6 ビジネスアナリシスの原点は「人」
6.1 意識と認識
ビジネス上の問題解決に関して、いろいろな理論や手法が提案され議論されていますが、それらの方法を実際の成果に結びつけるのは「人」であることが忘れられていることが多いのではないでしょうか。 新しいシステムを導入したと胸を張っている組織で、その効果が全く見えないことは珍しくありません。 必要なのは概念やシステムではなく、それを実行する人の意識や認識、そして熱意と行動です。 もちろん知識や判断力、実行能力が必要ですが、それらは意識や認識があって初めて生きてくるものです。 意識と認識は特に組織の上層部の人たちに大切であって、経営改革であれ、新製品や新事業の開発であれ、あるいは人材の育成であっても、トップマネジメント層の意識と認識が組織をリードしていくということは自明です。 ボトムアップのアプローチでは、現場の行動から経営改革が育ってゆきますが、そのような場合においてもトップの意識と認識があって初めて効果的に機能するのであり、そのような経営文化の下での議論であることを理解しなければなりません。 トップマネジメントの意識と認識がリードすることによって、組織全体の意識と認識が末端の現場まで活性化され、成長が加速してゆきます。 もし、すべてをボトムアップに頼るのであれば、完成までの時間がかかるばかりか、途中で拒否されて消えてしまうことも少なくありません。 担当者のモチベーションを維持することが困難になることさえあります。
ビジネスにおける意識や認識は二つの視点があります。 その最初は、ビジネスをどのようにしたいか、あるいはどのような問題を解決したいかというビジネス本来の目的や目標に関する意識や認識を持つことであり、その意思表示です。 第二は、どうやってそれを実現するかという概念や手法に関する意識や認識です。 まず、前者が決まらなければビジネスアナリシスは始まりません。 ビジネスアナリシスはこの後者を解決することが主体ではありますが、前者の設定が妥当であるかの評価や判断もビジネスアナリシスの対象であると考えるべきです。 ビジネスアナリシスの理論をいかに理解し、知識として身に着けても、それを実現する意識と認識がなければ宝の持ち腐れに過ぎないものになってしまいます。
6.2 必要なのは実行リーダーの人間性と行動力
ビジネス改革の推進や新たなシステム構築が決定されたときにそれを実現するために最も必要とされるのはそのリーダーの実行力です。 知識や計画だけでは現実には何も起こりませんので当然何の成果も得られません。 計画は実行されなければなりません。 ここでも大切なのは、その実行をリードするマネジメントであり、「人」なのです。 ここでの「人」は単なるマネジメントの能力や技術的能力でけではなく、人間としての能力が求められます。 システムを構築するのは人と人との連携であり、そこでは実行リーダーの人間性が大きく影響します。 人間性とは信念を持って行動する人間としての信頼性と知識と行動のバランス感覚ではないかと思います。 ビジネスでは一人でできることは限られていて、すべてに組織全体の人の協力が必要です。そこには組織全体が同じ意識をもって目標に向かって進む実行力と行動力が重要であることは明確です。 その実現にはその状態を取り纏めていくリーダーがあって初めて可能となります。 知識を成果に結びつけるのはやはり「人」なのです。
構築されたシステムの活用によって目標とする成果を得るためには組織の末端に至るまでの総ての人たちの高い利用意識と実行の能力が必要です。 そのための教育やトレーニングが必要な場合がありますが、その実行もリーダーの判断と行動力によります。 そのようにして培った質の高い人たちの集まりが完成した時に、その組織は最高の機能を果たすことができます。