BBCカンファレンスの報告の続きです。
多くのセッションを振り返ってみますとビジネスアナリシスのトレンドが見えてきました。
2015年のBBCの特徴は2つあります。ひとつは既に周知のBABOKガイドの新バージョンv3です。そしてもう一つが意思決定モデル(Decision Modeling)の標準化です。BABOKガイドv3は言うまでもないことですが、日本ではほとんど知られていない意思決定モデル(Decision Modeling)について解説します。
大きな変化はOMGがDMN(Decision Modeling and Notation)を標準化したことです。2014年にDMN1.0が承認され、その改訂版DMN1.1が今年発表されています。そしてBBCカンファレンスでは新標準のDMN1.1の解説と、それをサポートするツールが大々的に発表されていました。
まず標準化をまとめた権威者のBruce Silver氏自らが、DMN1.1のプレゼンを行っていました。
やはり本場、本人の話がしっかり聞けることはうらやましい限りです。
派手さのないシンプルなプレゼンテーションですが、さすが大御所のセッションはそれなりの意義を感じます。
キーエレメントの意思決定要求ダイアグラム(Decision Requirement Diagram)です。この図が今後のビジネスアナリシスに影響を与えそうです。
実はBABOKガイドv3のテクニックにもしっかり掲載されています。
日本語版BABOKガイドv3のp207「意思決定モデリング」を参照してください。
このテクニックは日本でも有名ですね。
Bruce Silver氏はテクニカルな解説に終始されていたので、ビジネス的、社会的なインパクトはよく理解できなかったのが残念でした。
それを補うのがこの分野のもう一人の権威者James Taylerのスライドを紹介します。DMNがどれだけ有効化が分かります。
今までは、ビジネスルールをプロセスから分離することに注力をそいできましたが、それには限界がありました。ルールをどこまで抽出するべきか、その出口が見えなかったのです。細かなビジネスルールを挙げて行ったらキリがありません。ルールのためにビジネスアナリシスを行いかけていたかもしれません。
James Tayler氏いわく、必要なのは意思決定であり、ルールはそのための手段(言い過ぎかもしれませんが)のようです。意思決定に必要なルールのみ収集すればよい、とのことです。
ビジネスルールは頻繁に変更されるので、ビジネスプロセスからそれを分離して管理する必要がある(Ron Ross氏の主張)ということで、BRMS(ビジネス・ルール・マネジメント・システム)がもてはやされてきました。そうすることにより、プロセスは安定化しルールはビジネスに応じて頻繁に変更できビジネス価値の高いシステムを構築できると。
ところが、プロセスを複雑にしていたのはプロセスに内包されている意思決定(Decision)ということが最近の研究で明らかにされてきたのです。
むしろ意思決定をプロセスから分離するべきと言うのが左の図です。BRMS(ビジネスルール・マネジメント・システム)から、BRDMS(ビジネス意思決定要求マネジメントシステム)に変更することにより、プロセスはよりシンプルになり、意思決定は自動化されることになるようです。
このDMN1.1がすごいのはInputDataが自動的に入力できる構造になっている点です。ビッグデータ(とまでいかなくても)リアルタイムで入力される外部データに対して自動的に意思決定が可能になります。知識ベースとルールベースの組合せにより、人手を介することなくビジネス上の意思決定をしてくれるのが夢でなくなります。例えば、保険金請求の査定などは真っ先に実用化されるかもしれません。医療保険で、ドクターが判定する必要もなくなります。今まで人が意思決定をしていた分野の一部が自動化されることに一歩も二歩も近づいた感じがします。ある種のイノベーションが実現される予感がします。
ますます、BBCカンファレンスから目が離せなくなりました。