レベルVの特徴です。
・CMMのレベル3(定義されたレベル)に相当します
・全プロセスがビジネス戦略と整合(リンク)しています
・顧客満足度調査が実施され、結果が教育体系計画に反映されます
(レベル4: 教育が実施され、次回の顧客満足度調査で効果が把握されている)
・従業員満足度調査が実施されます
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ビジネス戦略/
ビジネス効果 |
人材像/
GAP分析 |
教育体系/
キャリア計画 |
レベル認定 |
組織文化
その他 |
レベルW |
【顧客満足度調査】 |
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注)有機的に結合されたプロセスが定量的に管理されていて、顕著な成果が表れている |
レベルV |
【ビジネス戦略】
【顧客満足度調査】 |
【スキル分析/定義】
【人材像策定】
【キャリアモデル提示】
【スキル診断(GAP分析)】 |
【組織トレーニング(教育ニーズの統合)】
【個人別教育計画】
【メンタリング】 |
【社内認定(外部コンサルコンサル関与)】 |
(参加型文化)
【従業員満足度調査】
注)全プロセスが有機的にリンクされている(Defined) |
レベルVのプロセス【顧客満足度調査】の連続表現としてのレベルWのプロセスを解説します。
前回は、QFDにより顧客要求を教育計画に変換するプロセスを説明してきました。
今回は教育を実施しその効果を測定するプロセスと実例をご紹介します。
最後にQFDのメリットをまとめます。
教育/研修の実施とその効果測定
さて、前回に述べましたがQFDによりカリキュラムの優先度が得られ、それに従い教育計画が作成されました。
この例では、図の赤い部分が実際に実施した教育です。一番下の欄の数字(WEIGHT)の高いものを重点的に実施しています。
このように、なぜこの研修が必要なのか(WHY)が定量的に「見える化」でき、実施することができるようになります。では教育の効果はどうだったのでしょうか。
約1年後におこなったサーベイ結果が次のグラフです。
調査(サーベイ)は顧客に対して実施され、顧客にとっての重要度(その要求項目はどのくらい重要か)と評価(その要求項目はどのくらい満足しているか)を回答してもらいます。青が年初に実施したサーベイ結果で、赤が年末に実施したサーベイ結果です。
評価(Evaluation)が必ずしも高くなっているわけではありません。しかし重要度(Importancde)が下がっているものが多く見られます。このように見ると、満足度(評価)が上がると重要度が下がる傾向があります(顧客の心理ですね)。では本当に改善しているのでしょうか。このグラフでは分かりづらいと思います。
そこで、次の指標を考えます。
100−(Importance*20−Evaluation*20)Importance*20/100
この指標をCSI(Customer Satisfaction Index)といいます。
重要度と評価の差を考えます。さらに重要度を掛けます
重要度と評価が同じなら100になります。重要度が5点なら、評価も5点欲しいですね。重要度が4点なら評価も4点で十分です。
重要だけれど、評価が満たなければそれが改善点です。重要度5点で、評価4点ならCSIは80となります。重要度4点で評価3点なら、CSIは84になります。同じ差でも重要度により、数値が変わります。
逆に、評価が重要度より高い場合がありえます。CSIは100を超えます。これは一般的には過剰品質を意味します。顧客の要求以上の品質を提供していることになり、これも問題です。もっとも、最近は100を超える、顧客の期待以上のサービスを提供することを目的とする場合もあります。顧客満足に対する考え方も変化しています。
これはCSIでの比較です。
明らかに殆どの項目で改善されているのが分かります。
教育の効果を顧客要求品質のレベルで測定しています。
これが、教育の効果測定のレベル4(Kirkpatrickの定義)です。
「13.積極的な商談参加...」の指標が下がっているのが気になります。
これは、この年から不況の局面に入り、プリセールスへの要求が顕著に高まったのが理由です。
グラフだけ見ても実感はわきませんが、当事者(このビジネスを遂行しているMgrたち)には一目瞭然です。顧客要求もダイナミックに変化しているのが分かります。
以上、品質機能展開(QFD)による顧客要求を教育計画に変換するプロセスと実施後の効果測定について解説しました。
最後に品質機能展開(QFD)のメリットをまとめます。3点あります。
1.教育プログラムのPriority付けができる
2.該当スキルがない場合、教育プログラムの開発ニーズを明確にできる
3.Kirkpatrickのレベル4の教育効果測定ができそのメリットは大きい
1.教育プログラムのPriority付ができる
教育プログラムにPriorityが付けられるメリットは大きいです。なぜ、その教育プログラムを選択したのかが定量的に「見える化」されます。この方法ですと、誰も文句が言えなくなります。
特にヒューマン系などは似たプログラムがあり、それらの選択の意思決定にも使えます。
2.該当スキルがない場合、教育プログラムの開発ニーズを明確にできる
顧客要求品質の項目を満たすスキルが教育リストにない場合、ニーズを見たす教育を開発する必要性を明確にする事ができます。幸い、上の例ではありませんでしたが。新規顧客開発などのニーズでは新しいコースを自前で開発する必要が出るかもしれません。
ちなみに製品開発では、これをネックエンジニアリング(製品開発のネックとなる技術という意味)と称し、明確化と開発に多大な投資をしています。
3.レベル4(Kirkpatrick)の効果測定ができることのメリット:
経営者に対して、教育効果がビジネス結果(この場合は顧客満足)として明確になりますから、注目度ががらりと変わります。上記の例では、すべての国の教育体系までこの手法で見直されるようになりました。
また、実施担当者は予算の心配が一切なくなりました。使いたい放題の予算で教育計画が立てられるようになりました。実際は参加する側のリソースの問題(ITエンジニアの時間の30%のを教育に使うわけにはいきません。10%程度が限度ですの)でおのずから上限は出てきますので心配はいりません。効果が見えるので、どんな研修でも可能です。
読者の皆様も予算の心配のない教育計画を立ててみてはいかがでしょうか。
このQFDによる顧客満足度調査(サーベイ)プロセスはSMM(スキル標準成熟度モデル)ではレベル4に相当します。
定量的に管理されている状態です。これがプロセスを連続表現しているモデルです。
さらに、改善が繰り返され、教育プログラムの内容も変わって、Kirkpatrick教育効果測定も定着していくと、SMMでは最適化されたプロセスとなり、レベル5になっていきます。
【教育の効果測定】
耳慣れない言葉が出てきたかもしれません。
Donald Kirkpatrick(アメリカの教育学者)が1975年に発表した、教育の効果測定の4つのレベルです。
レベル1: 満足度
レベル2: 理解度
レベル3: 行動変容
レベル4: ビジネス結果/顧客満足
成熟度(Maturity Level)と同じ「レベル」という用語を使っているので、混同しがちです。ご注意ください。
レベル1(満足度)は研修後の受講者にアンケート実施し、どの程度満足したかを測定します。
殆どの研修ベンダーで行っているのでよくご存じだと思います。
レベル2(理解度)は、研修後に理解度テストや試験などを実施し、どの程度学習内容を理解したかを確認します。おもに知識研修で行っています。
レベル3(行動変容)は研修実施後に、どの程度受講者の行動レベルが変化したかを測定するものです。上司や同僚による観察で測定したりします。スキル研修などで重要になりますが、残念ながら、あまり多く実施されていません(特に日本は少ないようです)。
レベル4(ビジネス結果/顧客満足)は研修実施により、どの程度、ビジネスの結果に貢献できたかを測定するものです。ビジネス結果の要因が教育によるものなのか、他の要因(たとえば景気変動)によるものなのかの区別がつきにくいため、殆ど実施されていません。本当は最も重要なものです。
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