2009年10月13日
BABOK(R)2.0では知識エリア「エンタープライズアナリシス」に「ビジネスニーズを定義する」というタスクが加わりました。極めて重要なタスクです。BABOK(R)はシステム開発の超上流とか最上流と言われたりします。この新しいタスクこそ、最上流に位置づけられるもので、ビジネスアナリシスの根幹に関わるタスクと言えます。ではどうやってビジネスニーズを定義したら良いのでしょうか。
残念ながらBABOK(R)ガイドにはそこまで具体的な方法論は載っていません。どのような方法でもかまわないというのが方針です。
では、「ビジネスニーズを定義する」ためには何をしたらよいでしょうか。
ビジネスニーズにもいろいろあります。
-ビジネスの売上増、マーケットシェア増
-コストの低減による利益確保
-顧客満足度の向上
-顧客クレームの減少
など
大きく分類すると、ビジネス上の問題とビジネス機会です。ビジネス上の問題はその根本原因を追及することが基本です。根本の原因が突き止められれば問題解決は難しくありません。
一方、ビジネス機会を明確にすることは容易なことではありません。現状の認識の仕方により機会の定義そのものは大きく異なります。個人差もあります。組織の特質も影響します(ハイリスク・ハイリターンを好む組織もあれば、堅実路線を好む組織もあります)。
ここでは、顧客ニーズを基にビジネス機会を特定し、ビジネスニーズを定義する方法を紹介します。
今号から数回にわたり連載します。
-顧客とニーズ(1)
-競合 (2)
-理想の製品・サービス(3)
-ビジネスのゴールと目標(4)
ヒントは弊社Webページの「ITビジネス戦略事始め」です。お読みになった方も多いと思います。最近アクセスが非常に多いページです。まだお読みになっていない方は、ぜひお読みください。
この内容をBABOK(R)流にアレンジするとまさに「ビジネスニーズを定義する」タスクになります。
1. 顧客とニーズ
「お客様は神様です」はあまりに知れた名言で、ビジネスの基本中の基本です。
お客さまは誰でしょうか? お客さまのニーズはなんでしょうか?
この2つの質問にまじめに取り組むことは極めて重要です。これこそが、ビジネス戦略の根幹となります。
ここで理解することは、
-外部環境(マクロ環境、顧客の業界など) (1.1)
-現在と将来の顧客ニーズ (1.2)
-顧客セグメント (1.3)
-セグメントにおける競合分析 (2.1)
-目標とするセグメントを見つける (2.2)
などです。
1.1 外部環境分析(データ収集)
マクロ環境や、顧客の業界動向、競合の動向など、幅広いデータを収集しておきます。
ここがある意味最も重要なことにもなります。
別の言い方をすると、地図を作る作業に相当します。地図上で自分の位置を明確にしておくことが極めて重要です。これは市場におけるAsIsに相当します。地図上の現在地を正確に理解することです。
あとからToBe(あるべき姿)を考える際に、地図がないToBeではどうやって目的地に到達するのかが分かりませんし、そのToBe(目的地)に到達することができるのかも分からないのです。それだけ正確な地図を作ることは重要になります。地図には必ず顧客(とニーズ)と競合が存在します。
1.2 現在と将来の顧客ニーズ
お客さまのニーズは何でしょうか。
まず、商品・サービスそのものの問題解決能力です。これがお客さまがその製品・サービスを買う直接の理由です。これが明確でないとお客さまは製品・サービスを購入してくれません。最近、ITがビジネスを実行している組織がかなり多くなってきました。金融業界はその典型です。銀行、証券、保険などはビジネスの中核そのものをITが実行していると言えます。特に現在の証券市場はITそのものです。昔は東京の兜町に物理的な市場があり、証券マンが場立ちと言い、手のジェスチャで株式の売買をおこなっていたものです。今では見ることのできない懐かしい光景です。
つづいて「広い意味での製品」の問題解決能力があります。製品・サービスの機能を補完しサポートしてくれるものです。コンピュータシステムでは、インスタレーション、保証、サポート、コンサルティング、ソフトウェアアップデート、などです。携帯電話では、着メロ、XXXプランなど。航空業界では、マイレージサービス、チケットレス、座席予約、など。ITが貢献できる分野がかなりあります。顧客の利便性を飛躍的に向上してくれます。プリンタなどでは最新のOSに対応できるようにダウンロードサービスが常識になっています。WindowsXPの時に購入したプリンタが、Vistaやこれから出るWindows7でも使えるわけで、常に最新のPCで使いたいというニーズを満たしてくれます。デジカメも同様です。このように、製品そのものではありませんが、製品のサポート機能をITが実現し、顧客のニーズに貢献している例が、最近多くなってきています。しかもそのサポート機能が競合との差別化になることもあります。
さらには、購入(使用)に伴う全ての経験まで含みます。営業担当者は親切だったか、購入はしやすかったか(オンラインショッピングなどは顕著です)、コールセンターの対応は丁寧だったか、日本語がきちんと通用したか(日本以外でサービスしている場合、日本語でコミュニケーションしたいという基本的ニーズがあります)、サービスのレスポンス時間は十分早いか、などです。さらに、サービスマンに伝えた製品への要望を満たす新製品情報を営業マンが持ってきてほしい、過去の別製品のサービス実績を言わなくてもすべて把握していてほしい、などの顧客ニーズを満たすためには、CRM(カスタマーリレーションシップ・マネジメント)というITシステムが不可欠です。顧客満足度を購入の目安にするお客さまはかなりいます。サービスの良さなどは口コミでも広まります。
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