STEP 2: 「前輪」カリキュラム作成
1.1 「前輪」のカリキュラム作成
顧客ニーズの把握(顧客ニーズの代用として営業によるサーベイの実施でも可能です)。
SEに対する顧客の要求品質(20項目)をもとにサーベイを実施し、各項目に対する重要度と満足度(顧客がどれだけ満足しているか)を調査します。
重要度が高く、満足度の低い項目が改善を要する項目です。これに役立つ研修(教育コース)を考えていくのが一般に行なわれていると思います。例えば、「セールスマインドを持って応対できる」を改善する必要があるのなら、SEに「営業研修」に参加させることを企画するわけです。誰でもこのくらいの事は考えると思います。
ここでは新しいアプローチを紹介します。それがQFD(品質機能展開)です。
品質機能展開
表のように、左には顧客の要求品質を展開した項目を並べておきます。
上部のリストは研修(教育コース)の一覧です。そしてこのマトリクスの中に縦と横の相関の強さを◎、○、△で表します。
◎:強い相関がある (5点)
○:普通程度の相関がある(3点)
△:弱い相関がある (1点)
サーベイで得られた、要求品質の重要度と相関の強さをもちいる事により、教育プログラムのWeightを得る事ができます。教育プログラムごとに、サーベイ結果の重要度の点数と相関度の点数を掛け、縦にたして合計点を下に記入してあります。
このようにすれば顧客の要求品質をサーベイ結果により教育プログラムに変換する事が出来るわけです。このマトリクスのことを品質表(QFD)と言います。
スキル定義との比較
従来は、SEのヒューマンスキルを定義し、それを満足する研修に参加させるというやり方をしている企業がほとんどだと思います。ITスキル標準の研修ロードマップも基本的にそうできています。
いやむしろヒューマンスキルの研修プログラムが先にあり、それで得られると思われるスキルを定義しているのが実態かもしれません。
他社で評判の良い研修プログラムだから自社も導入しなくてはいけない、などと安易に考えて導入してはいないでしょうか。
品質表(QFD)を使えば本当の顧客の要求品質をベース(神様)にするので、なぜその研修が必要なのかが明確になります。つまりWHYとWHATが明らかになり、かつWeight付けまでされますから、Priorityが明確につけられ、予算内で本当に必要で効果の上がる研修に絞る事ができるのです。
後ほど詳しく説明しますが、教育の効果測定のレベル4まで可能です。それは効果測定が顧客満足の向上を把握する事が可能だからです。それは最初から顧客の要求品質を捕らえているからこそできる技と言えるでしょう。しかもデータ(事実)で示せますから教育効果のデモンストレーションといえばこれ以上のものはないと思います。
以上のQFDで特に「前輪」の部分のカリキュラムが出来上がります。しかもWEIGHT付けされていますから、実施の優先度まで得られます。
「前輪」と「後輪」の解説
ITエンジニアに必要なスキルを、自転車の「前輪」と「後輪」に比喩したものです。
自転車の「後輪」の役目は、駆動力(前に進む力)です。
これはエンジニアのスキルでは、技術力、業務知識、業界知識、製品知識、アプリケーション知識、そしてPMBOKなどに相当します。
それでは、自転車の前輪の役目は何でしょう。それは方向付け(舵取り)です。
これに比喩されるスキルは、人に関するスキルです。たとえば、人の価値観の理解、人の感情の理解、対人対応能力、自己管理などです。ITスキル標準ではパーソナル分野と呼ばれている部分です。おおむね、コミュニケーション、リーダーシップ、ネゴシエーションに相当します。別の言い方をすれば、顧客要求を把握する能力と言えるかもしれません。
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