ワークフォースアーキテクト(2)

ワークフォースアーキテクト(2)

前回3つの新しいハイブリッド職種を紹介しました。

  • ワークフォース・アーキテクト(Workforce Architect)。
  • ジョブ・リデザイナー / ワークデザイナー。
  • タレント・トランスフォーメーション・リード

どちら側から融合領域に入るか:2つの経路が可能です。
この融合領域には、HR 側からも BA/BArch 側からも到達できます。それぞれに強みと課題があります。

WA9

HR 側から入る経路。

人と組織への深い理解、変革管理(チェンジマネジメント)、従業員の感情やキャリアへの配慮を強みとして持っています。これらは BA/BArch が苦手とする「人間的な側面」です。課題は、業務プロセスの構造的分析や、AI 技術の理解が弱いこと。ここを補強する必要があります。

BA/BArch 側から入る経路。

業務の構造化、要件定義、AI 活用の設計を強みとして持っています。課題は、人間の感情、モチベーション、キャリア、組織政治といった「人の側面」への理解が浅いこと。AI 前提で業務を設計できても、「その業務を担う人間がどう感じ、どう動機づけられるか」への配慮が抜けがちです。

どちらの経路でも、自分に欠けている側を補強することで融合領域に到達できます。そして、どちらの経路が優れているということはなく、組織には両方の出自の人材が必要です。

日本企業にとっての特別な意味

この融合は、日本企業にとって特に重要な意味を持ちます。

WA7

これまでの議論で繰り返し出てきたように、日本企業の AI 変革の最大の障壁は、終身雇用・メンバーシップ型雇用の中での役割変更の難しさでした。「この業務はもう要らない」「あなたの役割は変わる」という結論を、雇用不安を生まずに実現する必要がある。
これは純粋な BA/BArch だけでは絶対にできません。業務を構造的に再設計する力(BA)と、人間の雇用・キャリア・感情に配慮しながら移行を導く力(HR)の両方が、不可分に必要です。
つまり日本企業でこそ、HR と BA/BArch の融合領域を担う人材が、AI 変革の成否を握る決定的な役割になります。欧米企業のように「業務が変わったら人を入れ替える」ことができない日本企業では、「業務変革と人材移行を一体で、丁寧に設計する」能力が、何よりも重要になるからです。

組織としてどう対応すべきか

では、企業はこの変化にどう対応すべきでしょうか。現実的な打ち手を整理します。

WA11

 

  1. HR 部門に BA/BArch スキルを注入する。HR 担当者に業務プロセス分析、ケイパビリティ思考、要件定義のスキルをリスキリングする。あるいは、BA/BArch 出身者を HR 部門に配置する。
  2. HR と DX 推進部門(BA/BArch がいる)の連携を制度化する。両者をペアで動かす。前回の議論で「DM と BA/BArch のペア制」を提案しましたが、同様に「HR と BA/BArch のペア制」が AI 変革には必要です。
  3. ワークフォース・アーキテクト的な役割を明示的に設ける。業務変革と人材変革を統合的に設計する役割を、組織図上に位置づける。CHRO 配下、あるいは CHRO と CDAO の協働領域として設計します。
  4. CHRO 自身が BA/BArch 的視点を持つ。前回の議論で「CHRO が AI 時代に進化する必要がある」と述べましたが、その進化の中核が、まさにこの BA/BArch 的な構造設計力の獲得です。

WA12

まとめ

  • 「人間 + AI の協働設計」は BA/BArch が得意とする領域であり、AI 時代の HR はこの BA/BArch スキルを取り込む必要があります。
  • しかし正確には、「HR が BA になる」のではなく、HR と BA/BArch の境界に新しい融合領域が生まれ、その融合領域を担う人材(ワークフォース・アーキテクト等)が AI 変革の鍵を握る、という構図です。
  • その融合領域は、業務の構造設計(BA/BArch の強み)と、人間への配慮を伴う変革管理(HR の強み)の両方を必要とします。どちらか一方では機能しません。
  • そして日本企業にとっては、雇用の制約の中で業務変革と人材移行を一体で設計する必要があるため、この融合領域の人材が、欧米企業以上に決定的な重要性を持ちます。
  • 突き詰めると、これまでの一連の議論で浮かび上がってきたのは、AI-Ready な組織への変革は、技術・データ・業務・人材の境界がすべて溶け合い、統合的に再設計される必要がある、という一貫したテーマです。データマネジメントと BA/BArch の融合、AI とデータの融合(CDAO)、そして今回の HR と BA/BArch の融合 — これらはすべて同じ現象の異なる側面です。AI 時代の組織設計とは、従来分かれていた専門領域を、いかに統合するかという挑戦なのだと言えます。

WA13