どこでもビジネスアナリシス(16)

16 「もしかしたらできる」は「殆どできない」

16.1 もしかしたらできるという期待は殆ど実現しない

人は期待をする性質があります。もしかしたらできそうだという期待をもちます。そのような考えはビジネス実務においてはとても危険なことがあります。特別な目的があってチャレンジしようとする場合で、具体的な成功のシナリオがあるときには別ですが、明確な方針や根拠がなければ実現する可能性は小さいと考えるべきです。もしかしたらできるという状態はできないという限界に限りなく近いと考えるべきでしょう。環境や条件が変わると実現する可能性が高まることがありますが、逆に可能性が低下することもあります。悪くても現状維持という場合であればリスクは少ないと言えます。 ビジネスでは仮定の上での期待に基づく計画は回避するべきです。 逆に、もしかしたらうまくいかないかもしれないという場合には、そのような状態に至るプロセスを分析してその状況を回避する対策を織り込むことが賢明です。この場合には実現の可能性が高いと言えます。

 16.2 確率の低いものを掛け合わせるとさらに悪くなる

確率論で自明のことですが、独立した複数の事象が同時に成功する確率は、個々の成功確率の積になります。例えば、明日の天気が晴れる確率をA、風が弱い確率をW,としますと、晴れて風が弱い確率はAxWとなります。 複数の独立した事象のどれかが成り立つ確率は個々の確率の和になります。天気が曇りの確率をBとしますと、天気が晴れか曇りの確率はA+Bとなりますので、天気が晴れまたは曇りで風が弱い確率は(A+B)xWとなります。 確率の低い手法を選ぶ場合には複数の代案を並行して実施することにより全体の成功確率を高めることができます。ビジネスでの手法の選択は、成功確率の高いものを選択するのは当然です。同じ手法でも実行環境や実行内容、あるいは努力により成功確率を高めることは可能です、それぞれ70%の成功確率をもつ二つの仕掛けが両者とも成功しなければならない場合には、その確率は 70%X70%=49% になります。これは実行する価値があるかを決めなければなりません。判断には、成功時の期待値の大きさにもよります。期待値とは得られる結果の実際の大きさです。例えば、成功すれば100円の利益がある方法の成功確率が50%ならば、その期待値は50円です。この方法の実行に必要なコストとのバランスも判断の材料になります。

 16.3 努力で優位性を高めることはできるが、限界を超えることはできない

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もしかしたらできるかもしれないという場合に、可能性がある場合と、可能性がないことに気が付かない場合とがあります。また、努力や工夫により可能性を高めることができる場合と、できない場合とがあります。 例えばじゃんけんを1回して勝つ確率は1/3ですから、続けて5回勝つ確率は1/3の5乗で1/243になりますが可能性はあります。ただ、これには努力によって勝つ確率を高める方法は論理的にはありません。相手の指の動きを瞬時に読むなどの方法はあるかもしれませんが、それは別とします。また,ほぼ同じ速さの5人で100m競争をする場合には、勝つ確率は1/5ですが、ここでは練習による努力によって、勝つ確率を高くすることが可能です。ただ、競争相手も練習をしているかもしれませんから結果を確約することはできません。 一方、100mを10秒で走ることを目標にした場合に達成することができるかどうかを考えますと、一般の人には限界を超える目標であって達成不可能です。このような達成不可能な目標を知らないで設定していることがないか、注意が必要です。

 16.4 工夫や努力により成功確率を高めることが可能

何もしなければ、現状で決まってしまうか、相手が対策をしていればさらに成功確率は悪くなりますが、何らかの工夫や努力により成功確率を高めることは可能です。ここでは相手の動きを読むことが鍵になります。