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 【ITSS対応パーソナルスキル研修】(その3)

 

 

3.    本当の解決策

 真の解決策を策定するためには、パーソナルスキルそのものをタスク表現により定義することしかありません。ITSSユーザー協会の「スキル定義委員会」の活動、SSI-ITSS(スキルインベントリーシステム)へのスキルの登録、そしてタスク表現により定義されたスキルを「学習目標」に取り入れたスキル研修プログラムについてご紹介します。

3.1 具体的にパーソナルスキルを定義する

 具体的な解決策の一部として、ITSSユーザー協会の「スキル定義委員会」におけるパーソナルスキルの定義を紹介します。

3.1.1 具体的な解決策とは

では、本当の解決策を考えてみます。それは、問題の真の原因である、「不明確な定義」を解消することです。前回、解説したタスク表現することです。すなわち「パーソナルスキルをタスク表現によって定義する」ことが原因への根本的な対策になります。そしてタスク表現により定義されたパーソナルスキルをもとに、教育(研修コース)を作成することができれば、本当の解決策になるでしょう。

では、どうすればそれを実現することができるでしょうか。

 

3.1.2 ITSSユーザー協会のスキル定義委員会の活動

ITSSユーザー協会では様々な活動をしていますが、その中の一つが「スキル定義委員会」です。これはITSSユーザー協会保有の診断ツール(SSI-ITSS)のコンテンツ作成と活用方法を拡大することを目的に活動しています。その役割の最も大きいものが、SSI-ITSS(診断ツール)に搭載する「スキル定義」を作成することです。

 

例えば、ITSSのスキルは大項目、中項目、小項目と3段階しかありません。技術分野では同じデータベース知識でも、オラクル製品やIBMなど製品知識まで必要になります。実際のエンジニアにそこまで詳細な知識が求められます。オラクルで開発するのに、IBMデータベースの知識のあるエンジニアでは同じデータベース知識があっても使い物になりません。このように具体的な知識レベルまで落としたスキル定義を作成しています。そのスキル定義数はなんと、約2500項目に及んでいます。

(この委員会は本年度は「スキルコンテンツ作成委員会」と名称を変えて、V2/2006対応のエンハンス活動を実施しています。詳細についてお知りになりたい方は、ユーザー協会の活動資料をご覧ください。)

 

2006年度は技術的な項目に加えて、それまで手が付けられていなかったパーソナルスキルに重点を置いた活動を実施しました。次にその概要についてご紹介します。

 

3.1.3 パーソナル分野のスキル定義

スキル定義委員会の方針です。パーソナル分野に限らずスキルをタスク表現に統一しています。具体的には、

         意識、認識ではなく、「アウトプットできる具体的な行動」(観察可能な動詞)で表現する

         なるべくひとつの項目(行動)に絞る(複数の動詞を避ける)

         「目的、対象」を明確にする

こうすることにより分かりづらかったパーソナルスキルも大幅に分かりやすくなりました。後で具体例をご覧ください。さらに、教育研修にも反映することができるようになりました(実はこれが本当のメリットです)。

 

3.1.4 コミュニケーション スキル

コミュニケーションスキルは非常にバラエティに富んでいます。またカテゴリ分けも

さまざまです。そこで、ITSSのレベルを意識した分類を試みました。



 

コミュニケーションする相手により、対お客様、対メンバー(個人)、対チーム(組織)と大きく3分類できると思います。

最初の「対お客様」は、ITSSレベル23でお客様と接するエンジニアに必須なコミュニケーション能力です。

 -コアコミュニケーション

 -ドキュメンテーション

 -プレゼンテーション

 

たとえば、コア・コミュニケーションの具体的なスキル(タスク表現したもの)は以下のとおりです。

       信頼関係を構築することができる

       言葉で自分の主張を伝えることができる

       はっきりと手短に話すことができる

       ノンバーバル(言葉以外の姿勢、態度)なコミュニケーションを活用することができる

       適切に質問することができる

       相手のノンバーバルナなメッセージを解釈することができる

       反応的に傾聴することができる

       相手の言ったことを要約することができる

       相手の話を最後まで聴くことができる

       FAB(解決策、利点、利益)を説明することができる

・顧客や相手の不満に対応することができる

 

いかがでしょうか。パーソナルスキルもタスク表現したのでかなり分かりやすくなったのではないでしょうか。すべて、112-wayのコミュニケーションですが、タスク表現するとこのように具体的になります。イメージも湧いてくるのではないでしょうか。

 

ITSSのレベル3,4(さらにレベル5)に上がり、チームを率いるようになるとコミュニケーションする相手も、対メンバー(個人)、対チーム(組織)と変わってきます。

そうなるとコミュニケーションスキルもおのずと変わります。

 -リーダーコミュニケーション

 -ファシリテーション

というカテゴリー分け(分類)ができると思います。

 

リーダーコミュニケーションのタスク表現したスキルは以下のとおりです。

       トラブルの前兆を共有することができる

       トラブルの前兆に対応することができる

       コミュニケーションの障害となる言動を説明することができる

       情報を正しく認識することができる

       情報認識の過程で自分が影響を受けるものを説明することができる

       人の行動特性の種類と特徴を説明することができる

       自分の行動特性を説明することができる

       相手の行動特性を説明することができる

  自分の行動を相手に合わせて調整することができる

 

同じコミュニケーションといっても必要とするスキルの内容が少しずつ変わってくることがお分かりになると思います。

 

3.1.5 リーダーシップ スキル

リーダーシップ論は百科騒乱の状態です。書店に行くとリーダーシップのコーナーには実に様々な書籍が並んでいます。いったいどのようなリーダーシップスキルが必要なのでしょうか。リーダーシップにもレベルがあります。そこで、次のように初級、中級、上級と分けてみました。

 



 

初級(ベーシック):

メンバーから初めてリーダーになった時に必要な

リーダーシップスキル(リーダーコミュニケーションと密接な関係があります)

中級(ミドル):

  リーダー経験を数年経て、グループのパフォーマンスを最大に

するために必要なリーダーシップスキル

高級(ハイレベル): 

大きな変革に対するリーダーシップスキル

    変革を自ら創造する高いレベルのリーダーシップスキルです。

    職種により必要な職種とそうでない職種がありますから注意が必要です。

    決められたこと(要件定義)以降の職種には不要です

    セールス、マーケティング、コンサル、そしてITアーキテクトに必要です。

    特にITアーキテクトは既存のIT基盤を大幅に変革するときに必須な

スキルと言えます。

言葉だけではわかりづらいと思います。

 

 

具体的には以下のようなスキルになります。

ベーシックリーダーシップ

       自分の価値観を明確にすることができる

       解決するべき問題にフォーカスすることができる

       重要な問題を自ら解決することができる

       決断力をもって行動することができる

       部門目標に向けて、熱意を持って行動することができる

       影響力を使って、メンバーに行動を起こさせることができる

       動機付けの要因を説明することができる

       動機付けのプロセスを活用することができる

       自分自身の感情をコントロールすることができる

       相手の感情に応じた対処ができる

 

ベーシックリーダーシップ(続き)

       リーダーシップスタイルの分類とその特徴を説明することができる

       自分の自然のスタイルを認識することができる

       メンバーの習熟度を判断することができる

       メンバーの習熟度に応じたリーダーシップスタイルをとることができる

 

 

いかがでしょうか。リーダーシップにもいろいろあることがお分かりになると思います。

ITエンジニアにこんなスキルが必要なのか、と思われる方もいると思います。そのとおりです、これからのレベルの高いITエンジニアには必須のスキルと言えます。

 

以上、少し長くなりましたが、ITSSユーザー協会のスキル定義委員会(現在はスキル作成委員会)の活動についてご紹介しました。









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