2009年10月19日
1.2 現在と将来の顧客ニーズ― 3種類のニーズ
別の視点です。お客さまには3種類のニーズがあります。
TQM(Total Quality
Management)で有名な品質の「狩野モデル」を紹介します。
-基本的ニーズ(当たり前の品質)
-期待のニーズ(一元的品質)
-喜びのニーズ(魅力的品質)
【基本的ニーズ(当たり前の品質)】
-このニーズ(品質)が満たされないと、お客さまは大変不満を持ちます。
しかし、これが満たされていても何も感じません。
-お客さまは自分からこれが満たされないと不満だ(困る)、とは言いません(当たり前だからです)。
-不満なお客さまは、その不満を他のお客さまに話します。
-お客さまは、その不満をベンダーには表明せずに、別のベンダーに行ってしまいます。
例えば、自動車のバックミラーが必要だというお客さまはいませんよね。当たり前だからです。
バックミラーのない自動車は明らかに欠陥車です。
お客さまがニーズを口にしなくても、聴きだすスキル、もしくは業界知識(常識)をベンダー側が身につけなければいけません。
【期待のニーズ(一元的品質)】
-これについて、お客さまは自分から何が必要(欲しい)かを、話してくれます。
-この機能が欲しい、これが満たされないと困る(不満)、と言ってくれます。
残念ながらこれだけを実現しても差別化できません。
自動車のエアーやオーディオ類。人によってニーズが異なります。
要求定義フェーズで顧客の口にする「期待のニーズ」だけ聞いていたのでは、競合との差別化ができません。
【喜びのニーズ(魅力的品質)】
-お客さまが気付いていなかった、特別付録です。大変喜んでくれます。
-逆にこれが満たされなくても、別に不満に思いません(気付いていないからです)。
これを充たせると差別化につながります。
要求定義でどれだけ「喜びのニーズ」を聞き出すことができるでしょうか。
それができると、競合との差別化ができます。差別化できる製品・サービスが必要です。
例えば数年前のカーナビ、その機能には感動したものです。
その当時は「喜びのニーズ」だったからです。
でも、最近はどうでしょう、どちらかというと「期待のニーズ」に変化していませんか。
オーディオ関係同様に、お客さまはこんな「カーナビ」が欲しい、と明言していると思います。
ここで注意しなければいけないことがあります。それはニーズの陳腐化です。以前は「喜びのニーズ」だったものが、いつの間にか「期待のニーズ」に変化し、さらに「基本的ニーズ(当たり前の品質)」になってしまう可能性があります。あと数年すればカーナビも標準装備(バックミラー並み)になってしまうかもしれませんね。地図(紙の)を買わない(持たない)ドライバーが当たり前の時代になるのでしょうか。
「喜びのニーズ」の最近の例です。2008年の北京オリンピックの水泳競技の水着が良い例です。SPEED社のLaser
Racerという水着が競泳競技33種目中、なんと31種目で金メダルを独占しました。日本の北島選手もその一人です。誰も「速く泳げる水着が欲しい」とは言いませんでした。「着易い水着」とか「着心地の良い水着」は要望されたと思います。Laser
Racerは「着ずらく(着るのに30分ぐらいかかるそうです)」「きわめて着心地が悪い」けれども、「速く泳げる」水着だったのです。これだけ見事に差別化できた例はまれですが、他社にない、お客様から「喜んでもらえる(魅力的品質)」ニーズを実現した例です。
BABOK®では、ステークホルダーが口にするうわべのニーズではなく、真のニーズを引き出すことがビジネスアナリストの責任としています。まさに口にする「期待のニーズ」ではなく、口に出さない「基本のニーズ」や「喜びのニーズ」を引き出すことです。
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