6.4 フレームワーク
この実証実験では、フレームワークとしてBSC(バランスト・スコアカード)を利用しています。すなわち、
−学習と成長の視点
−業務プロセスの視点
−顧客の視点
−財務の視点
です。そして「学習と成長の視点」にフォーカスし、
スキル(Inventory)=『ビジネス戦略を支える基盤』と定義します。
「スキル標準ユーザーズカンフェランス 2009」発表資料より
6.5 要求モデル
要求モデルを策定するためには、企業戦略(ビジネス戦略)が不可欠です。ただこの実証実験では、具体的な企業ではありませんので、「ITA仮想企業」としてこのプロジェクトに参加している8社の合同企業を想定しています。
「スキル標準ユーザーズカンフェランス 2009」発表資料より
要求モデルではBSC(バランスト・スコアカード)の4つの領域をブレークする形で、要求モデルを策定しているのがお分かりになると思います。
この辺になると、いつものユーザー協会の要求モデル/機能モデル・・・のパターンに近づいてきますので、わかりやすいと思います。
6.6 機能モデル
つづいて機能モデルです。
「スキル標準ユーザーズカンフェランス 2009」発表資料より
ここでは、テンプレート化した一般的な企業における組織機能から導入しています。テンプレートを使うメリットは2つあります。
一つは時間の節約です。機能モデルを一から作成すると時間がかかります。あまりユニークな組織でない限り、このようなテンプレートが便利です。もう一つは、他のスキル標準(ITSSやUISS)との整合性が高められることです。具体的にはITSSとの整合性です。今回の実証実験に参加された企業は全てITベンダーです。社内にはETエンジニアのみならず、ITエンジニアも数多くいます。ITSSでの機能モデルとETSSの機能モデルが類似してくれます。そのメリットは大きいと思います。
6.7 キャリア基準
つづいてキャリア基準です。ビジネス戦略上必要とする「職種と活動領域」を策定しています。レベルは共通キャリア・スキルフレームワークのレベル1〜レベル7ではなく、参加企業の実力に見合ったレベル1〜レベル5に変更してあります。参加企業において、レベル6やレベル7の人材は多くいるわけではなく、いたとしても人材育成のスコープ外という考え方です。組織の実力を考慮した妥当な選択といえます。その代り、レベル5を細分化し3段階(エントリ、ミドル、ハイ)にしてあります。
「スキル標準ユーザーズカンフェランス 2009」発表資料より
6.8 人材(キャリア)モデル
仮想企業における人材(キャリア)モデルの策定です。
ビジネス戦略上必要となる人材モデルを、次の項目で定義しています。
−職種(ETSSの職種)
−キャリアレベル
−人物像
−対仕事面のスキル
−対人面のスキル
6.9 スキルセット策定
「スキル標準ユーザーズカンフェランス 2009」発表資料より
スキルセットを策定する場合の問題点は、ETSSとITSSでスキルレベルの定義が異なることです。本来なら、共通キャリア・スキルフレームワークでしっかり共通のスキルレベルを定義しておくべきことだと思います。まだ第1版なのでしょうか2つのスキル標準での互換性が確立されていません。そこで、「ITA-ETSS 2008」では以下の対応表により互換性を確保することになりました。
ETSS 2008
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ITA-ETSS
2008
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ITSS
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4
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新たな技術を開発できる(後進の育成・指導が可能)
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5
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新たな技術を開発できる(後進の育成・指導が可能)
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4
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後進の育成・指導が可能
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3
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作業を分析し改善・改良ができる(後進の育成・指導が可能)
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4
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作業を分析し改善・改良ができる(後進の育成・指導が可能)
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2
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自律的に作業を遂行できる
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3
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自律的に作業を遂行できる
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3
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単独で実施可能
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1
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支援のもとに作業を遂行できる
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2
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支援のもとに作業を遂行できる
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2
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サポートがあれば実施可能
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0
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やったことがない(支援のもとにも作業ができない)
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1
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やったことがない(知識あり)
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1
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(ベースとなる)知識あり
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0
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やったことがない(知識なし)
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0
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知識なし
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6.10 SSI-ITSSツール実装
「スキル標準ユーザーズカンフェランス 2009」発表資料より
これからは、ユーザー協会保有のスキルインベントリーシステム、SSI-ITSSをカスタマイズして、スキルを実装することです。ETSSスキルを実装するため、ツールの名称をSSI-ETSSと変えていますが、ツール(システム)そのものは同じです。既成のITSSのスキルセットではなく、カスタマイズされて、今回定義したスキルセット、職種、レベルが実装されたものです。
6.11 パイロット入力と解析・評価
参加企業の尽力により、短時間でしたがパイロット入力と解析・評価までできています。
8社、32名が入力に参加しています。
「スキル標準ユーザーズカンフェランス」発表資料より
一例だけ紹介します。キャリアレベル4の「プロセス改善スペシャリスト」です。このレベルで必要とされる「スキル分布特性」に対し、この人材の保有しているスキルとの比較をご覧ください。優秀な方だと思います。期待を上回る多くのスキルを保有していることがわかります。このことにより、このツールの有効性が実証されます。
別の例では、実際の仕事と保有スキルとの相関が十分ではないものもあり、今後の改善テーマといえます。
6.12 今後の展開
今後(今年中)の計画として、
−12月中に正式リリースを予定。
−ハードウェアエンジニアのスキル定義の活動の開始
来年の計画としては以下のとおりです。
−スキルマネジメントシステムの妥当性のため継続的な検証
−教育研修基準の作成
−ETEC他、資格体系化の策定
【まとめ】
最後に、このプロジェクトに1年間お付き合いさせていただいた感想です。特にチームの情熱とIPA/SECのサポートに関して述べます。
まず、チームメンバの情熱が素晴らしいことです。8社のメンバーですが、毎回全社が参加されています。実業務をされながらのWG活動ですので、宿題の提出が遅かったりもしますが、全社必ず実行されていて、よくまとまっています。ミーティングの後には毎回懇親会が催され、議論が伯仲しています。これがWGのエネルギーとなり、全員の結束の高まっているようです。
IPA/SEC(ソフトウェアエンジニアリングセンター)がフルサポートされているのも見逃せません。ITAフォーラム(2008年11月14日開催)に参加して初めて知ったのですが、ITAでは3つのWG(ワーキンググループ)が活動しています。ひとつは「見える化WG」、2つ目は「テストWG」、そして3つ目がこの「MOS-WG」です。MOSの活動だけではなく、他の2つのWGもSECがしっかりサポートされていました。JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)とは異なり、決して大きな組織とは言えない(失礼!)ITAですが、MOS以外のWGも立派な活動をされていました。それだけIPA/SECからも注目されているようです。
もし、この拙いレポートに興味をもたれたIT企業の方で、ITAにご興味のある方は、是非参加されてみたらいかがでしょうか。問い合わせは以下のITA Webページを参照ください。
URL: http://www.ita.gr.jp/itacms/html/
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