2007年12月25日付で、例の「情報処理技術者試験 新制度」が最終版として発表されました(12/25付)。そして気になっていたパブコメの回答も同時に発表されています。
清水のコメントへの回答もあります(あまり納得できるものではありませんが)。
「パブリックコメントの概要等について」より
「パブリックコメントの概要等について」(パブリックコメントの結果概要及び寄せられたご意見と回答)(情報処理推進機構(IPA)): 12/25/2007
http://www.jitec.jp/1_00topic/topic_20071225_shinseido_5.pdf
全体的な回答内容が大変気になっています。
回答の理由として例の「産業構造審議会....人材育成ワーキンググループ」の報告書があまりに多く使われていて、まるで金科玉条、憲法のような扱いです。
具体的例を2つご紹介します。
例14:経済産業省「人材育成WG報告書」26ページにおいて、共通キャリア・スキルフレームワークの7段階のうちレベル1〜3の評価は、知識及び技能について能力ベースで行うこと、レベル4の評価は知識・技能及び資質について成果ベースで行うこととし、情報処理技術者試験の合格に加え、業務経験等を併用することとされています。これらのことに基づき、新しい試験制度を設計しています。(下は質問とそれへの回答です)
例19:経済産業省「人材育成WG報告書」26ページにおいて、共通キャリア・スキルフレームワークの7段階のレベルが定義されています。このことに基づき、レベル1〜4に対応する試験区分を設定し、試験制度を設計しています。(下は質問とそれへの回答)
何と、149件の回答中33件がこのような回答です(全体の22%)。特に制度改定全般に関する28件のコメントへの回答15件が「人材育成WG報告書」を理由に使っています。その比率は54%です。回答しているのではなく、「人材育成WG報告書」に書いてあることを実現しているだけ、という論調です。「人材育成WG報告書」に書いてあることはすべて正しい、という立場しかありません。意見(パブコメ)の多くは、その「人材育成WG報告書」に書かれていることはおかしいのではないか、というものなのですが、回答がこのようなありさまですと、なんのためのパブコメだったのかという気分になります。
ではその金科玉条「人材育成WG報告書」に対するパブリックコメントとその回答(7/27付け)はどうだったのでしょうか。ご覧ください。
http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g70727a04j.pdf
まず、パブコメ自体の注目度がかなり低かったのが気になります。
パブコメへの回答より
意見提出者はわずか45者(法人を含む)のみでした。新試験制度では127者(個人90者、団体37者)もあることを考えると、雲泥の差です。お読みになった方はわかると思いますが、大変わかりにくい報告書だと思います。事実に関する記述が少なく、意見のみから結論(提言)を出しているようなところが多く、論理的な文章構造とは言い難いものです。そのためでしょうか、コメントを提出する気にならない人たちもいたのではないでしょうか。また、次回(試験制度の時)に具体的なコメントを提出した方がよい、と思った人もいたかもしれません(これも清水の意見です)。そのような人達の考えは見事に裏切られたようです。
意見ばかり述べても説得力がないかもしれませんので、ぜひ実物(事実)をご覧いただくことをお勧めします。お読みになって、ご自分で考えていただくのがよろしいと思います。
http://www.meti.go.jp/press/20070720006/03_houkokusho.pdf
第5章に(A)から(G)まで具体的施策(提言)があります。
例えば(A)の「人材需給の好循環メカニズムの構築」は夢のような話で、こういうことができることに越したことはなく、反対する人はあまりいないでしょう。しかし具体性(1〜2年以内で)は殆どありません。またこの提言の論理的根拠が希薄だと思います(清水の意見)。
一方、(D)の「情報処理技術者試験とスキル標準の統合による客観的な人材評価メカニズム」は新試験制度の話で、きわめて具体的内容です。この、夢のような話の提言(A)と新試験制度(D)が同列に施策として掲げられていることに違和感を覚えるのは筆者だけでしょうか。もう少し整理した(願望レベルの提言とコミットメントレベルの提言を分けた、もしくは提言に優先順位をつけた)報告書であってほしいと思います。そしてパブコメも別々にしないと何をコメントするべきかが不明になってしまうと思います。
もうひとつ気になるのは各施策(提言)の論理的根拠(事実ベース)が乏しく、いきなり提言として結論付けられているものが多いように思います。例えば(C)の「教育方法の確立」はいきなり各論が結論付けられています。第3章の「現状と課題」では「企業内における人材育成」の問題点だけ記述されていますが、結論に至る筋道は何もありません。提言内容が間違いとは言いませんが、報告書ですから事実をもとにした論理を組み立てるべきだと思います。(E)のダブルメジャー(初耳の人もいるでしょう)もそうです。(F)「グローバルIT人材育成メカニズム」、(G)「人材育成のための推進体制づくり」も、あまり根拠が明確ではないと思います。読者は誰だと思っているのでしょう?国民(納税者)ではないでしょうか。もう少し国民(納税者)にわかりやすい文章にするべきものだと思います。読んで、大変わかりにくい文章(もしくは文章構造)だと感じるのは筆者だけではないと思います。
裏を返せば、意見(パブコメ)を出しにくいように、わざとわかりにくい報告書にしておいて反対意見を減らそうという意図があるのではないかと勘繰りたくなります(決してそのようなことはないと信じていますが)。
そして数少ない反対意見に適当に回答し、本番の「新試験制度」への数多いパブコメに対しては「WGの報告書のとおり...」と回答しているような気がします。少し言いすぎでしょうか。
経産省の姿勢は、聞く耳持たず、に見えてしまいます。
これで本当に適切な試験制度を構築し運営することができるのでしょうか。聞く耳持たない経産省にとって、パブコメはほとんど機能していないようです(些細な部分だけは機能しているかもしれませんが)。
もう少し幅広い意見を収集し実効性の高い制度にしていただきたいと思います。
このままでは、国民の支持を得られない制度になりかねないと思います。受験者も減る可能性すらあります。ITスキル標準の普及にも影響が出ることを大変懸念します。
【後編に続く】
|