前回、「ビジネスを設計する」フェーズの4つのセクションのタイトルを紹介しました。
- ビジネスコンセプトモデル
- ビジネスプロセスモデル
- ビジネスケイパビリティ
- ビジネス・パフォーマンス
今回は、ビジネスコンセプトモデルとビジネスプロセスモデルの関係について解説します。
ビジネスコンセプトモデルとビジネスプロセスモデルの関係
1. ビジネスコンセプトモデルとは?
ビジネスコンセプトモデル(Business Concept Model, BCM)は、ビジネスの主要な概念(エンティティ)とその関係性を表すモデル です。企業のビジネス領域を整理し、共通の言語を定義するために使われます。
例:
小売業のビジネスコンセプトモデルでは、以下のような概念と関係が定義されます。
- 顧客 は 注文 を行う
- 注文 は 商品 を含む
- 商品 は 在庫 により管理される
2. ビジネスプロセスモデルとは?
ビジネスプロセスモデル(Business Process Model, BPM)は、ビジネスの業務手順やフローを可視化したモデル です。業務の手順、役割、ルール、イベントの流れを明確にし、効率化や最適化を支援します。
例:
「オンライン注文プロセス」のビジネスプロセスモデルでは、以下のような流れが定義されます。
- 顧客 が 注文を行う
- システム が 在庫を確認 する
- 注文処理部門 が 注文を承認 する
- 倉庫 が 商品をピッキング する
- 配送 を手配する
3. 両者の関係
ビジネスコンセプトモデルは、ビジネスプロセスモデルの基盤となります
ビジネスプロセスの中でやり取りされる情報やエンティティ(注文・商品・顧客など)は、コンセプトモデルに基づいて定義されます。
例えば、「注文を行う」というプロセスは、ビジネスコンセプトモデルの「注文」と「顧客」という概念を扱います。
ビジネスプロセスモデルは、コンセプトモデルの動的な側面を示します
コンセプトモデルが「静的なビジネス構造」を表すのに対し、プロセスモデルは「その構造がどのように動作するか」を示します。
例えば、「注文」は単なる概念ですが、プロセスモデルでは「注文を行う」「注文を承認する」「注文(商品)を出荷する」といった具体的なフローが描かれます。
一貫性が求められる
両者が整合性を持たないと、プロセスの中で定義されている「注文」と、コンセプトモデルの「注文」が異なる意味を持ってしまう可能性がある。そのため、 ビジネスアナリストは、コンセプトモデルとプロセスモデルを統合的に設計・管理することが重要 となるます。
4. 具体的な活用例
例えば、ECサイトの注文管理システムを設計する場合:
ビジネスコンセプトモデルを作成
「顧客」「注文」「商品」「在庫」「配送」などの関係性を整理します
ビジネスプロセスモデルを作成
「注文受付 → 在庫確認 → 決済処理 → 出荷準備 → 配送」 の流れを定義します
プロセスとコンセプトの整合性を確認
- 「注文」はどの段階で確定するか?
- 「在庫確認」のルールは?
- 「配送情報」はいつ確定するか?
まとめ
- ビジネスコンセプトモデル は、ビジネスの主要な概念と関係を整理します(構造的視点)。
- ビジネスプロセスモデル は、それらの概念がどのように業務の中で動くかを示します(動的視点)。
- 両者を統合的に考えることで、プロセスの設計が一貫性を持ち、業務の最適化がしやすくなります。