PMBOK(R)第7版の「価値」とビジネスアナリシス(1)

PMBOK(R)第7版における「価値」とビジネスアナリシス(1)

ご存知だと思いますが、PMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系)が第7版になりました。

内容は従来(第6版)までの知識エリア・プロセス中心の記述から大きく変わり、原理・原則の基づいた知識体系になりました。そのためかなり戸惑う人が多いのではないでしょうか。その原理・原則は13個あります。

従来のPMBOKガイドでは、成果物(プロセスのアウトプットとして)に焦点を当てていましたが、第7版では成果物よりも価値提供に焦点を当てています。
すなわち価値提供に焦点を当てることで、現代のプロジェクトを取り巻く複雑性や変化に対応し、真に成功と言えるプロジェクトを実現しようとしているわけです。
原理・原則のなかで、最も重要なのは「価値に焦点を当てる」ことです。
ただ、価値は通常プロジェクトが完了してから発生するものなので、その価値の実現にプロジェクトマネジャーが責任を持つことは難しいのではないでしょうか(特にウォーターフォールの場合)。

そこにはビジネスアナリストの関与が不可欠なことが示唆されます。プロジェクトマネジャーが退任した後に価値の実現を確認できるのはビジネスアナリストの存在が不可欠になります。

言い換えると、PMBOK第7版では、プロジェクトの成功(すなわち価値実現)にはビジネスアナリシス(またはビジネスアナリスト)との協働がより重要になったと言えるのではないでしょうか。

PMBOK第7版における価値の意味を深堀りすることでビジネスアナリシスとの協働の重要性を確認してみます。

PMBOKで、「多くのプロジェクトがビジネス・ケースに基づいて立ち上げられる。」と明記されているのでお分かりのように、プロジェクトはビジネスケースからスタートします。そのビジネス・ケースを作成するのは実はビジネスアナリストです。これはビジネスアナリシスの立場および欧米のプロジェクトマネジメントでは当たり前のことですが、日本のPMBOKの読者(PMP資格保持者)の多くはこの辺の事情をあまりよくご存じないかもしれません。PMBOKに書かれていることすべてをプロジェクトマネジャーが行うものだと誤解しているかもしれません。

PMとBAの関係_2020年3月23日

また、「プロジェクトの正当性はビジネス・ニーズとつながっている」とビジネス・ニーズの重要性を強調していますが、これも実はビジネスアナリストが定義するものです。ビジネスアナリシス知識体系(BABOK)第3版では、「ビジネス・ニーズとは、エンタープライズが直面する、戦略的に重要な問題または機会である。」、「ビジネス・ニーズの定義は、多くの場合、あらゆるビジネスアナリシス作業の中で最も重要なステップである。」と明言しています。すなわちビジネスアナリストがビジネス・ニーズを正しく定義することがプロジェクトの正当性につながるわけです。

すなわち、ビジネスアナリシスの立場でもビジネス・ニーズの定義は最重要で、それを明確にしてビジネス要求が作成され、成功要因等を追加明記してビジネス・ケースというドキュメントを作成します。プロジェクトは、ビジネスアナリストが作成したビジネスケースを基にプロジェクト憲章が作られそれからプロジェクトがスタートするわけです。

これだけ見ても、あたらしいPMBOK(第7版)はその裏にビジネスアナリシスの影響が極めて大きいことがお分かりいただけれると思います。ビジネスアナリストがビジネス・ニーズを定義しない限りプロジェクトは開始しないのです。