60 リスクはどこにあるか
60.1 見えるリスクと見えないリスク
ビジネスには常にリスクを伴います。リスクには大きさがあり、大きなチャレンジには大きなリスクが伴うことがあります。リスクには見えるリスクすなわち予測できるリスクと、見えないリスクすなわちそこへ行ってみなければわからないリスクがあります。その性質と規模はさまざまです。その大きさもまたリスクです。視点を変えればリスクは何か不具合や障害が発生する確率であると考えればわかりやすいかもしれません。途中まで行ってみたらとんでもないものがあったと言うのが見えないリスクです。見えないリスクはあちこちに潜んでいます。何かありそうだがそれが何であるかがわからないのも見えないリスクでしょう。実行において、そこへ到達するまでにかかった思いがけないコストもリスクです。リスクはコストのひとつであるという考えもありますが、その大きさが事前にわからないところがリスクです。思いがけない成功をおさめたと言うプラスのリスクもあります。
60.2 内部のリスクと外部のリスク
組織の内部にもリスクがあります。内部のことはすべてわかっているはずだと考えると大きな間違いのもとになります。大きな内部組織を纏めることにはリスクを伴うことがあります。議論の結果が思わぬ方向に行ってしまうこともあります。計画していたリソースが集まらず挫折することもあります。計画した日程とコストを大幅に超えてしまうことがあります。これらはすべてリスクです。外部に対するリスクは多様です。思わぬ環境の変化、障害の出現、対抗勢力の出現、規制の発見、具体的には、新興勢力の出現、資材の高騰、国際情勢の変化、為替変動、などさまざまです。
60.3 リスクの大きさを予測する
リスクには大きさがあります。乗り越えられない大きさのリスクは予想できることが多く、初めから回避するでしょう。リスクは発生も、特徴も、大きさも、時期も確実ではありませんから確率的現象です。頻繁に発生するリスクは発生確率やその大きさを想定することはある程度可能であり、統計学的に活用されることがあります。小さなリスクをすべて避けることはできませんから、ある程度のリスクまでは発生することを承知で容認することは良くあります。そのような場合には最悪のケースを予測して容認の可否を判断することは賢明な策だと言えます。リスクは新しい行動の一部にのみ影響することも全体に及ぶこともあります。新たな改革において得られる価値からリスクによる損害を差し引いても投入する投資よりも大きければ実行するべきだとする判断もありますが、得られる価値はさまざまな形で現れますので、何を評価の基準にして判断するかは難しい問題です。利益は確保できたが信用を失ったと言う場合にはどう評価するか難しいところですが、何を目標に改革を実行したかで判断するしかありません。
60.4 リスクは変化する
ビジネス環境は常に変化しますので、リスクも常に変化すると考えなければなりません。新たな変化の実行策としてのリスクならば、その対応策の完成時における想定される将来リスクと、さらにその先のビジネスの継続を考えた将来の対応策を考えておくことは賢明です。もっとも、変化の激しい現在のビジネス環境においてそのような長期的な対策を構築することは現実的ではなく、想定の可能な範囲での将来リスクを考えておくことが正しいかもしれません。想定外のリスクを考慮することの困難性を考えるよりは、短期間で効果を刈り取れる対応策を実行することが、これからのビジネスのモデルであるとも言えます。