5.2 ホールプロダクト
テクノロジーが成功するためには、製品そのもの以外に、その周りのソフトウェア、サポート、サービスといった、全体としてユーザーの価値を高めるもの、すなわちホールプロダクトが形成されなければなりません。それは自社で提供するもののみならず、パートナー、競合会社などからも提供される必要があります。
このホールプロダクトをどこまで提供するべきかは、該当テクノロジー製品・サービスがライフサイクルのどこにあるかによって異なります。つまりITやハイテクのビジネス戦略はこのテクノロジーライフサイクルと連動することを理解する必要があります。初期市場であれば、コアプロダクト(テクノロジー製品・サービスそのもの)が優れていなくてはいけません。まずイノベータに認めてもらうことが最優先です。ビジョナリは役に立つことがわかれば導入してくれます。
キャズムを越えるための戦略は「ボーリングレーン」と呼ばれます。まず一番得意のセグメントもしくは周りに重大な影響を与えられる主要顧客を狙うのです。そのセグメントの中で影響を与えられる顧客の攻略に成功すれば、口コミや評判でセグメントのなかで主要な地位を得られるようになるでしょう。相手は実利主義者なので、口コミなどを大切にします。得意のセグメントが成功すれば、ボーリングの1番ピンが2番ピン、3番ピンを次から次へ倒すように、比較的容易に隣のセグメント、そのまた隣のセグメントへと移ることができるというわけです。
ITスキル標準が実は現在ボーリングレーン戦略の真っ只中にいます。
別途解説をしてあります。【ITSSとキャズム】 をご覧ください。
池の中の大きな魚を思い出してください。
実利主義が大々的に採用するとトルネードと呼ばれる現象が発生します。年率50%以上の成長が数年続きます。自然界のトルネード(竜巻)同様、ベンダーにも手が付けられない状態になります。具体例は現在のiPodです。完全にトルネード現象が発生しています。まだしばらく市場をリードすることでしょう。重要なことはiPodの場合、これを意図的にかつ戦略的に実行していることです。
iPodのトルネード戦略については【iPodの成功例】をご覧ください。簡単に解説してあります。ここでもホールプロダクトが極めて重要です。初期市場とは比較にならないくらいホールプロダクトが充実していなくてはいけません。
保守主義は枯れた技術を好みます。当然ながらテクノロジーが業界標準になっている必要があります。リスクを避けますから、セカンドソースが競合数社から提供されている必要もあります。コストは当然ながら、安くなっていなければいけません。実利主義で受け入れられたベンダーがそのままリーダーを維持できる保証もありません。大量生産、低価格製品を提供できるベンダーが生き残ります。
「続く」
ボーリングレーンについての解説: 「ITSSとキャズム」
トルネード戦略についての解説: 「iPodの成功例」
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