2009年12月21日
3.実証実験(ヒアリング)の結果と今後の方向
合計16社がこの実証実験に参加していただきました。企業名は公表しないという条件でしたので、アセスメント結果の素晴らしい企業様も今回は匿名扱いです。読者の皆様にご了解いただきたいと思います。
ヒアリング時の代表的なコメントです。全て好意的なコメントでした。
スライドにもありますように、「見える化」は大成功でした。この簡易アセスメント(自己診断)を実施するだけでも多くの気付き、改善点が見えた、という方々がほとんどでした。
「強み/弱みが明確になった」というコメントはその典型です。
その延長にあるのが、「やっていないプラクティスが分った」です。客観的なアセスメントが有効いなことを示しています。
「ToBeがないことがよく分った」という多くのコメントはこの業界を象徴しています。
「ビジネス戦略」というカテゴリーをアセスメントに入れるかどうか大きな議論でした。CMMI(ピープルCMMも)やその他の知識体系には「ビジネス戦略」に該当するカテゴリーはありません。普通の企業ならビジネス戦略を持っていることが当たり前だからです。ですから、アセスメントする必要などはどこにもないのです。
しかしながら、日本のIT産業は仕事があるのが当たり前の状況が長く続いてきました。企業の大小にあまり関係なく、グループ企業(旧財閥その他の資本関係)からの受託開発をこなしていればよかったのです。そのため今でもビジネス戦略(もしくは経営戦略)を明確に持っている企業はあまり多くありません(皆無というわけではありません。独立系のIT企業では立派なところもあります)。今回のデータもその差が如実に出ていますが、企業名が公表できないため分かりづらくて申し訳ありません。
アセスメント(アンケート方式)自体の改善点です。自己評価してもらいましたので、回答者によるバラツキ(強気/弱気)がありました。担当者レベルでは辛口の評価が多いようでした。経営者クラスが回答されると、ポイントが高くなる傾向がありました。
また、ITスキル標準を検討中の企業の担当者は、他社に比べてレベルの低いことを経営者に見せることで、本格的にITSSを導入するための理由付けにしようとする意図もあったようです。
今回はレベルの絶対精度を保証するものではありません。あくまでも「見える化」が目的です。各企業の改善点が明確になり、アクションが早く取れることの方が重要です。ですから、このバラツキは目をつぶることにしました。
逆にバラツキを減らすためには、より深いアセスメントが必要です。今回は簡易版ですから、プロセス領域のゴールのレベルで24個の質問にとどまっています。ゴールだけでなく、より深いプラクティスレベル(80個のプラクティス)でアセスメントする必要が出てきます。レベル4のアセスメントにはプラクティスレベルが不可欠ではないでしょうか。
今回のアセスメントはレベル3のプロセス領域にフォーカスしたものです。レベル4を判定するためには、プロセス領域(ゴールやプラクティスも)それなりのものが必要です。レベル3を達成している企業の次のステップのアセスメントには不可欠です。
今後の方向性です。
なるべく多く使ってもらいたいと考えています。そのため、当日の会場でアンケート用紙そのものを配布しました。いずれこのサイトでも公表する方向で検討しています。ただアセスメント内容が独り歩きすることは避けたいし、著作物として正当な扱いも必要ですので、良い方法を模索中です。
Brush Upの活動も必要です。優先順位はスライドとは逆になる可能性もあります。レベル2は精度を高めることに大きな意味はありません。ほんの通過点です。レベル3の企業が少なくないと思いますので、次のレベル4が判定できることがより重要になってまいります。早く、レベル4判定を可能にするように取り組みたいと思います。
最初に掲げた目的です。
「ITSS活用の成熟度を“見える化”する」ことは大成功でした。
レベル3以上に判定できる企業の「成熟度レベルを公表し、活用企業の認知度を向上」出来るように取り組んでいきたいと思います。
また、活用された企業のレベルが3、4になればおのずからその企業の「企業価値」も向上します(むしろ企業価値の向上がレベル4の条件です)。
以上3回にわたり、連載しました「スキル標準成熟度モデル(SMM)」の解説を終了いたします。
多くの方から、SMMに関して高い関心をいただいています。
是非、忌憚のないご意見をお寄せいただければ光栄です。
よろしくお願いします。
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