どこでもビジネスアナリシス 7

7 実行体制と利用環境における「人」

7.1  実行体制の構築

経営改革や問題解決の実行概念としてビジネスアナリシスを活用しようと決心したならば、どうやって実行することが最も効果的なのかが課題です。 その場面においてもトップマネジメントのリーダーシップは重要です。 担当部門に任せて「うまくやれ」では進みません。 細かすぎる指図は弊害をもたらすことがありますが、実行の意志を明示して適切なアドバイスをすることは重要です。 実現する対象の大きさにもよりますが、実行のための組織作りは大切です。 実行場面において、実行概念や手法についての知識や経験が不足するならば、他の部門に応援を求めることや、必要に応じて外部の専門家やコンサルタントの支援を利用することも可能です。 これは、トップマネジメント自らが戦略立案の支援のために活用する場合と、実行実務の指導や支援として活用する場合とがあります。 いずれにしても、自分の組織内に限定して実行リソースを考える必要はなく、広く組織外の知識、経験、サービスや人材を活用する事は効果があり、広い視野からの実行組織が構築できます。

実行には3つのフェーズがあり、その第一は現実を認識し、何をどうするのか、そしてどうやって解決するのかという計画や戦略を立てるソフト面です。 すなわち現在の自分たちの状態の認識、実行目標の設定、目標実現の手段、などの構築です。 第二は、その施策を実行するための組織構築、指導者選任、技術選択、システム開発、などの実作業です。 第三は、完成システムの徹底運用とその結果としての新たな業務文化の構築やそのための人材教育です。 このような場面においても、トップマネジメントのリードがあれば、関連する判断や必要資源の裏付けなどが迅速容易に得られることになります。

 7.2 構築、実行、利用環境における「人」

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ビジネスアナリシスにおける「人」の重要性について最後に忘れられがちなのが、実行環境と利用環境における「人」の問題です。 システムを作るのは人であり、利用するのも人であるとの認識が基本です。 ここで「システム」とは、ビジネスを実行する規則や仕掛け、処理方法や手順の約束などであり、それをサポートする情報システムも含みます。 システムは人によって作られますが、作る人の意図と能力により、どのようなシステムにもなり得ます。 新しいシステム構築時にはそこに使われる処理論理や技術に注目が集まりがちですが、必要なのは利用の立場を考えた使い易いシステム、自然に問題解決のできるシステムが理想です。 システム利用の安全性を考えれば、フェイルセイフなシステム、フールプルーフなシステムが当然望まれます。 それは想定外でしたという見落としがあっては困るのです。 システムは信頼性が求められます。 そのようなシステムを総合的に考えられるリーダーや開発者がいるかどうかで構築されるシステムの価値が決まります。

一方、構築されたシステムを利用するのも「人」です。 同じシステムもその使い方で効果は全く異なります。 システムの価値は使う人の能力で決まります。 利用者の能力は適切なトレーニングで飛躍的に向上させることも可能です。 新しいシステムは誰にとっても当初は使い難く、その目的も理解されていない場合が多いといえます。 利用能力は訓練することで向上するばかりか、使い慣れることで新たな使い方を創造することにもつながります。 一つのシステムを真に使いこなせる利用者は、他の新しいシステムも容易にその使い方を理解できるようになりますし、不十分なシステムの機能を補って利用する能力まで持つようになります。 さらに、よりすばらしいシステムを提案するようにまで成長することもあります。 このようなトレーニングをするのも「人」でありトレーニングされるのも「人」です。 生徒が先生に変わることも珍しくはありません。 このような「人」の能力を育成しシステムを効果的に活用させることも、ビジネスアナリシスの大切な目的の一つです。

 BABOK®における人の取り扱い

ビジネスアナリシスの知識体系BABOK®においても、ステークホルダー(人)の取扱は極めて重要です。
「ステークホルダー分析を主導する」タスクにおいて、ステークホルダーを識別するのみならず、ステークホルダーの態度と影響力まで考慮することになっています。

ステークホルダーの態度

  • ビジネス目標、目的、ソリューションへのアプローチに対する態度
  • ビジネスアナリシスへに対する態度
  • 協力(Collaboration)に対する態度
  • スポンサーに対する態度
  • チームメンバーに対する態度

ステークホルダーの影響力

  • プロジェクトへの影響力
  • 組織内における影響力
  • プロジェクトの利益に必要な影響力
  • 他のステークホルダーへの影響力