49 失敗の経験を活かす
49.1 過去の失敗の分析は貴重な第一歩
「同じ過ちは繰り返すな」といわれます。過去の失敗にはいろんな教訓が含まれています。何が悪かったのか、なぜ失敗したのかを分析し、反省により多くの知識を得ることができるとともに、失敗の原因を認識し、多くの新しいアイデアが生まれる可能性があります。 失敗を分析してみますとその原因にふたつのパターンがあります。その一つは、基本的に何かが間違っていてそれに気づかないまま実行してしまった場合であり本質的に成功の可能性が低かった場合であり、もう一つは、実行時の周囲環境、実施条件、実行能力が適切でなかったり、思わぬ抵抗に直面したりした場合です。技術的に困難な計画や、論理的矛盾を含む実行計画は前者であり、実行の不適切なタイミング、実行資源の不足、良いリーダーの欠如、強力な対抗相手の出現などは後者になります。両パターンが混在している場合もあります。
49.2 実行環境は時間とともに変わる
ビジネス環境は常に変動していますので、失敗した類似の計画を異なる時点で実行すれば成功することもあります。計画を実行する場合、それが成功する条件を想定し、その状態であることを確認して実行しなければなりません。変化に強い柔軟な実行策が必要になります。 多くの場合、一つの仕掛けは、複数の行動から構成されますので、それぞれの行動の実行条件が整っていることの確認が必要です。実行環境は時間と共に変化しますので時間変化を待つことも可能であり、組織内部の問題であれば、実行可能な状態に内部環境を変えることが必要です。逆に、現在の環境に合った手段に計画を変える戦略もありますが効果の有効性の比較判断です。
49.3 失敗の回避はプロセスと環境と行動力との総合力
もう一つ失敗の大きな要因は行動力です。行動力にはいろんな要素があります。組織の能力を集中して実行力を高めるマネジメント力、周囲環境の変化を緻密に分析して行動内容を柔軟に対応させる判断力と実行力、総合的な組織の行動能力などがあります。過去の失敗を振り返ってみますと、方法も環境も揃っていたのに行動力が不足していたために成功に導けなかった事例が多く存在します。行動力があれば途中で発生する種々の障害に対して、効果的に対応できる能力がありますので失敗を回避できる可能性が高まります。 綿密な計画内容に基づき、適切な実行環境を構築し、積極的な行動をとることで、多くの失敗を回避できるはずです。行動力は実行リーダーの素質とマネジメント力による組織の総合力に依存するところが大きいと言えます。同じ環境の中でも、リーダーによりプロジェクトの成否が決まることは珍しくありません。
49.4 失敗した計画からの再挑戦は次の成功確率が高い
失敗に終わった計画の再挑戦においてよく言われることは、「ゼロからやり直す」という言葉です。 基本的な考え方が間違っている場合にはゼロクリアすることは必要かもしれませんが、何が失敗の根本的な原因であったかの究明をして、実行内容と実行環境との関係などを分析のうえ、知識として経験を活用することは今後のビジネス計画にとって有効です。失敗の中には多くの経験が含まれていますが、失敗は実務における貴重な実務実験でもあり、重要な体験であり、それらの経験や情報を活かしていくことは貴重な知識資源です。 同じ行動でも環境が変われば、全く異なる結果になり得ることを理解するならば、失敗した計画をベースにして新たな計画を再構築するならば、成功率の高い計画が構築できることは間違いありません。失敗した事例において実行された条件や環境との関係を研究することにより、ビジネスアナリシスの貴重な財産にすることができます。