5.
理想の解決策は何でしょうか?
5.1 テクノロジーライフサイクル
理想の解決策(ソリューション)を考える前に、テクノロジーライフサイクルについて検討します。
テクノロジー製品・サービスの場合、このテクノロジーライフサイクルを理解することが極めて重要です。テクノロジーはこの絵のように、イノベーター、アーリーアダプター(ビジョナリ)、アーリーマジョリティー(実利主義)、レイトマジョリティ(保守主義)、ラガード(懐疑派)の順番で使用してくれます。
イノベータ : ハイテクおたくです。何でも新しい技術を人より先に使います。
結果的にそのテクノロジーが使い物にならなくてもあまり気にしません。
ビジョナリ : 新しい技術が問題を解決してくれるのがわかれば人より先に使用してくれます。
他人がまだ使っていなくても気にしません。リスクを進んでとります。
革新的なことを求めます。
実利主義 : 実用性を重んじますが、他者の導入事例を確認してから使用します。
リスクを管理します。改善を求めます。
保守主義 : 業界標準になるのを待ってから、導入します。リスクを避けます、コストも気にします。
懐疑派 : テクノロジー製品には見向きもしません。他に選択肢がないので仕方なく使用します。
イノベータとビジョナリで形成されるのが初期市場です。初期市場では、コアプロダクトが優れていれば、多少使いづらくてもイノベータやビジョナリはテクノロジー製品(サービス)を使用してくれます。
こうして、新しいテクノロジー製品・サービスはまず、初期市場のお客さまに浸透していきます。一見ビジネスが順調に見えるときです。
初期市場での成功がつぎのメイン市場での成功につながるとは限りません。ビジョナリと実利主義との間には深くて大きな溝(これをキャズムと言います)があるのです。
ビジョナリーと実利主義者の比較を図示します。
ビジョナリーの特徴 |
実利主義者の特徴 |
・直感的 |
・現実的 |
・革新を求める |
・現実的 |
・人まねをしない |
・他人の成功を参考にする |
・群れを避ける |
・群れを成す |
・リスクを進んでとる |
・リスクを管理する |
・将来のチャンスにかける |
・現実の問題にかける |
・可能性を追求する |
・確実性を追求する |
G. Moore: Crossing The Chasm
キャズムを乗り越えない限り、次の大きなメイン市場に到達することはできません。そして「実利主義者」が市場のなかで最もサイズが大きいのです。この市場セグメントに受け入れられない限り、成功はありえません。
このキャズムを乗り越えられずに消え去ってしまった不幸なテクノロジー商品は数限りなくあります。例えばVideo会議、レーザーディスク、人工知能、衛星携帯電話、などなどです。日本ではβビデオや、PC98を思い出してください。決して劣っていたわけではなく、むしろ技術的には優れていたものこそキャズムに落ち込んで消滅してしまうことが多いのです。
「続く」
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