4.5.3 分析して何が価値があるのかを決める
アジャイルなアプローチは、常に最終顧客の観点で最も価値のある仕事をいつでもデリバリーできることを確実にするために、連続的にビジネス価値を評価し優先順位をつけます。さらに、要求の背後の真の目的を質問し、ビジネスゴールを支援しないような要求に対しては必ず挑戦しなくてはいけません。アジャイルなアプローチは、不要な作業を最大化することを可能にし、本質的で価値のあるソフトウェアに限定して、開発初期から連続的に提供するのです。このセクションの中で概説されるテクニックは、継続的にプロダクトニーズの評価を促進します。
次のセクションから、この原則に広く用いられているテクニックについて概説します:
- バックログマネジメント、
- ビジネス価値の定義、
- 狩野アナリシス、
- MoSCoW優先順位、そして
- 目的アライメントモデル。
BABOKアジャイル拡張版、BABOK ガイドの中には同様に利用することができる他のテクニックがありますし、他のアドホックなテクニックを使用することもできます。
.1 バックログマネジメント(省略)
.2 ビジネス価値の定義(省略)
.3 狩野アナリシス
目的
狩野アナリシスは、アジャイルなチームがどのプロダクトフィーチャーまたは品質が、市場において重要な差別化要因で、また顧客満足をドライブするのかを理解することを支援します。
概説
狩野アナリシスは、顧客満足に最も大きな影響を及ぼす特徴を識別するのを支援します。それは極めて重要な特徴、もしくはもしなければ極端な不満を引き起こす特徴です。これは、製品を市場へリリースする前に、チームがどの特徴をインプリメントすることが重要かを決めることを支援します。
狩野アナリシスは、2つの軸の上にプロダクトの特性を点数付けします:
- プロダクトの中に特徴がインプリメントされる度合い(充足度)、そして
- インプリメンとされたレベルに起因する顧客満足のレベル(満足度)。
結果として生じるグラフは、2×2マトリックス上にプロットされます。
結果として生じるプロフィールに基づいて、プロダクト特性は次の3つのカテゴリーのどれか1つに関連付けられます:
- 基本的特性(当たり前の品質:清水追記)、
- パフォーマンス特性(期待の特性:一元的品質:清水追記)、そして
- 喜びの特性(魅力的品質:清水追記)。
このアナリシスはプロダクトに市場のユニークな位置を与える特性を識別しようと努めるために使用することができます。
要素
基本的特性(当たり前の品質:清水追記)
基本的特性はステイクホルダーが製品を採用することを考慮するのに絶対に必要なものです。もしそれがなければ極度の不満を引き起こします。それが最低限の受け入れ基準を示しますが、その特性を充足していたとしても、あるレベル以上には顧客満足を増加してはくれません。この特徴のために要求の引き出しにおける挑戦は、人がその特性を当たり前に思っているということです。したがって、明示的に尋ねられるまでは、その特性に関してあまり考えることはありません。
パフォーマンス特性(期待の特性)
パフォーマンス特性は、その特性のデリバリー(充足度)が増えれば増えるほど満足度が増すものです。それは、顧客がプロダクトに期待する特徴(スピードや使いやすさ、など)を表わします。このタイプの特徴に関する要求は、多数のステイクホルダーの心に最も容易に浮かぶものです。
喜びの特性(魅力的品質:清水追記)
喜びの特性は、顧客期待を著しくオーバーするか、顧客がその存在を認識していなかったものが可能になったと言うものです。その存在は長期にわたって劇的に顧客満足を増加させます。現在市場に出ているいずれのプロダクトもこれらの特性を持ち合わせませんから、ステイクホルダーはそれらに関する要求について思いつきもしません。また、その特徴がなくても特段不満に感じることもありません。
使用上の注意
特性か特徴がどのカテゴリー属するかを決定するために、顧客に、特徴に関する2つの形式の質問を使用して調査することができます:
- 機能的な形式:
この特徴または特性が製品の中にある場合、どのように感じますか。
- 機能障害の形式:
この特徴または特性が製品において不在の場合、どのように感じますか。
各質問形式への可能な答えは次のとおりです:
- 気に入った、それが良い(Like)。
- そうあって欲しい。当然。(Expect)
- どちらでもよい。(Neutral)
- 仕方ない。(Live With)
- いやだ。(Dislike)
カテゴリーの決定は、次のグリッドに2つの形式に関する質問への答えを写像することによっておこないます。
トップの列は、機能の不充足な形式に関する質問への答えを表わします。
左のカラムは、機能的な形式に関する質問への答えを表わします。
Like | Expect | Neutral | Live With | Dislike | |
Like | Q | E | E | E | P |
Expect | R | I | I | I | T |
Neutral | R | I | I | I | T |
Live With | R | I | I | I | T |
Dislike | R | R | R | R | Q |
E = 魅力的(Exciter)
P = 期待(Performance)
T = 当たり前(Threshold)
I = 無関心(Indifferent)
Q or R = 懐疑的または逆効果(意味のない回答)
このアプローチは再販される消費者用製品あるいは商品に最も適した方法で、プロダクトの広範囲の使用または採用を促進する要求の識別に注目します。顧客は特徴または特性が製品の中にあると期待するようになるので、特性のカテゴリーは時間とともに変わる傾向があります。魅力的な特性は、いずれ標準的な期待の特性および当たり前の特性に変化していきます。 (ATMが最初に導入された時、その斬新さに驚きましたが; 今では、顧客は銀行がATMを持っているだろうと考えています。)