11.4 ビジネスアーキテクチャ専門領域
- ビジネスアーキテクチャは、戦術上の要求を備えた戦略の目的を整合させる目的で組織についての共通の理解を提供するための青写真と呼ばれて、アーキテクチャ上の記述およびビューを提供する。異なるステイクホルダーに対する異なるビューは異なるシステムおよびコンポーネントの点から表現される。
- ビジネスアーキテクチャは、それが解決しようとしているもののコンテキストおよび他の影響を及ぼすエージェントの中でニーズを満たすために最良のソリューションを決定するために問題を解決することに関係している。ビジネスアナリシスは、それが解決しようとしているもののコンテキストと他の影響を及ぼす代理人の中で必要を満たすために最良の解決を決定するために問題を通り抜けて思うことに関係する。モデル、組織構成あるいは他の変革イニシアチブを操作して、解決策がビジネスモデルの変化を含んでいるかもしれないところで、ビジネスアーキテクチャの専門分野は企業レベルに分析思考およびアーキテクチャ理念を適用する。ソリューションがビジネスモデルの変革、運用モデルの変革、組織構成の変革、他の変革イニシアチブを含む場合、ビジネスアーキテクチャの専門領域はエンタープライズレベルに分析思考およびアーキテクチャ理念を適用する。
- ビジネスアーキテクチャは特定の基本アーキテクチャ原理に従う:
スコープ:
- ビジネスアーキテクチャーのスコープはエンタープライズ全体であり単独のプロジェクト、イニシアチブ、プロセス、情報システムではない。相互作用、機会統合、冗長性、矛盾について理解するために、より大きなビジネス・コンテキストにプロジェクト、プロセスおよび情報システムを組み入れる。
関心の分離:
- ビジネスアーキテクチャは、そのコンテキスト内の関心を分離する。
- ビジネスが特に次のものから行うことを切り分ける:
・ビジネスが使用する情報
・ビジネスを遂行する方法
・ビジネスを組織内(または外部)で行う人とその場所
・ビジネスが行われる時間
・ビジネスが行われる理由
・ビジネスがうまくできている程度
シナリオ駆動:
- ビジネスが整合するために青写真を提供することに回答することには様々な疑問がある。
- 異なる質問、すなわちビジネス・シナリオ、の各々は、異なるタイプの結果と、成功するための異なる手段と共に、情報と関係の異なるセットを含んでいる青写真の異なるセットが必要である。
ナレッジベース:
- ビジネスアーキテクチャの主要目的はこれらのビジネス質問に答えることだが、その次に重要なゴールは、ビジネス上の質問に答えるのを支援するために速く容易に使用することができるように、ナレッジベースの異なるアーキテクチャ上のコンポーネント(何(What)、どのように(How)、誰(Who)、なぜ(Why)、など)とそれらの関係を集めてカタログを作ることである。ナレッジベースは、しばしば形式的なアーキテクチャ上のリポジトリで管理される。
11.4.1 変革スコープ
.1 変革の広さ
- ビジネスアーキテクチャのアクティビティは、考えられるエンタープライズ全体のビューで一般に行なわれるが、エンタープライズ内の事業ユニットのために行なわれることもある。エンタープライズレベルの一貫性および統合を管理する幅広いスコープが必要である。例えば、ビジネスアーキテクチャは、異なる情報モデルを使用する多数の異なるプロセスおよび多数の異なる組織によって、同じビジネスケイパビリティが実装される状況を明確にする場合がある。そして、エンタープライズスコープにより明瞭になり、ビジネスは、この構造が戦略目標と提携する最良の方法かどうか判断することができる。
.2 変革の深さ
- ビジネスアーキテクチャ労力は、戦略的意思決定を支援するためにエンタープライズの役員レベルに注目するかもしれません。あるいは、イニシアチブの実行を支援するためにマネジメントレベルに注目するかもしれません。
- ビジネスアーキテクチャは重要なコンテキストを提供するが、通常、業務上の意思決定あるいはプロセスレベルでの運用ではない。
.3提供される価値とソューション
- 関心の分離の原理を活用するビジネスアーキテクチャは、特定の機能を備えた個々の要素の中においてビジネス組織、ソリューションまたは組織を分解するモデルを開発し、それらの関係を示す。
- ビジネスアーキテクチャ・モデルの要素の例:
・能力
・価値
・プロセス
・ソフトウェアアプリケーションとシステム
・情報とデータ
・組織
・報告とマネジメント
・情報テクノロジー(IT)
・ステークホルダー
・セキュリティ戦略
・成果 - 組織は、アーキテクチャー・モデルによって分析対象のドメインのビッグピクチャ―を見ることができる。組織かソフトウェア・システムの重要な要素とそれらがどのように適合するかに対して洞察力でき、また重大なコンポーネントあるいは能力を強調できる。
- ビジネスアーキテクチャによる洞察は、システムとオペレーションを首尾一貫して有用なやり方で機能させ、かつ経営上の意思決定に明瞭さを加味することを支援する。変革が考慮されている場合、アーキテクチャーは優先順位とリソース配分を考慮に入れて、変革には適切な要素についての詳細を提供する。部分がどのように関連づけられるかアーキテクチャ上のモデルがさらに示すので、システムまたはビジネスの他のどの要素が変革によって影響を受けるかもしれないか伝える影響分析に使用することができる。
- アーキテクチャーはそれ自体、必要な変革を特定することを支援するツールとして使用することができる。アーキテクチャーの各要素のパフォーマンスメトリクスは要素がいつパフォーマンスが下回っているか特定するためにモニターしアセスメントすることができる。各要素の重要性は、組織かシステムのパフォーマンスを全体として比較することができる。どこに投資をするべきか、いつ行うかを考える場合、およびそれらの意思決定に優先順位を付ける方法について、意思決定者を支援する。
- ビジネスアーキテクチャの機能は、組織のビジョン、ゴールおよび戦略に整合したアクションにより、組織横断的なアクションの整合、同期を促進させることである。
- このプロセスで作成されたアーキテクチャモデルは、ビジョン、ゴール、戦略の意図について明確に理解し、統一し、提供し、資源を集中することを確実にするために使用されるツールである。また、この戦略方向と提携し、支援する組織の要素に適用するためにも使用される。
- ビジネスアーキテクチャは、ITおよび非ITの両方の視点から戦略を計画し実行するために、マネジメントが使用できる青写真を提供する。
- ビジネスアーキテクチャは以下をガイドするために組織によって使用される:
・戦略的計画
・ビジネスモデルの再構築
・組織の再設計
・顧客保持のためのパフォーマンスメジャメントと変容イニシアチブ
・ビジネスのリストラ
・コスト削減
・制度上のナレッジの形式化
・ビジネスビジョンの展開とコミュニケーションのための手段の構築
.4 提供方法
- ビジネスアーキテクチャ自体は変革イニシアチブではない。ビジネスアーキテクチャは、明瞭さと組織に対する洞察力を提供し、意思決定者が必要な変革を特定するのを支援する立案フレームワークを作成する。ビジネスアーキテクチャによって提供されるアーキテクチャ上の青写真は、組織が戦略にどれくらい整合しているのかの洞察と理解を提供する。この洞察は変革イニシアチブまたは他の計画アクティビティのトリガーとなる。
- ビジネスアーキテクチャを初めて組織で作成している場合、あるいは組織がM&Aのような重要な変容を遂げている場合は、ビジネスアーキテクチャは実行中の変革イニシアチブになる。
- ビジネスアーキテクチャの結果はアーキテクチャ上の青写真あるいはモデルのセットである。これらの青写真またはモデルは、組織における重要な懸念を明確にすることができる。懸念は本来戦略的なもので、組織のための重要な関心分野を定義する。懸念はニーズに整合するが、要求ほど具体的ではない。異なるステイクホルダーグループには懸念に整合するユニークな要求があるかもしれない。
- 提供される各青写真については、ビジネス・アーキテクチャは次のように定義するかもしれない:
・現在の状態
・将来の状態
・将来の状態に移行するために使用される1つ以上の遷移状態 - ビジネスアーキテクトは、全組織のビューを要求し、上級リーダーシップのメンバーへ一般に直接報告してもよい。
- ビジネスアーキテクトは広い、以下の組織についての理解を要求する:
・組織構造と報告の関係
・価値のフロー(バリューチェーン)
・ケイパビリティ
・プロセス
・情報とデータストア
・上記すべての要素とその組織戦略との関係 - ビジネスアーキテクトは組織の戦略を伝達したりイノベーションする際に重要な役割を果たす。彼らはビジネスアーキテクチャが提供する青写真、モデル、洞察を活用し、絶えず組織の戦略を主張し、個々のステークホルダーニーズと組織のゴール全体との橋渡しをする。
- 成功するビジネスアーキテクチャの主要な要素:
・エグゼクティブリーダーシップチームによる支援
・組織的意志決定権威(例えば投資、イニシアチブ、インフラストラクチャー決定に関する)を含む明瞭で効果的なガバナンスプロセスの統合
・進行中の変革イニシアチブ(これは、ステアリングコミッティまたは他の同様の顧問グル―プへの参加を含むかもしれない)の統合
・上級のエグゼクティブ、部門管理者、プロダクトオーナー、ソリューション・アーキテクト、プロジェクト・ビジネスアナリスト、プロジェクト・マネージャーにアクセスでき一緒に時間を過ごせること
.5 主要な前提条件
- 組織にとってビジネスアーキテクチャを有用にするために、ビジネスアナリストが要求すること:
・分析対象の組織全体のビュー
・エグゼクティブリーダーシップチームによる全面的支援とビジネスオーナーおよびSMEの参加
・組織戦略が実践されていること
・ビジネス命令が有効なこと
11.4.2 ビジネスアナリシスのスコープ:省略
11.4.3 参照モデル
.1 参照モデル
- 参照モデルは、複数のセクター(例えばITまたは金融)を横断して一般に見つかる、特定の産業または機能に1つ以上のビューポイントを提供するために、あらかじめ定められたアーキテクチャ上のテンプレートである。参照モデルは頻繁に特定産業か機能用のデフォルト・アーキテクチャー存在論と考えられる。それは、組織のニーズを満たすために、ビジネスアーキテクトが適応させることができるベースライン・アーキテクチャーの出発点を提供する。
解説(清水)
上記参照モデルを見ると、見慣れないものがいくつかあります。世の中にこれだけ多くの参照モデルがあることを再認識します。
ビジネスアーキテクチャ専門領域で記述されていることの大半は、いわゆるザックマンフレームワークに相当することのようです。参照モデルでは、ビジネスモチベーションモデルや米政府のエンタープライズ・アーキテクチャ・サービス参照モデル(FEASRM)が相当します。
しかし、この参照モデルのリストを見るとザックマンモデルとは異なる参照モデルが多く見受けられます。例えば、APQC(American Productivity and Quality Center)のプロセス分類フレームワーク(PCF)、サプライチェーン・カウンシルのサプライ・チェーン業務参照モデル(SCOR)、バリューチェーン・グループのバリュー参照モデル(VRM)などです。
以下、簡単に解説します。
左上図のAPQCのPCF(プロセス・クラリフィケーション・フレームワーク)は日本ではあまりお馴染みではないかもしれませんが、北米では有名です。APQCは米国のマルコム・ボールドリッジ賞(経営品質)を運営している団体としても有名です。PCFには多くの産業用の標準的な活動が網羅されています。レベル1~レベル4のプロセス/タスクのリストが整備されています。
PCFの基本的な考え方は、有名なマイケル・ポーターのバリューチェーンモデルです。
上記PCFの図の中のオペレーティング・プロセスはバリューチェーンモデルの「主活動」に相当します、そしてマネジメント/サポート・サービスは「支援活動」です。丁度、上下の位置が逆になっているのでわかりづらいかもしれません。
つづいて、サプライチェーン・カウンシルのSCOR(サプライチェーン業務参照モデル)です。サプライヤから自社、自社から顧客へとサプライチェーンが連鎖していくことをモデル化したものです。これもマイケルポーターのバリューチェーンモデルにヒントを得ているようです。
ただ、PCFやSCORとビジネスアーキテクチャとの関係が何も解説されていないのが残念です。
折を見て、ザックマンフレームワーク的なビジネスアーキテクチャと、バリューチェーンモデルをベースにした、PCFやSCORモデルとの関係を解説したいと思います。