DXにおけるビジネスアナリシスの重要性 (1)
デジタルトランスフォーメーションにおいてビジネスアナリシスが不可欠な要素であることが明確になってきました。もう少し具体的に詳細を見ていきます。
具体的には以下のような項目があります。
- ビジネスニーズの理解:
- デジタルトランスフォーメーションの機会の特定:
- デジタルソリューションの設計と最適化:
- ビジネスプロセスの分析と改善:
- ユーザー体験の向上:
- リスク評価と変革管理:
- パフォーマンス評価と改善:
- 変革管理とリーダーシップ:
ビジネスニーズの理解
ビジネスニーズを理解するために、ビジネスアナリストは以下の手法やアクティビティを実施することがあります:
ステークホルダーとのコミュニケーション:
ビジネスアナリストは、関係者や利害関係者と積極的にコミュニケーションを取ります。インタビューやワークショップを通じて、ビジネスのニーズや要件を明確化し、関係者の期待や要望を把握します。適切な質問を投げかけ、関係者の意見や視点を収集することが重要です。
引き出し:
ビジネスアナリストは、引き出しの手法を使用してビジネスのニーズを把握します。引き出しには、インタビュー、アンケート、観察、ドキュメントレビューなどの手法があります。これにより、ビジネスプロセス、業務フロー、データ要件、利用者要件などの情報を収集し、ビジネスニーズを明確にします。(BABOKガイドには18種類の引き出し手法が紹介されています)
ユースケースやシナリオの作成:
ビジネスアナリストは、ビジネスのニーズや要件を具体的なユースケースやシナリオとして表現します。ユースケースは、システムやソフトウェアがどのように機能すべきかを示す具体的なシナリオです。ユースケースの作成により、ビジネスニーズをより具体的に理解し、要件の優先順位付けや設計の指針となります。
根本原因分析:
ビジネスアナリストは、ビジネスのニーズや問題の背後にある根本原因を特定します。根本原因分析は、問題の根本原因を特定し、それを解決するための適切な対策や改善策を見つけるために行われます。根本原因分析により、ビジネスの課題や要件の本質を理解し、それに基づいたソリューションを提案します。ビジネスニーズが問題に起因している場合に重要です。
プロトタイピング:
ビジネスアナリストは、プロトタイピングを使用してビジネスのニーズを可視化し、関係者とのコミュニケーションを促進します。プロトタイプは、実際のシステムやソフトウェアの動作やインタフェースの一部を再現するものです。プロトタイピングにより、関係者との共通理解を深め、要件やニーズの誤解を防ぎます。
これらの活動を通じて、ビジネスアナリストはビジネスニーズを理解し、それをデジタルソリューションへの要件として翻訳します。
BABOK(ビジネスアナリシス知識体系)では、「ビジネス・ニーズの定義は、多くの場合、あらゆるビジネスアナリシス作業の中で最も重要なス テップである。」とされています。まさにDXにおいても最も重要なステップと言えます。
デジタルトランスフォーメーションの機会を特定:
ビジネスアナリストが行うことは次のようなことです。
ビジネスの目標の明確化:
まず、ビジネスの目標を明確に定義します。組織が達成したい結果や改善を明確にし、それがビジネスの成果や競争力向上にどのように寄与するかを理解します。
現状分析:
現在のビジネスプロセスや業務の現状を分析します。既存の課題やボトルネック、効率の低下、顧客体験の改善の余地などを特定します。データ分析やプロセスマッピング、顧客フィードバックの収集などを通じて、現状を客観的に評価します。
技術トレンドの調査:
デジタル技術やトレンドを積極的に調査します。業界の動向や競合他社の取り組み、新しいテクノロジーやツールの出現などに注意を払います。デジタル技術が提供する新たな可能性やビジネスへの影響を把握しましょう。
チームや関係者とのワークショップ:
デジタルトランスフォーメーションに関わるチームや関係者とのワークショップを実施します。ビジネス部門、IT部門、顧客、社内の関係者などが参加し、意見交換やアイデアの共有を行います。新たなデジタルイニシアチブや改善のアイデアを共同で探求しましょう。
マーケットリサーチ:
必要に応じてデジタルトランスフォーメーションの機会に関する市場リサーチを実施します。顧客のニーズや行動、競合他社の戦略、新興テクノロジーの採用状況などを調査し、市場の変化や機会を把握します。
ビジネスケースの作成:
特定したデジタルトランスフォーメーションの機会に基づいて、ビジネスケースを作成します。機会の具体的な説明、投資やリターンの見積もり、リスクや利益、実施計画などを含め、経営層や関係者に説得力のあるビジネスケースを提示します。
これらの手法を組み合わせてデジタルトランスフォーメーションの機会を特定し、組織にとって最適なデジタルイニシアチブを見つけることが重要です。また、デジタルトランスフォーメーションは継続的な取り組みであり、機会特定のプロセスは定期的に実施し、変化するビジネス環境に適応していく必要があります。
「ビジネスケース」において記載する項目の例です。
ビジネスケースは、デジタルトランスフォーメーションの機会や提案を経営層や関係者に対して説明し、投資や実施の合理性を示すための文書です。以下は一般的に含まれるべき項目の例ですが、具体的な内容は組織やプロジェクトの要件によって異なる場合があります。
- エグゼクティブサマリー:ビジネスケースの要点をまとめた概要です。投資の価値や重要性、主な結論を簡潔に伝えます。
- 背景と目的: デジタルトランスフォーメーションの機会や提案の背景となる問題や課題を説明し、目的を明確にします。なぜこの機会が重要であるのかを示します。
- ターゲットオーディエンス: デジタルトランスフォーメーションの機会や提案が影響を与える主要な関係者や利害関係者を特定し、彼らのニーズや期待を考慮に入れます。
- ビジネス価値とメリット: デジタルトランスフォーメーションの機会によるビジネスへの価値やメリットを具体的に示します。効率向上、収益増加、顧客満足度の向上など、定量的および定性的な成果を示すことが重要です。
- 投資と予算: デジタルトランスフォーメーションの実施に必要な投資と予算を詳細に記載します。開発費用、ハードウェアやソフトウェアの導入費用、トレーニングコストなどを考慮し、実施計画と関連付けます。
- リスクと課題: デジタルトランスフォーメーションの実施に伴うリスクや課題を明確にし、それらに対する対策やリスク管理の計画を提案します。
- 実施計画: デジタルトランスフォーメーションの機会の実施計画を詳細に記載します。スケジュール、リソースの割り当て、タスクの範囲や順序、マイルストーンなどを含めます。
- 成果の評価: デジタルトランスフォーメーションの実施後にどのように成果を評価するかを明示します。KPI(重要業績評価指標)や目標の設定、モニタリングおよび報告方法を示します。
- アクションプラン: ビジネスケースの承認後、具体的な行動計画を策定します。実施のスケジュール、関係者の役割と責任、コミュニケーションの方法などを含めます。
ビジネスケースは経営層や関係者に対して効果的に情報を伝えるための重要な文書です。上記の項目を適切に記載し、具体的なビジネスの課題や機会に基づいてカスタマイズすることが重要です
ビジネスケースに関しての詳細はBABOKガイドのテクニックを参照してください。
長くなりましたので、「デジタルソリューションの設計と最適化:」は次回に解説します。