PMI-BAガイド 解説(3) 【ステークホルダー・エンゲージメント】

PMI-BAガイド 解説(3) 【ステークホルダー・エンゲージメント】

知識エリア「ステークホルダー・エンゲージメント」の主要概念はつぎのとおりです。

  • ステークホルダーを特定し、巻き込み、その人たちとコミュニケーションし、協働的な方法で作業する最良の方法を理解するために、その人たちのニーズと特性を理解する活動など。
  • ビジネスアナリシスに特有なことではありませんが、ビジネスアナリシスにおいて実行される場合、その目標はビジネスアナリシス・プロセス全体にわたってステークホルダーと最良の関係を確実に保つこと。
  • ビジネスアナリシスの多くの作業にはコミュニケーションがあります。「ステークホルダー・エンゲージメント」のプロセスは、分析中の状況やソリューションに直接的または間接的に関連している人たちの意識を高めます。
  • 誰がビジネスアナリシス・プロセスに加わり、関与する必要があるのかが明確になり、お互いに協力し、支援的で協働的な実務慣行を適用する努力がなされた場合、ビジネスアナリシスにとって、そしてポートフォリオマネジメント、プログラムマネジメント、およびプロジェクトマネジメント全体にわたって大きなベネフィットが得られます。
  • 「ステークホルダー・エンゲージメント」の目的は、ステークホルダー・グループからの最適な代表者、および継続的な関心と関与を確実に得ることです

PMI_BA_SHエンゲージメント_2019年10月5日

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この知識エリアには次の7つのタスクがあります。

  1. ステークホルダーの特定
  2. ステークホルダー分析の実行
  3. SHエンゲージメントとSHコミュニケーションのアプローチの決定
  4. BA計画の立案
  5. 将来状態への移行の準備
  6. SHエンゲージメントとSHコミュニケーションのマネジメント
  7. BAパフォーマンへの評価。

 

5.1 ステークホルダーの特定

  •  定義
    評価対象の領域に影響を与えたり、そこから影響を受けたり、影響を受けると考えられる個人、集団、または組織を特定するプロセスです
  •  ベネフィット
    ビジネスアナリシス関連の活動全体にわたって誰の利益が考慮されるべきかを見極めるのに役立ちます

【重要】ステークホルダーの違い:

  • PMBOK®ガイド:ステークホルダーとは、ポートフォリオ、プログラム、またはプロジェクトの意思決定、活動、あるいは成果に影響を与えたり、そこから影響を受けたり、影響を受けると考えられる可能性のある個人、集団、または組織です。

 インプット

  1. 引出しの結果(未確認/確認済み)
  2. エンタープライズ・アーキテクチャとビジネス・アーキテクチャ
  3. 状況記述書

ツールと技法

  1. ブレーンストーミング
  2. インタビュー
  3. 組織図
  4. プロセス・フロー
  5. 調査とアンケート

 アウトプット

  1. ステークホルダー登録簿

 

5.2 ステークホルダー分析の実行

  •  定義:
    評価対象の領域に影響を与える可能性があったり、そこから影響を受けたり、そこから影響を受けると考えられる個人、集団、または組織に関する定量的および定性的な情報を調査し分析するプロセスです
  • ベネフィット
    引出しと分析の技法を選択し、ビジネスアナリシスの取組みにおける異なる時点で参加するのが適切なステークホルダーを選択し、使うのに最適なコミュニケーション手法とコラボレーション手法を見極める際に使える、ステークホルダーに関する洞察を提供します

インプット

  1. 引出しの結果(未確認/確認済み)
  2. エンタープライズ・アーキテクチャとビジネス・アーキテクチャ
  3. 状況記述書ステークホルダー登録簿

ツールと技法

  1. 職務分析
  2. ペルソナ分析
  3. RACIモデル
  4. ステークホルダー・マップ

アウトプット

  1. ステークホルダー登録簿更新版

 

5.3 SHエンゲージメントとSHコミュニケ―ションのアプローチの決定

  •  定義
    ビジネスアナリシス・プロセスにおけるステークホルダーのニーズ、関心、および役割の分析に基づいて、プロダクト・ライフサイクル全体にわたって効果的にステークホルダーと関与し、コミュニケーションするための適切な手法を決めるプロセスです
  •  ベネフィット
    ビジネスアナリシスと要求関連活動全体にわたってステークホルダーに関与してもらう明確かつ実用的なアプローチを提供します。それにより、当該施策のニーズを満たし、ステークホルダーの期待に応えるためのコミュニケーションの最善な手法と頻度によって、ステークホルダーが適切な情報を受け取れます。

インプット

  1. 状況記述書
  2. ステークホルダー登録簿更新版

 ツールと技法

  1. 引出し技法
  2. ペルソナ分析
  3. RACIモデル
  4. レトロスペクティブと教訓
  5. ステークホルダー・マップ

 アウトプット

  1. SHエンゲージメントとSHコミュニケーションのアプローチ

 

5.3 SHエンゲージメントとSHコミュニケ―ションのアプローチの決定

  • 定義
    ビジネスアナリシス・プロセスにおけるステークホルダーのニーズ、関心、および役割の分析に基づいて、プロダクト・ライフサイクル全体にわたって効果的にステークホルダーと関与し、コミュニケーションするための適切な手法を決めるプロセスです
  •  ベネフィット
    ビジネスアナリシスと要求関連活動全体にわたってステークホルダーに関与してもらう明確かつ実用的なアプローチを提供します。それにより、当該施策のニーズを満たし、ステークホルダーの期待に応えるためのコミュニケーションの最善な手法と頻度によって、ステークホルダーが適切な情報を受け取れます。

インプット

  1. ビジネスアナリシスのパフォーマンス評価結果
  2. 憲章
  3. EEF
  4. 他の全ての知識エリアの計画アプローチ

 ツールと技法

  1. バーンダウンチャート
  2. 要素分解モデル
  3. 見積り技法
  4. 計画技法

 アウトプット

  1. ビジネスアナリシス計画書

 

5.4 ビジネスアナリシス計画の立案

  • 定義
    ビジネスアナリシス計画の立案は、チームが実行するビジネスアナリシス活動に関する共通の合意、およびビジネスアナリシス作業の完遂に必要なタスクに対する役割、責任、スキル・セットの割当てについて共通の合意を得るために実行されるプロセスです。
  •  ベネフィット
    ビジネスアナリス作業への今後の取組み方に関する議論を促し合意を得ることによって、今後の予測を立て、実行時の役割や責任に関する混乱を避けられます

 インプット

  1. ビジネスアナリシスのパフォーマンス評価結果
  2. 憲章
  3. 組織体の環境要因
  4. 他の全ての知識エリアの計画アプローチ

 ツールと技法

  1. バーンダウンチャート
  2. 要素分解モデル
  3. 見積り技法
  4. 計画技法

アウトプット

  1. ビジネスアナリシス計画書

このプロセスは「ステークホルダー・エンゲージメント」のみならず、ビジネスアナリシスすべての活動(の概要)の計画(アプローチ)を集約するプロセスです。PMBOKの「プロジェクトマネジメント計画書作成」に近いものです。その他の全ての知識エリアにある「~アプローチ」をインプットとして、ビジネスアナリシス活動の全体計画にまとめます。
他の知識エリアでは「~アプローチの決定」というプロセス名で、それらのアウトプットは「~アプローチ」です。

           プロセス名                                            アウトプット

  • 6.1 引出しアプローチの決定                              引出しアプローチ
  • 7.1 アナリシスアプローチの決定     アナリシス・アプローチ
  • 8.1 トレーサビリティ・アプローチと   トレーサビリティ・アプローチと監視アプローチ
    監視アプローチの決定
  • 9.2 ソリューション評価アプローチの決定  ソリューション評価アプローチ

尚、ビジネスアナリシスでは変化を受け入れることを旨としますから堅苦しい「~計画書」はあまりなじみません。そのため「計画書」ではなく「アプローチ」という用語を使用することが多いのです。プロジェクトと異なり、活動そのものも柔軟で、計画に沿って行われるものだけではないことに留意してください。もちろん計画を無視してよいということを言っているわけでもありません。この辺はPMBOKになれている読者には違和感を感じるかもしれませんね。PMとBAの違いのひとつと思っていただけたらと思います。

5.5 将来状態への移行の準備

  • 定義
    組織が移行の準備をできているか、どのように現状から将来の状態へ移行して、当該ソリューションや部分的なソリューションを定常業務に統合するのかを決定するプロセス
  •  ベネフィット
    組織が、新しいソリューションやソリューション構成要素の導入により生じる変化を上手に採用できるます。そして、ソリューションが業務に提供された後に、プロダクトやプログラムの構成要素、あるいはプログラム全体に期待されていたあらゆるベネフィットが持続できます

 インプット

  1. ビジネス・ケース
  2. 現状の評価結果
  3. プロダクト・リスク分析結果
  4. プロダクト・スコープ
  5. 要求事項と他のプロダクト情報
  6. ソリューション・デザイン
  7. SHエンゲージメントとSHコミュニケーションのアプローチ

 ツールと技法

  1. 引出し技法
  2. グループ意思決定技法
  3. 職務分析
  4. 優先順位付けの仕組み
  5. プロセス・フロー図
  6. SWOT分析
  7. ユーザー・ストーリー

 アウトプット

  1. 受容性評価結果
  2. 移行計画書

なぜこのプロセスがこの知識エリアにあるのでしょうか。次のたったひとつのインプットだけがこの知識エリア内からです。

  • SHエンゲージメントとSHコミュニケーションのアプローチ

その他は全て外部知識エリアからインプットです。またアウトプットは全て外部知識エリアのプロセスのインプットになります。この知識エリアに属している理由が希薄ですね。

 5.6 SHエンゲージメントとSHコミュニケーションのマネジメント

  • 定義
    ビジネスアナリシス・プロセスへの適切な関与を促進し、進行中のビジネスアナリシス作業についてステークホルダーに適切な情報を提供し続け、そして、プロダクトが進化するにつれ、そのプロダクトの情報をステークホルダーと共有するプロセスです。
  • ベネフィット
    ビジネスアナリシス・プロセスとソリューションの定義へのステークホルダーの継続的な関与を促進し、ステークホルダーとの継続的なコミュニケーションを維持します

 インプット

  1. SHエンゲージメントとSHコミュニケーションのアプローチ
  2. ステークホルダー登録簿更新版

 ツールと技法

  1. 引出し技法

 アウトプット

  1. 改善されたSHエンゲージメントとSHコミュニケーション

 

 5.7 ビジネスアナリシス・パフォーマンスの評価

  • 定義
    組織全体にわたって使われているビジネスアナリシス実務慣行の有効性を、典型的には、ポートフォリオの構成要素、プログラム、またはプロジェクトの継続的な成果物や結果を検討するという観点で検討するプロセスです
  •  ベネフィット
    ビジネスアナリシス実務慣行を調整し、プロジェクト、プロジェクト・チーム、そして最終的には当該組織のニーズを充足する機会を提供します

 インプット

  1. ビジネスアナリシス計画書
  2. ビジネスアナリシスの組織標準
  3. ビジネスアナリシスのパフォーマンス・メトリクスと測定項目
  4. ビジネスアナリシスの作業プロダクト

ツールと技法

  1. バーンダウンチャート
  2. 引出し技法
  3. プロセス・フロー図
  4. レトロスペクティブと教訓
  5. 根本原因分析と好機分析
  6. 差異分析

 アウトプット

  1. ビジネスアナリシスのパフォーマンス評価結果