33 解ける問題と解けない問題
33.1自分たちの努力で解決できる問題
ビジネスにおける問題は多種多様な形態がありますが、問題発生の背景から分類してみると解決の鍵が見えてきます。問題発生要因には、外部環境の変化、競争相手との関係などがありますが、その原因として最も多いのは自分たちの組織内の要因によるものです。それらの殆どは「解ける問題」です。内部の問題に気づかないで、外部環境の変化に原因を求めようとしていることが良くあります。問題の顕在化は、外部環境の変化とそれに対応する自分たちの判断や能力との複合的な結果なのですが、多くの場合は自分達の認識遅れや誤った判断、実行力の不足などに起因します。 その典型的な例は、いわゆる業務効率の向上や業務プロセスの改革です。これらの問題は外部からの抵抗や障害は殆どないにも関われず、実行が進みません。そのような組織には進まないことへの言い訳がありますが、そのほとんどは実行の意志と戦略があれば解決できる問題です。
33.2 競争状態になる問題
ビジネスの多くには競争状態があります。最も典型的なのは価格競争です。価格は商品の価値に対する利用者の評価で決まりますが、類似製品に対して、どのように製品の特長を出し、それを消費者に訴えるかが課題となります。安価であればよいと言う顧客もあれば、価格よりも製品の付加価値を評価する利用者もあり、どの顧客層に対象を絞るかの戦略が求められます。その他、技術力やデザイン、製品やサービスの信頼性、企業のブランド力やイメージ、など競争の対象となるものは多く、それらは日常の努力の積み上げの結果から得られる結果といえます。自分たちの特徴は何かを明確にして、市場に訴えることが重要です。
33.3 環境への対応が必要な問題
国の政治や経済環境、国際間の緊張、関税交渉、他国の動き、資源の動き、労働市場の変化、国際市場の動き、輸出入規制の変化、国内規制の設定、気象変動、などビジネスへ影響を与える要素は広範囲にわたります。このような変化に対しては常に自分たちのビジネスへどのような影響を及ぼすかを認識していくことが必要です。最近のビジネス環境はグローバルに敏感になっていますので、あらゆる動きが直接自分たちのビジネスに影響を与えることが少なくありませ。このような環境変化は個々の事業者のコントロールの範囲を越えていますので、早期に変化を捉えて適切な対応をすることや、問題領域から回避することで影響を軽減することにつなげ、あるいは有利に働く場合には積極的にチャンスを利用する判断が必要です。
33.4 解けない問題
自己努力により目標を達成できる課題は典型的な「解ける問題」ですが、無限の競争サイクルに入ってしまう「解けない問題」があります。自分たちに対抗する相手があって、その相手が自分たちの行動に対応して次の対抗行動を仕掛けてくるケースで、無限の競争サイクルになり「解けない」問題になってしまします。このような問題では、相手の対抗能力の限界を推測して、早期に自分の対応能力の限界を認識し、相手を攻略するか、あるいは競争を回避するかの判断により無限のサイクルに入ることを避けることが必要です。そのような行動により解けない問題を解ける問題に変えなければなりません。 相手が不特定多数である場合や確率的問題である場合もあります。 競争に失敗する確率やその場合のリスクを評価して、現実の競争場面から方向を変えて、より競争の少ない領域へ逃れること、あるいはその分野から撤退することも正しい解決の方法であることを理解しておくことも大切です。そのような場合には、「解けない問題」であることを判断するタイミングは重要な能力です。