AIエージェントによる業務革命(後編)

前回からの続きです。

事の本質が「業務の実行主体が人間からエージェントに移る」であることは、業務の改善/改革のレベルではなく、まさに「業務の革命」と言うべきものです。

ただしその前提としてとして、業務が標準化されていることが必須です。部門や地域ごとにバラバラなプロセスを標準化する必要があります。PCFは、統一されたプロセス分類を提供するため、社内のプロセス整備や共通基盤の確立に役立ちます。日本の伝統的な現場の創意工夫による部分最適を改善することができます。例えば同じ業務でも東京と大阪では担当者レベルでプロセスが異なる場合、それを統一した(標準化した)プロセスにしてシステム化するなどが必要です。

そこで、以前から紹介しているAPQC PCFを考えてみます。

PCF全体像_2024年12月17日

 

このPCFは組織全体の業務を13のカテゴリー(レベル1)に分類し、さらにその下位に、

  • プロセスグループ(レベル2:72個)
  • プロセス(レベル3:329個)
  • アクティビティ(レベル4:1,200個以上)
  • タスク

業務を階層構造化したもので組織全体の業務を網羅している参照モデルです。

PCFの詳細は以前のコラムを読んでいただきたいのですが、

http://kbmanagement.biz/?p=6662

もし業務が:

  • PCFで標準化され
  • データ構造が整理され
  • 判断ロジックが明確化され

ているなら、AIエージェント導入の準備が整っているということになります。逆に言えば、BAが業務を明確化した瞬間にAI化可能性が顕在化するということです。これはいったい何を意味しているのでしょうか。

前回話題のSaaSの死は「序章」でしかすぎません。本質は「業務の実行主体が人間からエージェントに移る」ということですから、標準化が進んでいる組織では、影響はSaaSに留まりません。「業務設計」そのものに及びます。それはまさしく「業務革命」と言えるのではないでしょうか。

「業務設計能力を持つ組織」と「持たない組織」の分断が始まるような気がします。そしてその中心にいるのが PCFを熟知して業務の標準化を実現できるビジネスアナリスト(BA) です。

Cowork時代の本質

Anthropic の Cowork が示しているのは以下のことです。

  • ソフトウェアを操作するAI
  • 業務を横断するAI
  • ワークフローを自律実行するAI

しかし、AIが実行できるのは:「定義された業務」だけです。つまり、業務が構造化(かつ標準化)されていない組織ではCoworkは無力なのです。

これからの競争を図示すると

組織タイプ 結果
業務が暗黙知 AI導入失敗
部分最適でSaaSに依存 断片的自動化
PCFで体系化済み 全社横断AI統合

 

つまり、「業務標準化能力 = AI活用能力」になります。

BAの地位も大きく変わります。

これまでのBAの主な役割は以下のようでした。

  • 要件定義
  • 業務整理
  • システム導入支援

これからのBAは役割です。

  • AI実装設計者
  • 業務アルゴリズム化責任者
  • 自律化ガバナンス設計者

言い換えると:BAは「業務革命の立役者」そのものになります。

ChatGPT Image 2026年2月19日 09_59_46

 

具体的には、AIエージェントの活用が進むことで、BAは以下のようなより高次元で戦略的な役割を果たすようになります。

AI活用の戦略的パートナー:

単にAIツールを導入するだけでなく、どの業務にAIを適用すべきか、AIがどのようにビジネス価値を生み出すかを戦略的に設計する役割を担います。

AIエージェントに「何を」「どう判断させ、どう行動させるか」を定義するための、業務の言語化・構造化能力がますます重要になります。

ビジネスとテクノロジーの架け橋(進化版):

従来のシステム開発における橋渡し役を超え、最先端のAI技術をビジネス課題解決にどう応用するかを探求し、経営層や現場、IT部門との議論をリードします。AIエージェントの能力と限界を理解し、人間とAIが最も効果的に協働できるビジネスモデルやプロセスを設計します。

変革推進とチェンジマネジメントの専門家:

AIエージェントの導入は組織と業務プロセスに大きな変革をもたらします。BAは、この変革を推進し、従業員がAIと共存し、新しい働き方を受け入れられるよう支援する役割を強化します。

つまり、AIはBAの業務の一部を「代替」するのではなく、BAがより「人間力を必要とする、戦略的で創造的な業務」に集中できるよう「支援」し、その役割を高度化させる存在となると考えられます。BA自身も、AI技術を学び、使いこなすことで、その専門性と市場価値をさらに高めることができるでしょう。