2009年11月30日
2.5 ホールプロダクト
ビジネスが成功するためには、製品そのもの以外に、その周りのソフトウェア、サポート、サービスといった全体としてユーザーの価値を高めるもの、すなわちホールプロダクトが形成されなければなりません。それは自社で提供するもののみならず、パートナー、競合会社などからも提供される必要があります。
このホールプロダクトをどこまで提供するべきかは、該当製品・サービスがライフサイクルのどこにあるかによって異なります。つまりビジネス戦略はこのテクノロジーライフサイクルと連動することを理解する必要があります。初期市場であれば、コアプロダクト(製品・サービスそのもの)が優れていなくてはいけません。まずイノベータに認めてもらうことが最優先です。ビジョナリは役に立つことがわかれば導入してくれます。
携帯電話、PC、プリンタ、コンビニエンスストア、航空機の安全運航など、通常の製品・サービスそのものです。
金融業界の場合、このコアプロダクトの部分までITがカバーしています。
例: デイトレーダー、保険商品、
その周りに自社で提供するモノとサービスがあります。最近はこの部分にITによるサービスの多くが存在します。
携帯電話: 着メロ、XXXプラン、YYY割引...
航空業界: マイレージサービス、チケットレス、座席予約、早割など
パソコン: オンラインショッピング、インターネット機能、アップデートサービス...
プリンタ: ソフトウェアのダウンロードサービス、アップデートサービス
コンビニ: POS、在庫管理、公共料金などの支払い、..
その他
キャズムを越えるための戦略は「ボーリングレーン」と呼ばれます。まず一番得意のセグメントもしくは周りに重大な影響を与えられる主要顧客を狙うのです。そのセグメントの中で影響を与えられる顧客の攻略に成功すれば、口コミや評判でセグメントのなかで主要な地位を得られるようになるでしょう。相手は実利主義者なので、口コミなどを大切にします。得意のセグメントが成功すれば、ボーリングの1番ピンが2番ピン、3番ピンを次から次へ倒すように、比較的容易に隣のセグメント、そのまた隣のセグメントへと移ることができるというわけです。
実利主義が大々的に採用するとトルネードと呼ばれる現象が発生します。年率50%以上の成長が数年続きます。自然界のトルネード(竜巻)同様、ベンダーにも手が付けられない状態になります。最近の事例はiPodです。完全にトルネード現象が発生しました。だいぶ落ち着いてきましたが、一時は品不足状態が続きました。すでにメイン市場で安定した状態に落ち着いています。 重要なことはiPodの場合、これを意図的にかつ戦略的に実行していたことです。
ここでもホールプロダクトが極めて重要です。初期市場とは比較にならないくらいホールプロダクトが充実していなくてはいけません。音楽配信がその一つです。最近は携帯電話の機能まで付随しています。
実は競合製品もホールプロダクトの一部です。実利主義者が採用するためには市場そのものが健全な競争状態になっている必要があるのです。健全な価格競争も必要です。
保守主義は枯れた技術を好みます。当然ながらテクノロジーが業界標準になっている必要があります。リスクを避けますから、セカンドソースが競合数社から提供されている必要もあります。コストは当然ながら、安くなっていなければいけません。実利主義で受け入れられたベンダーがそのままリーダーを維持できる保証もありません。大量生産、低価格製品を提供できるベンダーが生き残ります。
お客様が必要とする全てのモノとサービスには、納期やサービス受付の対応、すなわち快適な購入体験が必要です。どんなに優れた製品であっても、応対する人間が不親切だと嫌われます。営業やサービスマンが適切に教育されている必要もあります。コンシェルジェも含まれます。
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