| 2009年6月1日 
   
 
 
 
   5. スキル標準との関係 これから、2,3回にわけてビジネスアナリシスとスキル標準について考えてみます。なぜ、この「スキル標準マガジン」でBABOK®を扱うようになったのか、その理由を明確にするのが目的です。長く連載をしていますが、実は一番書きたかったのはこの部分だったのです。筆者の現時点での結論を以下に示します。   【結論】 企業が導入するスキル標準は、BABOK®  でいうソリューション(もしくはソリューションコンポーネント)に他ならず、スキル標準導入を推進する人やコンサルタントはビジネスアナリストそのものである。   それでは、具体的な知識エリアとタスクを見ながら、ビジネスアナリシスとスキル標準の関係を検証していきます。  -スキル標準導入プロセスの全体像(5.1)  -「エンタープライズアナリシス」とスキル標準(5.2)  -「要求分析」とスキル標準(5.3)  -「要求の管理と伝達」とスキル標準(5.4)  -「ソリューションの診断と妥当性確認」とスキル標準(5.5)  -「ビジネスアナリシスの計画とモニタリング」とスキル標準(5.6)  -「引き出し」とスキル標準(5.7) 順番はスキル標準の導入プロセスを意識したものです。     5.1 スキル標準導入プロセスの全体像 経済産業省は「ITスキル標準V3 2008 1部:概要編」で次のように述べています。    戦略が伴わない人材育成は、ビジネスや技術を担い競争力を支えていくプロフェッショナルの育成策につながらない。ITスキル標準は、図8のようなビジネス戦略に基づく人材投資プロセスに基づいて活用することで意味を持つ。 
 
  
                       図8. 人材投資プロセス 出典: ITスキル標準V3 2008 1部:概要編   この「ビジネス戦略の立案」に相当するのがBABOK®の「エンタープライズアナリシス」です。まさに、ソリューション(スキル標準)をなぜ導入するのか(Why)を明確にする部分です。  スキル標準の導入プロセスの例として、弊社の「SMM:スキル標準成熟度モデル」を扱います。すでにご存じの方も多いと思いますが、念のためSMM全体像を振り返ります。   SMMでは、プロセスカテゴリーを以下の5つに分類しています。
 
 ビジネス分野: ビジネス上の課題を明確にします 人材像/GAP 分野: スキルの定義や人材像(キャリアモデル)を定め、現状とのGAPを明確にします。 教育体系/キャリア計画 分野: 教育を実施します。またエンジニアのキャリア計画も考えます。 レベル認定 分野: スキル標準のレベルを認定します 組織文化/その他 分野: スキル標準を導入するということは、何らかの組織改革を意味します。ですから、それを 実施するための組織文化(風土)も適切である必要性があります。 人事制度もスキル標準の導入に見合ったものが必要です。   一見して、このどこがビジネスアナリシス何だろうかと疑問をお持ちかもしれません。これからその疑問を解消していきたいと思います。   SMM(スキル標準成熟度モデル)のカテゴリとプロセス領域です。 
 
 興味のあるプロセスエリアをクリックすると解説のページに飛びます。お試しください。
 
   
   
 レベル3のカテゴリーとプロセス領域です 
 ビジネス分野: 
 【ビジネス戦略作成】 
 【顧客満足度調査】 
 人材像/GAP 分野: 
 【スキル分析・定義】 
 【人材像(キャリアモデル)作成】 
 【定期的スキル診断(GAP分析)】 
 教育体系/キャリア計画 分野: 
 【組織トレーニング(教育ニーズの統合)】 
 【キャリアモデル提示】 
 【個人別キャリア計画】 
 【個人別教育計画】 
 【メンタリング】 
 レベル認定 分野: 
 【社内認定(外部コンサル関与)】 
 組織文化/その他 分野: 
 【従業員満足度調査】 
 (参加型文化) 
 
 
 
 レベル3の具体的なプロセスを紹介します。 
 
 
                    
                      
                        |  | ビジネス戦略/ ビジネス効果
 | 人材像/ GAP分析
 | 教育体系/ キャリア計画
 | レベル認定 | 組織文化 その他
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                        | レベルⅢ | 【ビジネス戦略】 
 【顧客満足度調査】
 | 【スキル分析/定義】 
 【人材像策定】
 
 【スキル診断(GAP分析)】
 | 【組織トレーニング(教育ニーズの統合)】 【キャリアモデル提示】
 【個人別キャリア計画】
 【個人別教育計画】
 【メンタリング】
 | 【社内認定(外部コンサルコンサル関与)】 | (参加型文化) 【従業員満足度調査】
 
 注)全プロセスが有機的にリンクされている(Defined)
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 ビジネス分野: 
 【ビジネス戦略作成】 
 
  
     レベル3のビジネス戦略作成プロセスです   プロセス1: 【ビジネス機会の追求】では、    -データの収集(準備段階)      市場、業界、顧客、チャンネル、競合に関する情報収集です。    -マーケットモデルの作成      顧客とそのニーズ、チャンネル 等を考えます    -セグメンテーションと競合分析    -目標セグメントの特定   このプロセスのOutputは    -顧客ニーズ    -優先順位のついた目標セグメントのリスト    -セグメント毎の競合情報    -理想のソリューション案   などです。   このプロセスで重要な知識・ツールがあります    -3つのニーズ    -テクノロジーサイクルとキャズム    -ホールプロダクト    -(SWOT分析)    -その他   この辺のことは、弊社Webページの「ITビジネス戦略事始め」をご覧ください。   おもしろ、おかしく解説してありますが、戦略の基本の基本を述べてあります。   【ITビジネス戦略事始め】    URL: http://www.kbmanagement.biz/sub22.html   このプロセス1 はBABOK® 「エンタープライズアナリシス」のタスク「ビジネスニーズを定義する」の中の要素「ビジネスの問題または機会を明確にする」及び「好ましい結果」と言えます。     プロセス2: 【意思決定】   このプロセスで行うことは、    -ビジネスのミッション、ビジョン、ゴールの作成    -中期目標の作成    -ビジネス戦略の決定   です。   プロセスのOutputは、    -ミッション、ビジョン、ゴール    -目標、戦略    -ビジネスモデル などです。   このプロセス2はBABOK®のタスク「ビジネスニーズを定義する」の中の要素「ゴールと目標」の部分です。プロセス1と2を合わせて「ビジネスニーズを定義する」に相当していることがお分かりになると思います。   BABOK®の知識エリア「エンタープライズアナリシス」の解説ページを参照してください。   -エンタープライズ分析 
 
 
  
 
 プロセス3:【実施計画の作成】は以下のような5つのサブプロセスに分割されます。     サブプロセス3.1: 【遂行計画の作成】    Output  ・組織のキープロセスとコアコンピテンシー     ・Function毎の戦略とプログラム     ・ビジネスイシューと対策     ・能力ギャップと他組織への依存     ・組織(図)   このサブプロセスが知識エリア「エンタープライズアナリシス」のタスク「能力GAPを診断する」「ソリューションアプローチを決める」「ソリューションスコープを決める」に相当します。     サブプロセス3.2: 【財務計画の作成】   Output     ・PL/BS、   ・キャッシュフロー     ・シナリオ     サブプロセス3.3: 【リスクマネジメントの作成】    Output:     ・リスクのリスト   ・対応策     サブプロセス3.4: 【他組織との依存関係】    Output     ・依存性リスト     ・対応計画     ・プロセスプラン     サブプロセス3.5: 【初年度計画作成】     ・年度計画     ・BSCなど   上記4つのサブプロセス【財務計画】【リスクマネジメント】【他組織との依存関係】【初年度計画作成(BSC)】は順番の前後があるかもしれませんが、BABOK®「エンタープライズアナリシス」のタスク「ビジネスケースを定義する」に相当します。     いかがでしょうか。BABOK®の知識エリア「エンタープライズアナリシス」はスキル標準導入の最上流工程そのものと言えるのではないでしょうか。   
 
 
 
 
 
    
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
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