスニーズをベースにしたものでWHYに相当します)を明確にします。 ビジネス機会(または課題/問題)を明確にし、競合との差別化、理想の状態(ToBe)と現状(As_Is)とのGAP、GAPを解消するソリューション、ビジネスの収入増、コスト(ソリューション開発による)、そして最終利益を明確にし、ソリューション開発の最終判断の材料(をまとめたものをビジネスケースといいます)をスポンサーに提供します。そしてスポンサーは必要なソリューションへの投資を決断するのです。 どれだけ魅力的なビジネスケースを書けるかはビジネスアナリストの腕前次第と言えます。   他の知識エリアとの決定的な違いがあります。他の知識エリアのタスクは、一定以上のレベルのビジネスアナリストなら似た結果が出てきます。しかしこの知識エリア(エンタープライズ分析)では、ビジネスアナリスト個人への依存度がかなり高いという特徴があります。同じ現状を分析した結果、効果予測が収益30%増のソリューションもあれば、100%増のソリューションもありえます。必要な投資額も異なります。 スポンサー/組織にもよります。ハイリスクハイリターンを好むスポンサー/組織もあれば、ローリスク・ローリターンを好む堅実的なスポンサー/組織もあります。スポンサー/組織によってソリューション内容(アプローチを含めて)を柔軟に考える必要があります。ビジネスアナリストはそれらに柔軟に対応できなければいけません。   重要な知識エリアですので、以下にタスクの具体的な内容を簡単に説明します。   3.1.5.1 タスク: ビジネスニーズを定義する Input: [ビジネスのゴールと目標]とタスク(3.3)のOutput[要求(記述)] 与えられたゴールと目標を確認します。 現状を把握し、ビジネス機会を最大にするためには何が必要かを考えます。 または、解決しなければいけない課題/問題を明確にします。 そして、望ましい結果(ToBe)を明確にします。 望ましい結果(ToBe)の例です。 -新製品またはサービス、競合弱点への取り組み、競合優位性の確立 -売上増による収益の改善 -従業員満足度の向上 -製品またはサービスの納入時間の短縮 Output: [ビジネスニーズ]   このタスクで使用するテクニックの例(説明は省略します):  -ベンチマーキング -ブレーンストーミング -業務ルール分析 -フォーカスグループ -機能分割   3.1.5.2 タスク: 能力GAPを診断する Input: タスク(5.1)のOutput[ビジネスニーズ]、[エンタープライズアーキテクチャ] 現状のエンタープライズアーキテクチャをもとに能力診断をします。 そして、要求される新しい能力を診断します。 能力の例です。 -ビジネスプロセス -アプリケーションソフトの機能 -エンドユーザの遂行する業務 -組織が創出する製品 Output: [要求能力]   このタスクで使用するテクニック: -ドキュメント分析 -SWOT分析   3.1.5.3 タスク: ソリューションアプローチを決める Input: タスク(5.1)のOutput[ビジネスニーズ]、タスク(5.2)のOutput[要求能力]、[組織のプロセス資産] ソリューションアプローチの例です。 -組織内の既存のソフト/ハードの活用 -ベンダーから新ソフト/ハードを購入(リース)する -カスタムソフトを設計・開発する -ビジネスにリソースを増加もしくは組織変更をする -ビジネスのプロセスまたは手順を変更する 業務アプリソフトを作ることだけがソリューションではありません。組織変更やビジネスプロセスの変更(BPRを含む)までが、BAの業務の対象です。場合によっては、人材育成も含まれる可能性もあります。ですから、ITスキル標準も対象になりえます。ただそこまでBABOK®には明記してありませんが。 ビジネス目標と特定された能力GAPを解消するために、なるべく多くのアプローチ(選択肢)を考えます。そして診断し、最良な選択肢を選びます。 Output:[ソリューションアプローチ]   このタスクで使用するテクニックの例です。 -ベンチマーキング -ブレーンストーミング -決定分析 -見積り -SWOT分析 -フィージビリティ分析   3.1.5.4 タスク: ソリューションスコープを定義する プロジェクトやイニシアチブが実現するのはどの能力なのかを明確にします。 新しく必要とする能力の例: -ビジネスプロセス、組織単位、アプリケーションソフトなど、ソリューションコンポーネントが支援する能力
 -新しい能力は単独リリースで実現するのか、それとも逐次的(スパイラルやアジャイル)に実現するのか
 スコープを定義し、ソリューションの主要な機能、何がスコープ内で何がスコープ外なのかを記述します。 そして実施方法のアプローチも明確にします。   テクニック -分割 -インターフェース分析 -スコープモデリング -ユーザーストーリ -問題ステートメントまたはビジョンステートメント   3.1.5.5 タスク: ビジネスケースを定義する ソリューションのもたらすビジネス上の効果(売上増など)を明確にし、コストを見積り、利益を計算します。予測できるリスクを診断し、対策を講じます。 スポンサーが投資を決断する材料として使われますから極めて重要です。 ここがうまくまとまらないと、プロジェクトは開始できません。   テクニック -決定分析 -見積り -メトリクスとKPI -リスク分析 -SWOT分析   3.1.6 知識エリア: 要求分析
 この知識エリアではまず要求に優先順位を付け、そして各種モデリングを活用してソリューションが何をするべきか(WHATに相当します)を明確にします。   6つのタスクがあります。 -要求に優先順位をつける -要求を組織化する -要求を仕様化しモデル化する -仮定と制約を決める -要求を検証する -要求の妥当性を確認する 
  
   使用するテクニックの例は次のとおりです。 -受け入れと評価の基準の定義 -業務ルール分析 -データフロー図 -データモデル -機能分割 -組織のモデル化 -プロセスモデル -問題追跡 -リスク分析 -シナリオとユースケース -スコープモデリング -メトリクスとKPI -プロトタイピング -シーケンス図 -状態図 -非機能要求分析 -ユーザストーリ -構造化ウォークスルー 非常に多くのモデリングテクニックを駆使する必要があることが分かります。 ソリューションの種類、アプローチによって必要なテクニックも変わります。   3.1.7 知識エリア: ソリューションの確認と検証: やるべきことが本当にできているかを明確にします
   この知識エリアでは6つのタスクがあります。 -ソリューションを診断する -要求を分配する -組織準備を確認する -移行要求を定義する -ソリューションを検証する -ソリューションのパフォーマンスを評価する 
  
 
   使用するテクニックの例です。 -受け入れ基準と評価基準の定義 -決定分析 -ベンダー診断 -業務ルール分析 -機能分割 -DFDとプロセスモデル -フォーカスグループ -インタビュー -組織モデル -SWOT分析 -根本原因分析 -観察     上記3つの知識エリアは、主にビジネスアナリストが行う分析作業と問題解決の作業に相当します。   BABOK®では、6つの知識エリアはだけでなく、ビジネスアナリストとして当然兼ね備えてなくてはいけない基礎スキル(Underlying Competencies)も定義してあります。 次回に解説します、お待ちください。 
 
 
 
    
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
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