レベル3の特徴です。
・CMMのレベル3(定義されたレベル)に相当します
・全プロセスがビジネス戦略と整合(リンク)しています
・顧客満足度調査が実施され、結果が教育体系計画に反映されます
(レベル4: 教育が実施され、次回の顧客満足度調査で効果が把握されている)
・従業員満足度調査が実施されます
レベル3のプロセスを紹介します。
|
ビジネス戦略/
ビジネス効果 |
人材像/
GAP分析 |
教育体系/
キャリア計画 |
レベル認定 |
組織文化
その他 |
レベルV |
【ビジネス戦略】
【顧客満足度調査】 |
【スキル分析/定義】
【人材像策定】
【スキル診断(GAP分析)】 |
【組織トレーニング(教育ニーズの統合)】
【キャリアモデル提示】
【個人別キャリア計画】
【個人別教育計画】
【メンタリング】 |
【社内認定(外部コンサルコンサル関与)】 |
(参加型文化)
【従業員満足度調査】
注)全プロセスが有機的にリンクされている(Defined) |
ここでは、顧客満足度調査プロセスの例として、QFD(品質機能展開)を利用した、顧客要求品質を教育体系に反映するプロセスをご紹介します。
これはあくまで一例です。
すべての組織で同じプロセスを実施しなければいけない、というわけではありません。
連続モデルの例としても、価値のあるものですからご紹介します。
この手法はソフトウェア製品の企画段階で採用されているものと同じ手法です。顧客要求から、合理的に設計品質に変換できるので、製品企画や開発では大変ポピュラーな手法です。ご存知の方も多いと思いますが、人材育成にも大変役に立つ手法です(とは言っても、人材育成ではあまりポピュラーではありません)ので、ご紹介します。Outputがソフトウェア製品の設計品質(機能品質)ではなく、教育計画となります。
【顧客満足度調査】
プロセス1: 原始データの収集
顧客がどのような要求をもっているのかを収集するプロセスです。
Output: 顧客要求の原始データです。
このプロセスは決して難しいものではありませんが、慣れていないとかなり苦労します。顧客の要求をどう収集すればよいのでしょうか。
具体的な方法はやはり、顧客サーベイです。それもかなりオープンな質問で広範囲にとらえるべきものです。
サーベイの質問項目の例:
質問1:弊社のサービスでお客様が気に入っているものは何でしょうか、3点挙げてください。
質問2:弊社のサービスでお客様が気に入らないものは何でしょうか、3点挙げてください。
質問3:弊社にはなく他社にあるサービスで、お客様が気に入っているものがあれば、3点挙げてください。
このような質問項目で最初の調査(サーベイ)を実施します。言語情報がたくさん集まります。もしそれまでに届いていた要求、クレーム、などがあれば、それも加えます。概算で150以上の顧客要求の原始データが集まれば、よしとします。
プロセス2: 品質機能展開
顧客の要求品質を展開します。具体的には150以上(数百になることもあります)の原始データを1次要求、2次要求、3次要求と分類・統合(KJ法が便利です)していき、最終的に20項目程度に収めます。
上の図の左側の項目です。この例では20項目にまとめてあります。
そして、教育体系との相関を作ります
品質機能展開
表のように、左には顧客の要求品質を展開した項目を並べておきます。
上部のリストは研修(教育コース)の一覧です。そしてこのマトリクスの中に縦と横の相関の強さを◎、○、△で表します。
◎:強い相関がある (5点)
○:普通程度の相関がある(3点)
△:弱い相関がある (1点)
プロセス3: 顧客満足度調査(顧客サーベイ)
Output: サーベイ結果
教育計画(QFDより変換)
サーベイで得られた、要求品質の重要度と相関の強さをもちいる事により、教育プログラムのWeight(重み付け)を得る事ができます。教育プログラムごとに、サーベイ結果の重要度の点数と相関度の点数を掛け、縦にたした合計点を下に記入してあります。
このようにすれば顧客の要求品質をサーベイ結果により教育プログラムに変換する事が出来るわけです。このマトリクスのことを品質表(QFD)と言います。
上記表の例ですと、Weightの高い「コンサルスキル」「コンサル技法」「提案書...」「SPIN」などのPriorityが高くなります。
スキル定義との比較
従来は、SEのヒューマンスキルを定義し、それを満足する研修に参加させるというやり方をしている企業がほとんどだと思います。いやむしろ教育プログラムが先にあり、それで得られると思われるスキルを定義しているのが実態かもしれません。
他社で評判の良い研修プログラムだから自社も導入しなくてはいけない、などと安易に考えて導入してはいないでしょうか。
品質表(QFD)を使えば本当の顧客の要求品質をベースにするので、なぜその研修が必要なのかが明確になります。つまりWHYとWHATが明らかになり、かつWeight付けまでされますから、予算内でのPriorityもつけられ、本当に必要で効果の上がる研修に絞る事ができるのです。
後ほど詳しく説明しますが、教育の効果測定のレベル4まで可能です。それは効果測定が顧客満足の向上を把握する事が可能だからです。それは最初から顧客の要求品質を捕らえているから当たり前といえるかもしれません。しかもデータ(事実)で示せますから教育効果のデモンストレーションといえばこれ以上のものはありません。
顧客満足度調査(顧客サーベイ)により、顧客要求から教育計画に変換するQFD手法をご紹介しました。
QFDに関しては以下の参考文献を参照してください。もしくは日科技連のQFD関連のコースに参加することをお勧めします。
品質機能展開活用マニュアル1 品質展開入門 赤尾洋二著
品質機能展開活用マニュアル2 品質展開法(1) 赤尾、小野、大藤 共著
続きは次回までお待ちください。
|