どこでもビジネスアナリシス 9

9 ビジネスアナリシスの多様な効果

9.1 問題解決の効率化

ビジネスアナリシスの実践によって、ビジネスにおける種々な側面からの効果が期待されますが、その中心は本来の目的であり、主要機能である問題解決の標準的かつ効果的な実行です。 問題解決が必要なビジネスの場面において、まず決めなければならない一連の行動計画は、ビジネスアナリシスの基本的なプロセスと手法によって効果的に作成することができますし、その実行過程において発生すると予想される種々な課題の予測が可能なばかりでなく、それらの処理にも効果的に対応することができます。 このような問題解決における直接的な効率化は、実行プロセスや適用手法の選択が容易にできるという理由だけではなく、実行の習慣化によって適応能力が身についていることにもよります。ビジネスアナリシスは、迅速な実行プロセスの選択などの意思決定のほかに、迅速な実務行動とその中で発生する多くの課題への効果的な対応に大きく寄与します。

 9.2 経験、知識、手段の共有

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ビジネスアナリシスの適用を繰り返してゆきますと、その経験から生まれる多くの知識が蓄積され、さらに実行効果を大きくしてゆきます。 ビジネスにおいて発生する問題とその現象は多岐にわたり、類似の現象であってもその原因となる背景は多様であって、全く同じというものは殆どありません。 また、同じ原因を持つ問題が周囲環境の相違により全く異なる結果として現れることもあります。 このような多様な経験を分析することによって、原因と現象との因果関係の複雑性を学び、組織全体で知識として共有することによって、対応能力を向上させていくことができます。

問題解決の手段においても、同じ現象に対して同じ解決手段を適用しても、同じ結果になることはむしろ少なく、システムを運営する組織や人材、活用できるリソースの質や量など背景状況により大きな影響を受けます。 このような問題はビジネスの実体験を経て初めて理解できることであり、個々の人間が経験できる機会は限られていますので組織の内外において経験を共有することが大きな効果となります。

 9.3 問題意識の育成と定着

ビジネスアナリシスの活用が定着しますと、日常業務の状況を常に監視し、異常や変化の状況に関心を持つ習慣が生まれますので、経営計画からの乖離や問題の早期発見につながるとともに、どう対処するべきかの対応も迅速に行われるようになります。 このような問題意識は、意識改革の運動やキャンペーンを繰り返して初めて実行されるのが一般的であり、自然発生的に実行されることは大きな効果です。 さらに、ビジネスのシステムそのものの改善の指摘や提案、もっと大きな改革案に至る提案などが現場レベルから自然と発生する組織文化の育成に繋がっていくこともあります。 このような副次的現象は長期的視野からも非常に重要な効果です。

 9.4 共通概念の共有による意思伝達の充実と意識の向上

組織全体におけるビジネスアナリシスの普及に伴い、ビジネスプロセスや手法が統一されてゆき、組織内のコミュニケーションや議論が活発になります。利用される用語や指標も標準化が進みますので意思疎通が潤滑になります。このような現象は組織内のマネジメントシステムの改革を進め、計画の策定やビジネス管理の指標、目標などの整理が進み、組織全体のマネジメントが共通概念の基に統一され、活性化されます。 ビジネスアナリシスは個々の課題の処理や問題解決だけではなく、組織全体の意識統一や意思疎通、高度な経営システム構築の基盤構成にも大きな効果を果たします