どこでもビジネスアナリシス (77)

77 目的と手段を間違えていないか

77.1 概念やモデルはあくまでも目的達成の手段

ビジネスの改革に関するいろいろな概念や手法が紹介されていますが、それらを適用しようとする人達の理解に誤解が良く見られます。例えば、ビジネスの新しいモデルや概念、あるいはシステムを導入することが目的であると考えられていることが多いのですが、本来の目的はそれらの概念やシステムを使って、ビジネス上の課題を解決したり、目標を達成したりすることが目的なのです。もっと簡単に言うならば列車に乗ることは目的ではなく、目的地に決められた時間までに到着することが目的なのです。

77.2 目的を達成する手段は多数ある

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目的地に行くには列車で行くこともできますが、自動車で行くことも、あるいは航空機で行くこともできます。これと同じように、ビジネスの目的を達成する手段は一般的には複数存在します。 列車でも、どのルートを経由するのか、または特急列車を利用するのが、普通列車に乗るのかなどの選択もあります。それにより必要なコストも必要な時間も異なります。ビジネス上の目的を達成するためにはこのように多くの選択肢がある中で、最適な方法を選ぶことが求められます。 ここで、最適とは何かということも考えなければなりません。時間を最小にするのか、コストが最少なのか、実行が容易なのか、成果が確実なのかなどさまざまな視点があり、それらの要求を満たす条件の中から選択しなければなりません。多くの場合、コストと速さとは相反することが多いと言えます。相反する二つの要素を同時に要求されるかもしれません。何をもって最適とするかの判断が求められます。

77.3 手段の最適な組み合わせを見つけるのもビジネスアナリシス

目的を達成するためには、いくつかの行動を順次実施したり、あるいは異なる行動を並行して処理したりしなければならないことが一般的です。すなわちいくつかの実行プロセスを組みあわせなければならないということです。このように多数の手段の中から最適な手段を選び出すことがビジネスアナリシスであるとも言えます。ビジネス上の課題は複数の課題要素の組合せから構成されていますから、その中でも最も鍵となる課題要素、あるいは最も解決の難しい要素は何かを考え、そこに解決策を集中します。実行要素には方法を決めて、必要な資源を投入すれば必ず実行できるものがある一方、異なる意見や利害関係の調整など合意を得るのに時間が必要となるものがあります。このような時間を要する課題要素を早期に発見し着手して全体工程のボトルネックにならないようにしなければなりません。調整には決定の方法など多様な手法がありますので、最も効果的な方法を選ぶ必要があります。特別な情報が必要かもしれません。結論が出ない場合には手法を変えなければならないこともあります。また、条件の変更や譲歩の限界を譲らなければならないこともあります。

77.4 同じ手段もその使い方で結果はまちまち

手段や手法の選択は多様ですが、選んだ手法も使い方によりその結果は異なります。手法の組合せが任意にできる場合には何を目標に最適な組合せをするのかを設定することが重要です。参加者の合意を得る場合には、一度に結論に至るように努力することもあれば、試行を重ねながらその結果に部分的修正を加えていって結論に至る方法もあります。 これは、設備やシステム構築でも同じことです。利用可能な人材、技術、コスト、時間、などの範囲とバランスを考慮しながら繰り返すことになります。 また、同じ使い方であっても、それを実行する能力により大きな差異が生じます。特に、複数の組織が関係するような課題の実行には、リーダーや調整役の人的能力が重要な鍵になります。行動力や技術力の問題だけではなくリーダーの信頼も大切です。