どこでもビジネスアナリシス 8

8. ビジネスアナリシスの三つの主要な機能

8.1 計画の策定

ビジネスアナリシスはどのような場面で最も効果的に活用できるのかを考えますと3つの主な適用シーンがあります。それらは、計画の策定、問題の解決、問題発生の回避、です。

ビジネスでは常に何らかの計画や戦略を策定し、実行し、また新たな計画にチャレンジしています。時間的に短期なものもあれば長期間にわたるものもあります。小さな計画もあれば、大規模な仕掛けもあります。 このような計画は、テーマの発見から計画の策定、そして実行と結果の評価までの一連の流れがあります。この流れの中で、順次何をしなければならないか、どのような手法を用いるべきかを判断し、実行していかなければなりません。 このようなビジネスの場面において、基本となる構成要素は殆ど同じであり、対象課題の規模や期間の大きさによらず、体系化されたプロセスと手段の中から効果的に選択していくことができます。 この一連の実行体系がビジネスアナリシスの概念であって、その活用により効果的に計画し、実行することができます。

 

8.2 問題の解決

ビジネスにおいて常に発生するのが種々の問題です。問題の現象は多岐にわたり、その原因はまちまちですから、その解決には個別に原因を究明して対応しなければなりません。 同じ現象の問題でも、その原因が全く異なることも珍しくありませんし、表面に現れない問題が原因になっていることさえあります。 計画の策定と比較して、問題の解決はその原因を追究し特定しなければならないという困難な課題が伴います。 これらの多岐にわたる問題の発生とその解決策の策定において、場面ごとにその対応策を基本から考えることは効率的ではありません。 問題の解決は時間との勝負が必要な緊急場面から、ある程度の時間の余裕が取れる場合まであり、その時間要求により対応方法も異なります。 また、応急処置のみを実行して、後刻恒久対策を講じる場合もあります。問題解決の機会を利用して同時に改革を実行しようという選択もあります。 このような多様な場面においても、問題解決において取るべきプロセスと手法はやはり一つの体系に纏めることができ、問題の緊急性や性格によりその中から適切な手段を選択し処理プロセスを構築していけば効果的、かつ効率的に対応できます。 これもビジネスアナリシスで可能な機能であり大きな効果です。 問題の解決も、計画の策定も、実は基本的には同じビジネスアナリシスの体系でカバーできます。

 

8.3 問題発生の回避

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計画の策定と問題の解決の陰に隠れて忘れられているのが問題発生の回避策への適用です。これは問題が起こる前にその原因を遮断し、あるいは回避していこうという重要な戦略です。 ここでも多くのアプローチがありますが、その一つは自分たちの経営状況やビジネス環境、市場環境や社会環境を分析予測して、今後のビジネスを危険領域から遠ざけること、または危険領域に入らないような仕掛けをつくることです。 また、常に状態変化を監視しながら動的にマネジメントを操作して危険を回避することで、迅速な事前行動が取れればその効果は倍加します。また、プラントや設備における部品レベルの変化や劣化状況を常時監視し、危険状態になる前に修復したり交換したりする予防保全の概念も同じ問題発生の回避における重要な手段です。 これらの問題回避のための情報収集とその分析、評価や対応策の構築においても、ビジネスアナリシスの手法は効果的に活用できます。 このような手段は、逆に使うならば積極的な攻撃のマネジメントにも利用できます。

ここではビジネスアナリシスの三つの視点を紹介しましたが、いずれにおいてもその解決の考え方のプロセスや手法はビジネスアナリシスの一つの同じ基礎、基盤の上にあることを理解してください。

 

BABOK®における問題解決: 基礎コンピテンシー

BABOK®の知識エリア「基礎コンピテンシー」には、カテゴリー「分析思考の問題解決」があります。

1. 分析思考と問題解決

このカテゴリには5つのスキルがあります。知識エリア「エンタープライズ分析」や「要求分析」のタスクを実行するために必須のスキルです。コンセプチャルスキルという言い方もできます。

  • 創造思考: 問題を解決するためには新しいアイデアを創出する必要があります。
  • 決定分析: 意思決定をするための基準を十分理解する必要があります。
  • 学習: ビジネス領域とその機能を理解し、組織の利益に結びつけるためには常に学習する必要があります。
  • 問題解決: 問題を定義し解決するためにはその真の原因を明確にし、ソリューションが問題を解決できることを確実にする必要があります。
  • システムシンキング: 組織内の人(People)、プロセス、技術(テクノロジー)などが相互に影響し、全体としてシステムを構成していることを理解する必要があります。