アジャイル・ビジネスアナリシス(1)

 初めに

7月にIIBA日本支部からBABOK®ガイド・アジャイル拡張版V2の日本語版(書籍)が発行されました。
筆者は翻訳チームの一員として参画してまいりましたので、概要を解説したいと思います。

実は、BABOK®のアジャイルへの取り組みはこれが初めてなことではなく、V2と謳っているのでお分かりかと思いますが、2013年にBABOK®ガイド・アジャイル拡張版V1が発行されています。この時はBABOK®そのものがまだV2の時代でした。そしてアジャイルも普及し始めた段階で、スクラム、XP、カンバンなどソフトウェア開発に限定された使い方がされていました。すなわち、スクラムやXPの中でビジネスアナリストはどのような仕事をするのか、どんな価値を提供するのか、というレベルのものでした。それは当時の北米のBAにとって大きな評価を得て、BBC(世界最大のビジネスアナリシスのカンファレンス)では一大コミュニティを形成までされていたものです。

しかし、その後5年の間に世界(主に北米)では、単なるソフトウェア開発にとどまらず、あらゆる業務領域にアジャイル手法(アプローチ)が普及し、かつエンタープライズレベルにまで拡張されている状況になりました。
さらに、最近の変化の激しい・不確実で・複雑で・曖昧な(VUCA)環境の状況に迅速に(素早く)対応する解決策(ソリューション)を見つけ出すべきビジネスアナリシスにとって、ますます重要さを増す分野となっています。

まさに現在のコロナ禍の状況そのものかもしれません。
このような状況におけるビジネスアナリシスの在り方のひとつとしてアジャイル拡張が大きな価値を提供することが可能になります。

 1. アジャイル・ビジネスアナリシスとは何か。

アジャイル・マインドセットを伴う、アジャイルなコンテキストにおけるビジネスアナリシスのやり方をまとめたものです。激しく変化し、不確実で、複雑で、曖昧な(VUCA)環境において競争上の優位性を提供することができ、ソフトウェア開発を越えて、任意の事業領域に活用することができるものです。ですからまさに現在のコロナ禍の状況にはうってつけのアプローチといえます。

アジャイル・マインドセットで重要なのはレビュー(学習)とフィードバックです。3つのホライゾンにおいて、特定のホライゾンでのフィードバックが他の2つの意思決定に影響を与えます。詳しくは後述します。BABOK_アジャイル拡張版V2_Slide1_2020年8月17日

 

アジャイルデリバリー

アジャイル・デリバリーは迅速なフィードバックと短い意思決定サイクルを通じて価値を創造するビジネス戦略ですが、次のように2つの基本的な形式があります。

  • 反復型計画:
    短いサイクルで実施することにより、(短いサイクルで実施する作業に)焦点を当て、その作業に対するステークホルダーからのフィードバックと学習を多く得て、(後続の)作業の優先順位付けと洗練を行います。
  • 適応型計画:
    上記反復型計画に、長期計画への継続的な変更を加えたものです。定常的な計画と分析が行われ、最大の価値を提供するために作業の優先順位を決定し、洗練していきます。

 アジャイル・ビジネスアナリシスの活動の概要:

  • ビジネス・ゴールを達成するために組織戦略とイニシアチブをリンクします
  • 情報(ニーズ)を発見し、要求に変換し、伝えることにより、どこで価値を生み出すことができるかを明確にします。
  • 価値は誰のために創造されるのか、価値の創造に貢献できるのは誰か、価値の影響を受けるのは誰かを明確にします。
  • ステークホルダーがアプローチ、優先順位、トレードオフについて決定を下せるように支援し、制約事項、意見の相違、リスク、複雑さに直面しても、継続的な価値創造に焦点を合わせられるように支援します。

 アジャイル・ビジネスアナリシスの7つの原則です。(次回に解説)

  • 全体を見る
  • 顧客として考える
  • 価値あるものは何かを決めるために分析する
  • 例を使って真実を得る
  • 実行可能なものは何かを理解する
  • コラボレーションと継続的改善を促進する
  • ムダを省く