【ITSS対応パーソナルスキル研修】(その7)
3.3.3 スキル定義に基づく効果測定
ここでは、研修の効果測定について解説します。
-モジュール構造
-診断によるGAP(不足スキル)のみのテイラーメイド研修
-研修の結果の効果測定(Kirkpatrickのレベル3)
3.3.3.1 モジュール構造
学習目標をいくつか集めた、学習のかたまりをモジュールとしています。
そして、独立性の高いモジュール構造で設計されたコースがあります。
たとえば、以下の「ITSSベーシックリーダーシップ」のモジュールはかなり独立性が高いものです。
ITSSベーシックリーダーシップ研修
モジュール
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学習目標
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1.オリエンテーション
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・自己紹介、その他
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2.価値観
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・リーダー自身の価値観を明確にすることができるようになる
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3.部門目標への行動
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・解決するべき問題にフォーカスすることができるようになる
・重要な問題を自ら解決することができるようになる
・自分の意見を主張することができるようになる
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4.メンバーの動機付け
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・動機付けの要因を説明することができるようになる
・動機付けプロセスを活用することができるようになる
・影響力を使って、メンバーに行動を起こさせることができるようになる
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5.ストレスの軽減
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・自分自身の感情(ストレス)をコントロールすることができるようになる
・相手の感情(ストレス)を軽減することができるようになる
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モジュール2~モジュール5を一括で学習する必要もありません。たまたま1日コースにまとめた程度のものです。
また、以下の「ITSSリーダーコミュニケーション」も同様です。
モジュール |
学習目標 |
オリエンテーション |
・自己紹介、その他 |
認知 |
・認知の重要性を説明できるようになる
・認知の歪みの影響を説明できるようになる
・自分の認知の歪みを知ることができるようになる
・正しい認知ができるようになる |
メンバーとのコミュニケーション |
・一方向、双方向のコミュニケーションの違いを 説明できるようになる
・ノンバーバルコミュニケーションを活用し、 傾聴/質問ができるようになる
・入手した情報を正しく伝えることができるように なる |
チームにおけるコミュニケーション |
・コミュニケーションの障害となる言動を説明する ことができるようになる
・トラブルの兆候を共有することができるように なる
・トラブルを未然に防ぐ風土を作ることができる ようになる
・トラブルの兆候に対処することができるように なる
・コミュニケーションを促す言動をとることができるようになる |
このように、独立性の高いモジュール構造の研修になっていることがお分かりになったと思います。
ITSSのパーソナルスキル(コミュニケーション、リーダーシップ、ネゴシエーション)を細かな学習オブジェクト(全部で11コース、33モジュール)に分解しています。
では、そのメリットは何でしょうか。
3.3.3.2 診断でGAP(不足スキル)のみのテイラーメイド研修
ここで、メルマガ14号でご紹介したスキル診断ツール「SSI-ITSS」を思い出してください。
SSI-ITSSスキル診断の「スキル項目」がそのまま学習目標に直接に対応していることを覚えていらっしゃいますか。診断の結果、必要とされたスキルに対応するモジュールを組み合わせて研修コースに組み立てることまで可能になるのです。
例えば、上記、「ITSSベーシックリーダーシップ」研修のモジュールの一部と、「ITSSリーダーコミュニケーション」のモジュールを組み合わせて、
メンバーとのコミュニケーション
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一方向・双方向のコミュニケーションの違いを説明できるようになる
ノンバーバルコミュニケーションを活用し、傾聴/質問ができるようになる
入手した情報を正しく伝えることができるようになる
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チームにおけるコミュニケーション
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コミュニケーションの障害となる言動を説明することができるようになる
トラブルの兆候を共有することができる
トラブルを未然に防ぐ風土を作ることができるようになる
トラブルの兆候に対処することができるようになる
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メンバーの動機付け
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・動機付けの要因を説明することができるようになる
・動機付けプロセスを活用することができるようになる
・影響力を使って、メンバーに行動を起こさせることができるようになる
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このようなテイラーメイドの研修コースを組み立てることができるようになります。
スキル診断で充足されているとわかったスキルを研修する必要はありません。必要最低限の研修を実施すればよいのです。しかもビジネスに最も効果のある(必要なスキルのみ)研修コースをテイラーメイドできる可能性があります。
そうすれば、研修時間は従来のやり方に比べて大幅に減少することになります。また研修費用の節約にもなるでしょう。
3.3.3.3 研修のレベル3での効果
3.3.3.3.1 研修の効果測定方法について
Donald Kirkpatrick(アメリカの教育学者)が1975年に発表した、教育の効果測定の4つのレベルです。
レベル1: 満足度
レベル2: 理解度
レベル3: 行動変容
レベル4: ビジネス成果
レベル1(満足度)は研修後の受講者にアンケート実施し、どの程度満足したかを測定します。
殆どの研修ベンダーで行っているのでよくご存じだと思います。
レベル2(理解度)は、研修後に理解度テストや試験などを実施し、どの程度学習内容を理解したかを確認します。おもに知識研修で行っています。
レベル3(行動変容)は研修実施後に、どの程度受講者の行動レベルが変化したかを測定するものです。上司や同僚による観察で測定したりします。スキル研修などで重要になりますが、残念ながら、あまり多く実施されていません(特に日本は少ないようです)。
レベル4(ビジネス成果)は研修実施により、どの程度、ビジネスの成果に貢献できたかを測定するものです。ビジネス成果の要因が教育によるものなのか、他の要因(たとえば景気変動)によるものなのかの区別がつきにくいため、殆ど実施されていません。本当は最も重要なものです。
読者の皆様の企業では、どのレベルの効果測定をされていますか?
レベル1、2のみしか測定していないと、経営者には教育の成果が見えません。予算削減の対象になりがちですから注意が必要です。経営者が気にするのはレベル3、出来ればレベル4です。教育の成果が見えると、経営者は惜しげもなく投資してくれます。ですので、なるべく、レベル3や4にチャレンジしましょう。
3.3.3.3.2 研修受講後の測定
ご紹介しているスキル研修は、診断で必要だと識別されたスキル項目に注目し、そのタスクを学習目標としている研修コースのみをまとめた、カスタムカリキュラムに則って、実施し、その結果を研修前の状態と比較することが容易にできます。
ここでもう一度SSI-ITSSを思い出してください。
研修受講後に再度スキル診断を行います。診断に使われているスキル項目(タスク表現されたもの)がそのまま学習目標になっているスキル研修を受講しますから、その効果は一目瞭然としています。受講した本人のみならず、上司によるチェックを加えることができますから、行動変容まで測ることになります。上記のKirkpatrickのレベル3での効果測定になっていることがお分かりになると思います。
一方、ITSSの研修ロードマップは必要であろうと思われるスキルを網羅しているかもしれませんが、冗長なものになりがちです。必要でもないスキルまで教育してしまう可能性を否定できません。受講者の満足度は得られず、習得度も低くなってしまいます。お金の無駄遣いが発生する可能性すらあります。
本当に必要と診断されたスキルのみを組み合わせたテイラードコース、独自のカリキュラムは、理想的なスキル研修と言えるのではないでしょうか。
ご意見を歓迎します。
連絡先: Mail to : KBマネジメント
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