10月31日に「ITスキル標準V3 2008」 が公開されましたので、速報としてお伝えします。
興味のある方は本物をご覧ください。
URL: http://www.ipa.go.jp/about/press/20081031-1.html
まず全体として、今回の改訂は極めてマイナーなものです。ITスキル標準V3であることに変わりなく、今年の3月に改訂されたV3と基本的な内容は同じです。すなわち職種(専門分野を含めて)、レベルの定義、スキル項目などは何も変更ありません。
V3(3月発表)おいて、レベル1とレベル2が共通になったことはご承知の通りです。その時点では研修ロードマップはまだV3に対応しておらず、V2のままでした。今回のV3 2008では、研修ロードマップもやっとV3に対応したものになりました。本来なら、3月に発表するべきものだったかもしれませんが、事務的作業の関係だと思います。今回、共通のレベル1、レベル2に対応した研修ロードマップ発表されました。(以下のBの部分)
10月21日に「共通キャリア・スキルフレームワーク 第一版」が公表されましたが、ITスキル標準はこの「共通キャリア・スキルフレームワーク」を参照することになっていました。そのため、この「共通キャリア・スキルフレームワーク」との整合性の説明(以下の@の部分)、及び情報処理技術者試験との関係(以下のAとCの部分)が追加されています。ただし、V3の内容(特にレベルの判定方法)が変更されているわけではありません。
具体的なV3/2008の主な改訂は次のとおりです。
@ 共通キャリア・スキルフレームワークとの整合性の向上
A キャリアレベル4の評価方法に情報処理技術者試験の位置づけの明確化
B レベル1とレベル2の研修ロードマップの改訂(職種の定義を一本化したことに対応)
C スキルディクショナリ(試験との対応表)の追加
上記4点に関して、以下に解説します。
@ 共通キャリア・スキルフレームワークとの整合性の向上
概要編のP23に次の表が追加されました。
表1. 共通キャリア・スキルフレームワークと職種の対応関係
「ITスキル標準V3 2008 概要編」より引用
この表は10月21日に発表された「共通キャリア・スキルフレームワーク」からそのまま引用されています(UISSとETSSの部分は省略されていますが)。
これは下の図(参照モデルとしての共通キャリア・スキルフレームワーク)の「参照」の仕方を具体的に示しているものです。
準拠するのではなく、参照するだけですので、例えば共通キャリア・スキルフレームワークにはない「エデュケーション」職がITSSには存在します。
A キャリアレベル4の評価方法における情報処理技術者試験の位置づけ
レベル4の評価方法に試験を活用する場合、ITSS職種と試験区分との対応が必要になります。「プロジェクトマネジメント」は「プロジェクトマネージャ試験」に対応するのは明確です。しかし、「ソフトウェアデベロップメント」は「データベーススペシャリスト試験」でしょうか、「ネットワークスペシャリスト試験」でしょうか。そのような疑問に答える形で、次の一覧表が提供されました。
表2.情報処理試験との対応関係
レベル
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職種
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専門分野
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試験区分
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注釈
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レベル4
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マーケティング
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ITストラテジスト試験
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セールス
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ITストラテジスト試験
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コンサルタント
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ITストラテジスト試験
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ITアーキテクト
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システムアーキテクト試験
ほか
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注1
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プロジェクト
マネジメント
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プロジェクトマネージャ試験
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ITスペシャリスト
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プラットフォーム
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ネットワーク
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ネットワーク
スペシャリスト試験
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データベース
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データベース
スペシャリスト試験
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アプリケーション共通基盤
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システム管理
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セキュリティ
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情報セキュリティ
スペシャリスト試験
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アプリケーション
スペシャリスト
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システムアーキテクト試験
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ソフトウェア
デベロップメント
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基本ソフト
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ミドルソフト
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応用ソフト
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システムアーキテクト試験
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カスタマサービス
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ITサービスマネージャ試験
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ITサービス
マネジメント
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ITサービスマネージャ試験
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エデュケーション
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レベル3
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応用情報技術者試験
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レベル2
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基本情報技術者試験
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レベル1
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ITパスポート試験
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「ITスキル標準V3 2008 概要編」より引用
この一覧表により、ITSS職種と試験区分の対応が一応明確になりました。自分の職種が一覧表に載っているエンジニアにとっては進歩と言えると思います。それなりに親切なものではないでしょうか。
しかし、この表に載っていないエデュケーションや、ITスペシャリスト(プラットフォーム、アプリケーション共通基盤)、ソフトウェアデベロップメント(基本ソフト、ミドルソフト)のエンジニアはどうすればよいのでしょうか。今後の課題のようです。
概要編には以下の記述がされています。
「試験区分の欄が空白の職種、専門分野には、当面対応する
情報処理技術者試験が設定されていない。」
これも単なる参照ですから、すべての職種が試験に対応するまでにはいたっていないようです。
レベル4のレベル判定に変更は何もありません。ITSS/V3(3月発表)と全く同じです。
概要編の記述です。
「高度試験(ITストラテジスト試験、....)はそれぞれの職種に要求されるレベル4の「知識」と高度な「技能」を測るものであるから、試験の合格によってITスキル標準で最低限必要とするスキルの熟達度合いをほぼ満足していると見做すことができる。
ただし、レベル4では実ビジネスの世界で求められる総合的な能力発揮と責務遂行の実績、および技術の発展や後進の育成等のプロフェッショナルとしての実績が要求されるため、「達成度指標」による評価が不可欠である。従って、レベル4に関しては、高度試験の結果と「達成度指標」で測定する業績の双方から評価する必要がある。」
(ITスキル標準V3 2008 概要編より)
B レベル1とレベル2の研修ロードマップの改訂(職種の定義を一本化したことに対応)
今回の改訂では、このロードマップが変更になりました。
すでにV3が3月に発表された時点で明らかでしたが、事務作業が間に合わなかったのでしょう。半年遅れで、レベル1、レベル2のロードマップが改訂に至ったのです。内容はいたってシンプルです。
研修ロードマップ より引用
ロードマップはシンプルになりましたが、代わりに標準カリキュラム(シラバス)が発表されています(レベル1は6/26付。レベル2は8/29付)。2つの標準カリキュラムは研修ロードマップよりはるかに実用的な内容で、具体的なカリキュラムが組めるようになっています。
詳細は以下のURLのWebページの「付属書のダウンロード」から入手できます。
URL: http://www.ipa.go.jp/jinzai/itss/download.html#fuzokusho
ITスキル標準モデルカリキュラム(シラバス)
レベル2を目指して:
レベル1を目指して:
C スキルディクショナリ(試験との対応表)の追加明確化
これも「共通キャリア・スキルフレームワーク」との整合性の一環の一部かもしれませんが、スキルディクショナリの一部として追加されました。
ITスキル標準V3 2008 より引用
ここまでリストできると、情報処理技術者試験をITSSレベル判定に活用しようとしている組織にとってはやりやすいものになったと思います。また、受験によりITSSのレベルを向上したいと思っているエンジニア個人にとっても有益ではないでしょうか。
以上簡単ですが、「ITスキル標準V3 2008」の速報として解説いたしました。
少しでも読者の皆様のお役に立つことを願っています。
尚、2008年3月に公表された、ITスキル標準V3の概要についてお知りになりたい方は、下記URLの弊社Webページをご覧ください。
【ITスキル標準V3 発表】
URL: http://www.kbmanagement.biz/sub360.html
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