2009年11月24日
2.4 キャズムと顧客の特性
初期市場での成功がつぎのメイン市場での成功につながるとは限りません。ビジョナリと実利主義との間には深くて大きな溝(これをキャズムと言います)があるのです。
なぜキャズムが存在するのでしょうか。
それはビジョナリと実利主義者の特徴の違いに由来します。ビジョナリは人まねをせず、リスクを進んでとり、将来のチャンスにかけますから、人より早く導入します。
実利主義は他人の成功を参考にし、現実に役に立つのを見極めます。ただし、他人から遅れることを好みませんのでみんな一緒に行動します。ですから少し出遅れますが、行動するときは大勢が一斉に動き出します。結果としてビジョナリが導入した後、少し間が空き、ある時一斉に導入することになるのです。このギャップがキャズムという現象です。
ビジョナリの特徴 |
実利主義者の特徴 |
・直感的 |
・現実的 |
・革新を求める |
・改善を求める |
・人まねをしない |
・他人の成功を参考にする |
・群れを避ける |
・群れを成す |
・リスクを進んでとる |
・リスクを管理する |
・将来のチャンスにかける |
・現実の問題にかける |
・可能性を追求する |
・確実性を追求する |
・最高の技術を追求しようとする |
・最高の解決策/ベンダーを追求しようとする |
G. Moore: Crossing the Chasm
キャズムを乗り越えない限り、次の大きなメイン市場に到達することはできません。そして「実利主義者」が市場のなかで最もサイズが大きいのです。この市場セグメントに受け入れられない限り、成功はありえないのです。
このキャズムを乗り越えられずに消え去ってしまった不幸なテクノロジー商品は数限りなくあります。例えばVideo会議(ご存知でしたか)、レーザーディスク、人工知能(もう忘れましたか)、衛星携帯電話(イリジウム)、などなど。日本ではβビデオなどを思い出してください。決して技術的に劣っていたわけではなく、むしろ技術的には優れていたものがキャズムに落ち込んで消滅してしまうことが多いのです。ここがテクノロジー製品の難しい一面です。テクノロジーに限りません。
例えば、プロジェクトマネジメントの世界でも、PMBOKより優れたプロジェクトマネジメント手法はあると思います。なぜPMBOKだけが成功しているのでしょうか。世界中で30万人以上のPMP資格保有者がいます。日本でも2万5千人以上です。
さらに、サービスマネジメントの世界ではITILファウンデーションの取得者は6万人以上(日本国内)です。テクノロジーに限らず、IT資格でも同様なことが発生していることが分かります。
キャズムに落ち込んで苦悩している資格もあるようです。
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