初めてのビジネスアナリシス (1)

第1章 後を絶たない失敗プロジェクト

プロジェクトマネジメントとビジネスアナリシスの違いは何でしょうか。この章では最近発行されたPMBOK®︎(プロジェクトマネジメント知識体系)の最新版を見ながらその違いについて論じてみます。そもそもビジネスアナリシスとは何でしょうか。ビジネスアナリストとは何をする人なのでしょうか。

後を絶たない失敗プロジェクト

日経コンピュータSlide1_2020年3月9日

 

上図は日経コンピュータ(2018年3月)の記事の抜粋です。
1700件の調査結果では、約半分のプロジェクトが失敗しているとのことです。

日経コンピュータ_Slide2_2020年3月9日

スケジュール遅延の原因は仕様変更であり、その遅延プロジェクトで最も苦労したフェーズは要件定義です。

日経コンピュータ_Slide3_2020年3月9日

またコスト超過の追加作業の原因も要件定義が不十分とのこと。

日経コンピュータ_Slide4_2020年3月9日

また使えないシステムが生まれてしまう理由も「要件定義が不十分」となります。

 日経コンピュータ_Slide5_2020年3月9日

そして、上流工程のツケがテストや移行に回ることが指摘されています。

一体どうしてこのようなことが起きてしまうのでしょうか。多くのシステム開発の現場での共通の悩みのようです。
キーワードは「要件定義」ですね。

時折、失敗したシステム開発の案件が裁判沙汰になります。相当な金額の訴訟が多いですね。10億円以上のものが目立ちます。受注側の言い分は「発注者が要件を決めてくれないからシステム開発が失敗する。」というものが典型です。また発注者側の言い分は「システム開発のプロなのだから、受注側が要件定義まで担当してくれて当然だ。そのために専門家であるプロジェクト・マネジャーがいるのではないか...」となります。完全に受注側と発注側が責任のなすりあいをしている感じです。では一体だれが「要件定義」を行うのでしょうか。それがこれから本書で解説するビジネスアナリシスという専門活動であり、それを実践する人のことをビジネスアナリストと言います。プロジェクトマネジメントという専門活動をおこなう人をプロジェクト・マネジャーというのと同じです。

 結論的なことを言ってしまえば、上記の失敗プロジェクトはビジネスアナリストが不在な場合に多く見受けられるということです。特に受注側にも発注側のどちらにもビジネスアナリストがいないと失敗する確率が格段と高まります。裁判沙汰のケースではどちらにもビジネスアナリストが不在のことが殆どのようです。残念ながら裁判所はこの辺のことは何もわかっていないようです。大変不幸なことですが。ではビジネスアナリシスは何かということをプロジェクトマネジメントとの関係でみていきます。主にプロジェクトマネジメントの知識体系PMBOK®︎を参照しましょう。