【レポート】Cal-Polyプリスクール

【レポート】「Cal-Poly サマースクール事前研修」

4月24日(水)から26日(金)まで、今夏のカリフォルニア州立工科大学(Cal-Poly)のSEサマースクールの事前研修が開催されました。SEサマースクールは先週JUASで公演された一色浩一郎教授が毎年カリフォルニア州立工科大学で主宰されているもので、20年以上の歴史があります。以前はオブジェクト指向やWeb技術などのソフトウェア工学そしてプロジェクトマネジメントが中心でしたが、昨年からはメインテーマがビジネスアナリシスに移ってきました。

このサマースクールは日本企業のエンジニアを対象とし、毎年7月、8月の2ヵ月、カリフォルニアで実施されています。通算500名以上のエンジニアが参加されています。そして、この事前研修ではサマースクールに参加するメンバーが一堂に会し、チームビルディングと事前の学習を行います。

筆者は事前学習の一部を担当させていただきましたので、レポートします。

今年のテーマは「グローバル・次世代高度IT人材育成」です。
[企業の経営戦略に同期した情報システム構築のための]
超上流の要求マネジメント

事前学習(3日間)の主なAgendaは次の通りです。

4月24日(水)午後
研修ガイダンスとCalPoly研修内容説明および準備:一色教授

25日(木)午前:-CalPoly研修先輩からの話
午後:-BABOKの要求引き出しプロセスの演習: 清水千博(KBマネジメント)
-要求管理システムの使い方演習: 三宅和之氏(SPEI)
26日(金)
午前:-BAの実践ポイント:渡辺和宣氏(プロセスデザインエンジニアリング)
午後:-東京海上日動システムズでのBAの取り組み:横塚裕志社長

清水も研修の一部をお手伝いさせていただきましたので紹介します。

一色先生2

 

ソフトウェアエンジニアリングの要素技術の解説をされている一色教授。
今年のメインテーマであるビジネスアナリシスの重要性についての解説です。
数年前までのソフトウェアエンジニアリング中心のカリキュラムからビジネスアナリシスに変わってきています。それは特にリーマンショック以降顕著で、SEの仕事はインド、中国にアウトソースされエンジニアの進むべき新しい方向として新たにビジネスアナリシスが脚光を浴びてきました。その結果、エンジニア(Cal-Polyの卒業生)の就職先の給与は(BAだと1000万円以上も可能)、数年前のSEの就職先での給与(600万円中心)から大きく跳ね上がって、みなさんHappyだそうです。

 

 

一色先生5

今年のサマースクールの趣旨、目的、卒業の条件などを解説されています。
グローバル・次世代高度IT人材の必要性を訴えられています。参加者全員、真剣です。
スクリーンに映っているのは今年のSummer Schoolの案内です。
興味のある方は、下記URLのPDFをご覧ください。

 

 

 

 

 

清水1

BABOKの知識エリアの解説をしている筆者です。この後、「引き出し」のロールプレイを行いました。信頼関係を構築することの重要性と難しさはやってみなければわかりません。Learning by Doing(体験による学習)の実践です。弊社の認定コース「失敗しない要求開発」の一部を体験してもらいました。理屈では理解できても行うことのむずかしさを経験することは学習の見地からも重要なことです。

 

 

 

 

 

三宅2

ソフトウェアプロセスエンジニアリング社の三宅和之氏です。要求管理を担当されました。BABOKではシステム開発においては要求管理ツールを使用することが前提となっています(表面だけ読んでもわかりませんが)。

そのための要求管理ツール(RaQuest)の使用方法を説明されました。7月のSummer School(カリフォルニア)では実際にRaQuestを使用するので、参加者も真剣です。

 

 

 

 

 

 

 

横塚1

東京海上日動システムズ横塚社長の講演です。(26日午後)

「BAがなぜ必要か」:横塚社長は東京海上日動システムズとしてビジネスアナリシスが必須であることの理由を3つ挙げられていました。
一つ目は、ビジネスサイドはITの活用能力があまり高くなく、仕事の効率化程度のことしか考えられていなく、ITをビジネスの武器にまでしようという発想が乏しい。そしてビジネスサイドからの開発要件はそのビジネスの部分最適に限定されてしまっていて全体最適にはなっていない。BA機能を持たない限り、グローバルな競争には勝てない。
二つ目は、世界で勝っている企業とそうでない企業の差は明確。勝っている企業は常にお客様の視点で物事を見ていて、そうでない企業は自社の論理で物事を見ている。例えばiPod/iTunesは好きな音楽をダウンロードして楽しむという顧客ニーズを満足することにフォーカスした。別に音質が優れていたわけではない。Walkmanは音質(という自社の論理)にこだわりを持ちすぎていたので、新しい顧客ニーズを満足することができなかった。最近のビジネスで成功している企業は全て自社の論理よりもお客様の視点(顧客ニーズ)にフォーカスしている。
最後は、ビジネスサイドはロジカルにビジネスを分析する能力が低いこと。頑張る能力だけが目立ち、ビジネスプロセスを分析することができない。ビジネスプロセスを分析し最適化しないかぎりIT活用に結びつけることはできない。それができるのはビジネスサイドではなく、IT部門(東京海上日動システムズ)である。

以上、横塚社長のビジネスアナリシスに対する熱意の一部をご紹介しました。

古川1

実際にビジネスアナリシスを実践された、東京海上日動システムズの古川翔太氏のプレゼンです。

 

 

 

 

 

 

 

古川2

なんと27歳!! 実に若いビジネスアナリストです。

古川氏の講演内容は、VCPC(バリューチェーンプロセス協議会)での講演と同じ内容でしたので、その講演をレポートしている別のサイトを参照ください。

http://babooks.jp/news/issues/report_VCPC130308A.html

 

 

 

 

 

渡辺2

最後はプロセスデザインエンジニアリング社の渡辺和宣社長です。東京海上日動システムズに独自のビジネスアナリシス方法論GUTSY-4の導入支援を行い、古川氏をはじめとする若者チーム4名を指導されました。氏の開発したBA方法論GUTSY-4は今年の日経コンピュータ誌で連載(1月10日号から3月21日号まで計6回)されましたので、お持ちの方は参照ください。

日経コンピュータデジタル版をお持ちの方は下記URLをご覧ください。連載1回目です。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NCD/20121225/446529/?ST=ncdpc