ETSS(組込みスキル標準)は、次の3部構成です。
−スキル基準
−キャリア基準
−教育研修基準
図示すると以下のようになります。
ITA発表資料より引用
3部構成ですが、基となっているのはこれから解説する「スキル基準」です。上の図からわかるように、「キャリア基準」「教育研修基準」は「スキル基準」を基点にして作成されています。
ですから、ETSSのすべての基はスキル基準ということになり、それだけ重要な位置づけになっています。
それでは、ETSSの中核となる「スキル基準」について解説いたします。
3.ETSSスキル基準とは
ETSSスキル基準は次の3種類からなります。
−技術要素
−開発技術
−管理技術
重要なことはスキルをこのように分類したことです、
前回述べたように、従来はすべてが製品すなわち技術要素(CPU、OS)の下に開発技術(プロセス)、管理技術(プロジェクトマネジメント)が置かれていて、製品独自の開発プロセス、製品独自のプロジェクトマネジメントを行っていました。いわば製品に依存する閉じた世界でした。それを、製品に依存しない部分と製品に依存する部分に分割したのです。共通技術、共通開発プロセス、共通プロジェクトマネジメントです。これは製品に依存しないオープンな方法と言えます。
そして、この3種のスキルカテゴリを階層構造に組み立て、上位階層では製品に依存しない部分にまとめ上げたのです。
IPA発表資料より引用
順番に解説します。
3.1 技術要素スキルカテゴリ
3.1.1 技術要素の7つのカテゴリ
「IPA組込みスキル基準」より引用
いかがでしょうか。組込みシステムで構成される技術要素をうまく7種類のカテゴリ(第1階層として)に分類してあります。CPUやOSは「7 プラットフォーム」の下の第2階層の技術要素として位置づけられました。従来はここが大きく、8bitCPU(XXチップメーカのYYYY)、16bitCPU(ZZチップメーカのWWWW)など、そしてそのCPUチップに合った基本ソフトウェア(OS)として、ITRON、VVV-RTOS...、Linux、だったのです。そのような固有のデバイス、固有のOSなど、固有の技術要素は全て第3階層以下に位置づけるようになりました。
自動車などの制御(エンジン、ブレーキ、その他)に必須のセンサ、アクチュエータなどは計測・制御(第1階層)の下の理科学系入力(第2階層)と理科学系出力(第2階層)に位置づけられます。そして、第3階層以下で製品固有のセンサー種類(メーカ名)、アクチュエータ種類(メーカ名)を規定することになります。この辺は、ITSSで言えば、スキル定義でリレーショナルデータベースまでは規定されていますが、具体的な製品名(例えば、Oracle-XX)までは規定されていないことに相当します。
このようにして、ETSSでは第2階層まではETSSで定義し、第3階層以降は開発対象に合わせたスキル項目を自由に設定できるようにしてあります。こうすることにより製品に依存する開発方法から脱却し、製品に依存しないオープンな方法に転換しようとしているわけです。
3.1.2 スキル基準のレベル定義
具体的なレベル定義をご紹介します。
レベル4: 最上級 新たな技術を開発できる
レベル3: 上級 作業を分析、改善・改良できる
レベル2: 中級 自律的に作業を遂行できる
レベル1: 初級 支援の基に作業を遂行できる
やはり物造りへのこだわりがあるようです。レベル4では発明や特許を想定しているのかもしれません。ITSSの世界では全く考えられていません。
これはITSSに比べて随分厳しい定義ではないでしょうか。
ちなみにITSSでは、「スキル熟達度」の定義は以下のように、「達成度指標」とリンクしています。
例:職種:アプリケーションスペシャリスト
スキル項目:デザイン スキル熟達度レベル4
ピーク時の要員数3人以上のアプリケーション開発プロジェクトにて、
開発チームリーダとして、開発環境要件、データベース要件を満たす
アプリケーションデザインを実施することができる。
この辺が、ITSSとETSSの重要な差異と言えます。
2つのスキル標準でスキルレベルの定義が大きく異なっています。同じ会社で2つのスキル標準を使わなければならないケースで困惑すること間違いありません(現に困っています)。
ちなみに、ITSSユーザ協会の教育企画委員会では、外部ISVの資格(PMPやOracle
master、その他)をITSSレベルにマッピングした表を作成し公開しています。
本年度は、ユーザ協会の名称を「スキル標準ユーザ協会」に変更することもあり、ETSSの外部資格をマッピングする作業が進んでいます。ここで議論となったのは、上記のスキルレベルの定義の差です。ITSSは達成度指標にリンクしていますから、外部資格をITSSレベルに対応することが比較的容易に可能です。しかしETSSでは、上記のように非常に厳しいスキル基準のレベル定義を用いていることと、スキルの分布特性(後で解説します)がありますので、外部資格をETSSレベルにマッピングすることは断念せざるを得ませんでした。
尚、本年のマッピングの具体的な最終成果(ETSSを含む)は12月のユーザカンフェレンスで発表しますので、それまでお待ちください。
昨年の実績(ETSSはありません)は以下のURLをご覧ください。
URL: http://www.itssug.org/docs/isv/ISV-MAPver2.1_20080213.pdf
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