ワークフォース・アーキテクト(1)
AI時代には、AIと人間との協働の在り方が重要になります。業務を分析しどの業務をAIに任せ人間は何をするべきかを考えなくてはいけません。業務分析はビジネスアナリスト(BA)やビジネスアーキテクト(BArct)が得意とする分野でありますが、人間の仕事を考えるのは人材開発(HR)です。AI時代におけるHR(人材開発)とBAとの関係はどのようなものになるのでしょうか。
人間とAIとの関係なので、AIと共に考えてみたので紹介します。
AI 時代の HR は BA/BArch のスキルを取り込む必要があり、これは HR という職種の性質そのものを変える可能性があります。ただし「HR が BA になる」のではなく、「HR と BA/BArch が融合した新しい領域が生まれる」と捉える方が正確です。
順を追って説明します。
なぜ協働設計が HR と BA/BArch の両方に関わるのか
まず、「人間 + AI の協働設計」という仕事が、なぜ両職種の境界に位置するのかを整理します。
この仕事を分解すると、実は2つの異なる設計が含まれています。
- 設計1:業務プロセスの側の設計(BA/BArch が得意) どの業務をどう分解し、どこを AI が、どこを人間が担うか。業務フロー、判断ポイント、エージェントのオーケストレーション。これは業務構造の設計であり、BA/BArch の領域です。
- 設計2:人間の側の設計(HR が得意) その新しい役割を担う人間に、どんなスキルが必要か。どう育成し、どう評価し、どう動機づけ、どうキャリアを設計するか。役割が変わる人をどう移行させるか。これは人と組織の設計であり、HR の領域です。
従来、この2つは別々の専門家が担っていました。BA/BArch が業務を設計し、その後で HR が「では必要な人材を用意します」と引き継ぐ、という分業です。
しかし AI 時代には、この2つを分離できなくなります。ここが本質です。
なぜ分離できなくなるのか
理由は、AI 時代の業務設計と人材設計が相互依存になるからです。
具体例で考えてみます。あるカスタマーサポート業務を「AI が一次対応し、人間が例外処理と判断を担う」形に再設計するとします。
このとき、「どこまでを AI に任せ、どこから人間が介入するか」という業務設計(BA の領域)は、「人間側にどんなスキルがあるか」「どんな人材を育成・配置できるか」(HR の領域)と切り離せません。人間の能力を無視して業務だけ設計しても機能しないし、業務設計を知らずに人材だけ用意しても噛み合わない。
さらに、AI に仕事を任せた人間が「より高度な判断業務にシフトする」とき、その新しい役割の定義(BA)と、その役割を担えるよう人を育てる仕組み(HR)は、同時に・一体で設計しなければなりません。
つまり、「業務をどう変えるか」と「人をどう変えるか」が一体不可分になる。これが AI 時代の特徴であり、HR が BA/BArch スキルを必要とする根本理由です。
HR が必要とする BA/BArch スキルとは具体的に何か
では、AI 時代の HR が取り込むべき BA/BArch のスキルを具体的に挙げます。
- 業務プロセス分析・モデリング。業務を構造的に分解し、可視化する力。どの業務がどんなタスクで構成され、どこに AI 適用の余地があるかを見抜く。従来の HR は「人」を見てきましたが、これからは「業務」を構造的に見る力が必要になります。
- ケイパビリティ思考。個別の業務ではなく、組織のビジネスケイパビリティ単位で「この能力をどう人間 + AI で実現するか」を考える視点。BArch の中核スキルです。
- 役割・職務の設計力(ジョブデザイン)。AI 前提で職務を再定義する力。これは従来の HR にもジョブデザインの概念はありましたが、AI 時代には「人間と AI の役割分担」を含む、より動的で構造的な設計が求められます。
- 要件定義と翻訳の力。「この業務にはこういう人材が必要」を、業務要件から構造的に導く力。BA の中核である「要件定義」のスキルです。
- 変革のロードマップ設計。業務変革と人材移行を時間軸で連動させる計画力。BArch のロードマップ設計と、HR の人材計画を統合したものです。
これらは、まさに BA/BArch が得意としてきた領域です。
では「HR が BA になる」のか?
- ここで慎重に考える必要があります。HR がそのまま BA/BArch になるわけではありません。逆方向も同様で、BA/BArch が HR になるわけでもない。
- 正確には、両者の境界に「新しい融合領域」が生まれると捉えるべきです。この融合領域を担う人材は、両方の素養を持ちます。
- 具体的には、次のような役割が立ち上がりつつあります。
- ワークフォース・アーキテクト(Workforce Architect)。直訳すると「労働力の設計者」。人間と AI を含めた「組織の働き方の全体構造」を設計する役割です。BArch が業務構造を、HR が人材を見るのに対し、ワークフォース・アーキテクトは**「業務 × 人材 × AI」を統合的に設計**します。これはまさに HR と BArch の融合です。
- ジョブ・リデザイナー / ワークデザイナー。AI 前提で個別の職務を再設計する役割。BA のプロセス分析力と、HR のジョブデザイン力を併せ持ちます。
- タレント・トランスフォーメーション・リード。業務変革に連動した人材移行を設計・推進する役割。BArch のロードマップ設計と、HR のリスキリング設計を統合します。
これらは、従来の「HR 担当者」でも「BA」でもない、新しいハイブリッド職種です。
続きは次回をお楽しみに。





