どこでもビジネスアナリシス (80)

80 課題の構成要素の構造を描く

80.1 課題はいろいろな要素の組合せ

DSC_0281

ビジネスには多種多様な課題がありますが、殆どの課題は単一の要素だけからなっているのではなく、いろいろな要素の組み合せから構成されています。 ビジネス環境が複雑になるにしたがってこれらの要素も複雑に絡み合った構成になります。どのような現象が背景で起きている可能性があるかを描き出してみます。例えば、事業の業績が低下した場合を考えますと、その構成要素は、市場の低迷、市場嗜好の変化、製品概念の変化、価格競争の激化、コストの増加、原材料の高騰、サービスの低下、信頼性の低下、などの製品や販売に関連する状況が発生している可能性がある一方、経済環境の悪化、国際関係の変化、資源材料の逼迫、為替レートの変化、などのグローバルな政治や経済に関連する要素など多様な背景現象が起きている可能性があります。これらの現象が実際にどのように変化しているかを定量的に捉えることができれば、事業への影響を推測することが可能になります。 多様な変化がビジネスにどのように影響するかを常に認識していることが大切です。 

80.2 課題とその構成要素との関係を考える

ビジネス課題の原因となるこのような多岐にわたる要素は、多くの場合その影響が相互に連鎖的に伝播し合い課題に影響を与えていることが一般的です。それらの要素は階層構造的に親子関係をもって次々と伝播していくことが多いのですが、ネットワーク的に相互に関係し、さらにフィードバックがかかりながら複合的あるいは反復的に伝わっていく場合もあります。その原点となる発生源の現象は、一つのこともありますが、複数の現象が同時に起こることもあり、一つの現象がいくつかの異なる要素に影響を与えて複数の異なるルートを通って課題となる現象に到達していることもあります。課題が発生した時には、その発生経緯と現在の状況をよく観察し発生原因から課題としての現象までの伝播の関係構造を描き出すことが対応策構築の基礎となります。一つの要素が、複数のルートを通って影響している場合にはすべてのルートを解明し、ルートごとの影響の程度を知ることは課題分析に有効です。これらの関係は、分かり易い図によって表示することにより理解を高めると同時に、その伝播ルートの重要性の判断にも役立ちます。原点となる事象の発生源は、組織間の壁のように自分たちの組織内部にあることも、強力な競合他社の出現や国際情勢のような外部環境の中にあることもあります。

80.3 構成要素の多くは多くの課題に共通

異なるビジネス課題において、多くの異なる構成要素が抽出できますが、それらは多くの場合他の課題にも共通する要素であることが多いと言えます。即ち、多くの課題で発生する基本的な構成要素は類似であるということです。即ち、事業計画や製品戦略などの自己の判断や戦略の視点、受注規模や製品原価、製品やサービスの信頼性、などのような自分たちの実行や行動の結果としての視点、市場の変化や経済状況、競合他社の動向など周囲環境で発生する現象としての視点などがありますが、異なる製品市場やビジネス形態によらず、殆ど共通な内容を持っています。さらに詳細な構成要素に分解していっても、同じように共通要素が見えてきます。

80.4 課題の発生要因や対応策にも類似性が多い

このように課題の構成要素を分解していくと異なる課題に対して多くの類似要素から構成されていることがわかりますが、課題の発生要因も同様に類似性があり、実務上の結果は実務環境との関係においてどのような具体的現象として現れているかの違いです。課題の構成要素、それらの発生要因の類似性を知ることによって、対応策の類似性を知ることも可能であり、類似事例の学習により対応の選択肢を絞りこむ手段にもできます。