知識エリア: 基礎コンピテンシー
6つの知識エリアの下支えとなっているのが、これから説明する「基礎コンピテンシ」です。
ビジネスアナリストとして当然(?)持ってしかるべき基礎的な知識、スキル、行動特性です。非常に幅の広いスキルが必要なことが分かります。6知識エリアの各タスクを実行するためにはテクニックが必要です。そのテクニックのベースとなっているのがこの基礎コンピテンシと考えてください。
6つのカテゴリがあります。
- 分析的思考と問題解決
- 行動特性
- ビジネス知識
- コミュニケーションスキル
- 人間関係のスキル
- ソフトウェアアプリケーション
各々のカテゴリには3~5つのコンピテンシ(知識、スキル、行動特性)が定義されています。
1. 分析思考と問題解決
このカテゴリには5つのスキルがあります。知識エリア「エンタープライズ分析」や「要求分析」のタスクを実行するために必須のスキルです。コンセプチャルスキルという言い方もできます。
- 創造思考: 問題を解決するためには新しいアイデアを創出する必要があります。
- 決定分析: 意思決定をするための基準を十分理解する必要があります。
- 学習: ビジネス領域とその機能を理解し、組織の利益に結びつけるためには常に学習する必要があります。
- 問題解決: 問題を定義し解決するためにはその真の原因を明確にし、ソリューションが問題を解決できることを確実にする必要があります。
- システムシンキング: 組織内の人(People)、プロセス、技術(テクノロジー)などが相互に影響し、全体としてシステムを構成していることを理解する必要があります。
2. 行動特性
このカテゴリには3つのコンピテンシ(行動特性)があります。これらはカテゴリ名が示すように、行動特性なので知識・スキルではなく、コンピテンシと言えます。このカテゴリは知識があるだけでは意味がありません。適切な行動が伴うことが重要です。
- 倫理: ステークホルダから信頼され、尊敬されるためには、高い倫理観(職業倫理)を持って いなくてはいけません。コンプライアンスの前提です。ビジネスアナリストのみならず、すべてのプロフェッショナル職としての大前提です。
- 自己管理(Personal Organization): タスクと情報を効果的に管理するために、このコンピテンシが重要になります。タイムマネジメントも含まれます。
- 信頼感: 信頼されないと、ステークホルダに本音を語ってもらえません。さらにスポンサーから信頼されないと、何も始まりません。ビジネスアナリストとして最も重要な特性の一つだと思います。
3. ビジネス知識
このカテゴリはスキルではなく、主に知識です。
- ビジネス理論と実践: 説明不要だと思います。
- 業界知識: 当然知らなければいけない知識分野です。
- 組織知識: 組織のビジネスアーキテクチャを理解することです。
- ソリューション知識: ソリューションを考えるためには必須です。
4. コミュニケーションスキル
ヒューマンスキルです。大変重要です。どちらかというと1-Way的なコミュニケーションで、しゃべることや書くことがメインです。知識エリア「要求の管理とコミュニケーション」のタスクを実行する上で欠かすことができません。
- オーラルコミュニケーション: 口頭でのコミュニケーションです。
- 教えるスキル: アダルトラーニングのスキルです。視覚学習、聴覚学習、体験学習などを活用できるスキルが必要です。一方的に教えて理解してもらえるものではありません。
- 文書伝達: 当然必要なスキルです。特に日本語の場合、英語とは異なるニーズがありますので要注意です。
5. 人間関係のスキル(Interaction Skill)
これもヒューマンスキルです。相手や集団とのやり取りを主に考えます。知識エリア「引き出し」のタスクを成功するために極めて重要です。説明は省略します
- ファシリテーションとネゴシエーション
- リーダーシップと影響力
- チームワーク
6. ソフトウェアアプリケーション
さまざまなソフトウェアを使いこなす必要があります。
- 汎用アプリケーション: MSオフィスなどのソフトを自在に使いこなす必要があります。
- 特定アプリケーション: 図解ソフト、モデリングソフト、要求管理ソフトなども重要です。
以上、簡単ですがBABOK®2.0 の基礎コンピテンシ(Underlying Competencies)について解説いたしました。
ヒューマンスキルを含めて、必要なスキルが良く定義されていると思います。日本のスキル標準(ITSS/UISS/ETSS)や情報処理技術者試験などと比較すると、本当に良くできているものだと感心します。やはりグローバルスタンダードは違うと思うのは筆者だけではないと思います。