AIとビジネスアナリシス(7)
6回までの連載では、生成AI/AIエージェントが世の中に及ぼす影響について論じてきました。
その結果、以下の職種は2~3年以内にその多くがAIによって大きな影響を受けるそうです。
生成AI/AIエージェントが大きな影響を及ぼす職種(25年~26年)
- ソフトウェア開発者(特にシニア以外のエンジニア)
- プロダクトマネージャー(チケット分解や要件調整)
- データアナリスト(前処理→分析→可視化まで自動)
- テクニカルサポート(ログ分析→問題特定→修復提案)
- 経理の定型業務(請求書処理・記帳)
それを可能にするのが次のAIエージェントということです。
- Devin(Cognition)
- Cline(IDE内エージェント)
- GPT Agents(Auto-GPT系)
- SWE-agent、Windsurfなど
詳細は前回のコラムを参照してください。
今回は、そのように企業活動の多くがAIにより変革される中で、ビジネスアナリシスの役割について考えてみましょう。
生成AI/AIエージェント時代におけるビジネスアナリシスの役割
― 戦略と実行をつなぐ“価値創出のナビゲーター” ―
問題提起
- 生成AI・AIエージェントが企業活動を大きく変えつつある
- しかし「AIを導入しただけ」では価値は生まれない
- 成功する組織と失敗する組織の違いは、チェンジ(変革)を方向づけられるかどうか
ビジネスアナリシスとは(定義)
- ニーズを定義し、ステークホルダーに価値を提供するソリューションを推奨することにより、エンタープライズにチェンジ(変革)を引き起こすことを可能にする専門活動(BABOKガイドV3)
戦略アナリシスの重要性(BABOK)
- 現状の分析
- 将来状態の定義
- リスクと課題の特定
- チェンジ(変革)戦略の策定
→ AI活用を含め、チェンジ(変革)の起点は「戦略アナリシス」にある
この4つのタスクはAIでは行うことが困難で、やはり人間(ビジネスアナリスト)が行わなければいけないものばかりです。
BAが果たす4つの核心的役割
- 顧客自身が気づいていないニーズを発見する
→ 表面的な要望にとらわれず、真の課題を掘り起こす - ビジネス目標とソリューション(デジタル活用)を結びつける
→ DX・AIを“目的達成の手段”として位置づける - 複雑なステークホルダー(利害関係者)の声を整理し、合意を導く
→多様な立場(コンテキスト)をまとめ、実行可能な方向性を描く - AIを含めたソリューションの妥当性・価値を検証する
→導入効果を測定し、継続的な改善(これもチェンジ)につなげる
上記4つの核心的役割もAIにはできないことです。それこそビジネスアナリストの真価の発揮する場面です。逆にこれら以降のソリューションの設計・構築・テストなどの工程での作業は人間よりAIエージェントによる肩代わりが進んでいきます。
しかし今までビジネスアナリストの仕事としてなされてきた次の作業はAIによって肩代わりされることもあります。
- RFP、BRD、要求定義書、SW仕様書などの仕様書作成
- テスト仕様書作成
- ユーザー受入れ定義書作成
BAは煩わしいドキュメント作成から解放されますから、ドキュメントに記載される要求そのものの精度を高めることが可能になり、より質の高いビジネスアナリシス活動が可能になると言えます。
AI時代における比喩
- AIは「強力なエンジン」
- しかし、進むべき方向を決める「ハンドルとナビゲーション」がなければ危険
- ビジネスアナリシス=AI時代の未来への舵取り役
まとめ
- 過去の成功体験は通用しない
- 生き残るのは「チェンジ(変革)を主導できる組織」
- 戦略アナリシスを起点に、
→ 真のニーズを発見しそれをソリューションに結びつけ
→ ビジネス目標とデジタルテクノロジーを結び
→ステークホルダーの合意を導き
→ソリューションの価値を検証する - それが、生成AI・AIエージェント時代におけるBAの最大の役割