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ITSSユーザーズカンフェランス2008 レポート 【後編】

1212日(水)に開催されたITSSユーザーズカンフェランスの続報です。

 

前回は主にITSS/V3について批判的な意見をご紹介しました。批判ばかりしていても解決策にはなりませんので、どうすればうまくいくか考えてみましょう。

まず、情報処理試験とITスキル標準がいつまでも別々のままで良いのでしょうか。これには多くの人が何とかしなくてはいけないと思っているでしょう。筆者もそう思います。別々で良いと思っている人は少数だと思います。それに関しては「産業構造審議会」での取りまとめは極めて意義のあるものだと思います。また、それを取りまとめられた座長(有賀氏)のご苦労は並大抵のものではないと推察します。この点に関しては、心から謝意を表したいと思います。

ある一定のレベル(特に低いレベル)までは情報処理試験の合格を持ってレベル判定するのは意味があると思います。

 

しかしながら、どこでレベルの線を引くのか(原案ではレベル3までは試験の合格を持って判定する)かに異論が集中しています。また試験では知識は測れますけど、経験や技能(できること)を測ることは根本的に無理がある、というのが大方の意見です。清水も概ね同感です。

 

ではどうすれば、推進論と反対論が一致できるのでしょうか。あまり難しくないと思います。試験合格をレベル判定の十分条件ではなく、必要条件もしくは参考条件に格下げすればよいのです。そしてあくまで、レベル認定は「社内認定」を尊重する。こうすれば大方の反対論者も納得するのではないでしょうか。学生が取得できる「基礎情報処理」が自動的にレベル2に判定されるのもふせげます。特にレベル3は「独力で仕事ができる」のですから、試験で測れる「知識」のみで判定してしまうと、レベル3と思って、雇ったけれど独力で仕事ができないことが判明した場合、訴訟のリスクまで発生します。経産省が訴えられたらどうするのでしょうか。

 

さらに筆者は、レベル4の高度試験については、試験そのものに反対します。

レベル4の高度人材は「他者を指導できる」レベルです。試験で計測することは発想そのものがナンセンスといわざるを得ません。情報処理技術者試験からレベル4を外すことを提案します。レベル4はレベル5同様に、業務履歴と審査(面接)で行うべきです。

これは日本人の悪い癖でしょうか、何でも試験で測ろうとするのは無意味なことが多いものです。いわゆる試験マニアを助長し、実力のある人材を埋もれさせる要因になります。学歴社会の名残としか言いようがありません。試験の得手、不得手はかなりあります。ハイレベルな人材ほど、試験成績と実務能力の相関が低くなります。また、レベルの高い試験問題を作成するコストも飛躍的に高まると思います。それにもかかわらず、実務能力との相関が低くては税金の無駄遣い以外の何物でもないでしょう。

 どうしても「高度試験」を実施するというのであれば、まず、試験成績と実務能力との相関を客観的に証明することが必要だと思います。その提示がない限り、税金の無駄遣いのそしりを免れないと思います。

 

今回はETSS/UISS関連のトピックスを3つご紹介します。

 −ETSS策定ポリシーと活用状況(渡辺 登 氏)

 −ETSS実証研究WG活動報告(東谷 上 氏)

 −UISS Ver1.1の概要と活用について(高本 久 氏)

今まではITSSのことしかテーマとして扱ってこなかったのですが、今回からUISSおよびETSSに関するテーマを扱うようになりました。これはユーザー協会として、スキル標準としてはITSSのみならず、ユーザースキル標準および組み込み系まで扱うべきだという判断の表われです。

清水もまったく同感です。このマガジンでお伝えしてきたように、ITサービスベンダーがETサービスベンダーに変身しつつあります。ETSSのユーザーの多くは従来のITサービスベンダーです。昔(20年前のマイコン時代)と異なり、メーカーは組み込みソフトの開発をあまりしなくなってきたようです。ソフトウェアの規模が大きくなったのが大きな要因だと思いますが、ソフトウェアを外部のETサービスベンダーに委託しているのです。そしてそのベンダーはITサービスとETサービスの両方のビジネスを行っています。同じ会社の中にITSSのエンジニアとETSSのエンジニアが混在しているわけです。さらにエンタープライズ系の委託業務は減少傾向で、組み込み系のソフトウェア開発の委託業務が増加傾向にありますから、今までITSSでスキルを規定していたエンジニアがある日突然、モバイル開発を担当になりETSSのスキルが必要になってきている。という現実があります。同じ会社の中で2つのスキル標準が混在し始めてきているのです。

 

ではどのようにスキル標準を統合したら良いのでしょうか。 残念ながらまだ回答はありません。 そのヒントとなる試みが今回発表のテーマになっています。

 

ETSS策定ポリシーと活用状況」  IPA SEC 渡辺 登 氏 

http://www.itssug.org/docs/conference2008/seminar4.pdf

ETSS策定の経緯が述べられています。ぜひご覧ください。

 

ETSS実証研究WG 活動報告」

ITAでのETSS導入検討事例報告」  情報技術開発(株) 東谷 氏

http://www.itssug.org/docs/conference2008/report2.pdf

ITAInformation Technology Alliance)独立系情報サービス企業14社による企業連合体で、1995年に設立されました。その中の1企業におけるETSS導入検討の事例紹介です。

まだ成果までは出ていませんが、その心意気は伝わってくると思います。

本年より、ユーザー協会保有のスキルインベントリスツール(SSI-ITSS)を使って、活用システムを構築し実証していくことになります。 乞うご期待。

 

「情報システムユーザースキル標準の概要と活用について」  

JUAS 情報システムユーザースキル標準センター   高本久 氏

http://www.itssug.org/docs/conference2008/seminar3.pdf

UISSについて要領よくまとまっていますので、ぜひご覧ください。ユーザー企業のみならず、情報システムベンダーにとっても大変有益です。顧客の情報システム部門は何を考えているのか、システムベンダーに何を期待しているのかがよくわかります。特にユーザー企業の情報システム子会社にとっては必見です。親会社の状況(強み/弱み)をつかむ手掛かりとなります。

特に「ユーザー企業における機能別に見た組織の変遷」はITベンダーに示唆を与えてくれます。


                                                           高本氏発表資料より   

下の「ユーザー企業における情報化関連業務の分類」などは自分たち(ベンダー側)の立場を明確にしてくれますし、次の一手を考える重要なヒントになると思います。使わない手はありません。


                                                                        高本氏発表資料より

UISSのタスクフレームワークです。
UISSはこのタスクを標準化lしたものです。人材像(職種)を標準化したものではありません。

                                                             高本氏発表資料より   

上のタスクの中で、顧客情報システム部門の強いところはどこでしょうか。逆に弱いところはどこでしょう。
顧客情報システム部門の弱いところを補強するようなスキルを身に付ければ、立場が変わることも夢ではないでしょう。



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