昨年(2007年)12月頃に、「スキル標準成熟度モデル(以下SMM)」をメルマガとWebページに掲載して以来、大変ながらく、多くの方にWebページをアクセスしていただいてきました。ここに改めて、感謝の意を表したいと思います。本当にありがとうございます。
コンサルティン活動を実施しながら、フィードバックもいただいてきたので、そろそろSMM(スキル標準成熟度モデル)の具体的な導入のし方(それは「スキル標準」を成功裏に導入し、ビジネス成果に結び付ける有効な手段でもあります)をご紹介したいと思います。
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の最近の調査によると、ITSSを導入しているIT企業は28.3%あるようです。その中でも大手企業(従業員数1000人以上)では、すでに63%が導入していると回答しています。だいぶ利用が進んでいると思いますが、導入のレベルはまちまちのようです。社内でしっかり認定している組織もあれば、単に簡易診断ツールによるレベル判定のみでITSS導入とうたっている組織もあり、単に63%導入(1000人以上の大手IT企業)と聞いてもその数字を鵜呑みにするわけにはいきません。
全体像:
SMMの全体像は以下の通りです。
CMM同様に、レベル1からレベル5まで定義しています。
レベル1(Adhoc場当たり的): スキル標準導入の初期レベル
レベル2(Managed 管理された): スキル標準が社内で認知されているレベル
レベル3(Defined 定義された): スキル標準がビジネスに結びついているレベル
レベル4(Quantitatively Mnaged 定量的に管理された): スキル標準により、ビジネスがリードされているレベルです。
レベル5(Optimized 最適化された): スキル標準により、特定市場でナンバー1の地位を確立しています。
SMM(スキル標準成熟度モデル)ではCMM同様にプロセスが非常に大切です。人材育成はプロセスのPDCAを回すことにより改善ができます。
SMMのプロセスカテゴリー:
SMMでは、プロセスカテゴリーを以下の5つに分類しています。
ビジネス分野:ビジネス上の課題を明確にします
人材像/GAP 分野:スキルの定義や人材像(キャリアモデル)を定め、現状とのGAPを明確にします。
教育体系/キャリア計画 分野: 教育を実施します。またエンジニアのキャリア計画も考えます。
レベル認定 分野: スキル標準のレベルを認定します
組織文化/その他 分野: スキル標準を導入するということは、何らかの組織改革を意味します。
ですから、それを実施するための組織文化(風土)も適切である必要性があります。
人事制度もスキル標準の導入に見合ったものが必要です。
SMM Ver 0.1 プロセス領域です。
レベル2とレベル3のプロセスです。
まだ、レベル4以上は定義してありません。しばらくお待ちください。
レベル2のプロセスカテゴリーとプロセスは以下のとおりです。
ビジネス分野:
【ビジネス戦略作成】
人材像/GAP 分野
【人材像(キャリアモデル)作成】
【GAP分析】
【フィードバック面接(Option)】
教育体系/キャリア計画 分野
【組織トレーニング】
【新人メンタリング】
【キャリア計画(ITSSベース)】
レベル認定 分野
【社内認定】
組織文化/その他 分野
(社内コミュニケーション)
(MBO)
レベル3のカテゴリーとプロセスです
ビジネス分野
【ビジネス戦略作成】
【顧客満足度調査】
人材像/GAP 分野
【スキル分析・定義】
【人材像(キャリアモデル)作成】
【定期的スキル診断(GAP分析)】
教育体系/キャリア計画 分野
【組織トレーニング(教育ニーズの統合)】
【キャリアモデル提示】
【個人別キャリア計画】
【個人別教育計画】
【メンタリング】
レベル認定 分野
【社内認定(外部コンサル関与)】
組織文化/その他 分野
【従業員満足度調査】
(参加型文化)
ご覧になって、オヤッと思われたかもしれません。レベル2とレベル3で同じプロセスがあるようです。例えば、【ビジネス戦略作成】プロセスはレベル2にもありますし、レベル3にもあります。
同じプロセスですがレベルに応じてその深さが異なります
「連続モデル」と「ステージモデル」
SMMでは2つのアプローチを可能にしています。「連続モデル」と「ステージモデル」です。
「連続モデル」は組織が目標を達成するために問題となるプロセスを特定し、そのプロセスを中心に改善するアプローチです。目標(問題や課題)が明確なら短時間で解決できる可能性があります。例えば、教育に問題を抱えているのなら、【組織トレーニング】プロセスを中心に改善し、レベル上げていくアというプローチです。【組織トレーニング】プロセスだけはレベル3で、他のプロセスはまだレベル2という状態がありえます。組織の問題が解決するのが目的ですから、それでもかまいません。デメリットは組織全体のプロセスの改善にはならないかもしれません。
もう一つの「ステージモデル」は各レベルで求められているプロセスを確実に実施して、ひとつのステージ(レベル)が完了したら、次のステージのプロセスに移っていくアプローチです。メリットは組織全体のプロセスが改善できることです。デメリットは全体のレベルが改善するのに若干時間がかかることです。
各々のレベルの定義(暫定案)について解説します。
CMMでは、レベル2未満をレベル1と定義されていますが、SMMではレベル1を次のように定義します。
レベル1: スキル標準導入の初期レベル
まだ、プロセスは何も確立されていません(もしくは不統一なプロセスが存在します)。典型的なプラクティスとして以下の2つがあります。
・
簡易診断ツールでエンジニアのITSS職種のレベルの診断をおこなっている。
・
レベルの認定に「情報処理技術者試験」のみ使用している。
・
上記及びレベル2未満
いかがでしょうか。
簡易診断ツールは組織の全体像を眺めるのには大変好都合です。日本全国の平均と自社の分布とのギャップなどを認識でき、不足している職種などが分かります。しかし、それまでです。具体的行動(アクション)にまでは発展していません。教育へのフィードバックの必要性までは認識しています。
情報処理技術者試験の結果のみをレベル判定に使用しています。エンジニア全員が参加しているわけではありません。希望者のみが参加し、結果を組織がITSSレベルの判定に利用しているだけです。ビジネスの戦略とはまだ関係ありません。
このレベルでITSSを導入しているとアピールするのはいかがなものでしょうか。
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