どこでもビジネスアナリシス (20)

20 問題はどこで発生するか

20.1 意識と認識の欠如

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ビジネス上の問題はどこにその原因があるかを多くの事例から集計してみたところ意外と多いのが、トップマネジメントや幹部層の意識や認識の不足や欠如に起因することが判明しています。最終責任者はトップであるというような倫理的な問題ではなく、日常の種々の業務の妨げになっているのが幹部であるという現実です。幹部を少し広く解釈するならば組織部門の責任者であり部門の意思決定の責任者です。 具体的に言うならば、責任者の不明確な指示、意思決定の曖昧さや遅れ、承認の放置、誤った判断、不適切な指示、現場の認識不足、などが要因となって、業務の停滞、混乱、無駄作業の発生、軌道修正の遅れ、失敗、などが発生したという指摘が多いのです。 このような意識や認識不足は上位管理者の不適切な判断を下位管理者が補完していないことも問題発生の要因にもなっています。

 20.2 能力や知恵の不足

上位経営層にも言えますが、能力や知恵の不足、言い換えれば考える力の不足がビジネスの問題を多く発生させていることは明らかです。全てに万能であることは不可能ですから、個人の能力が不足する場合には組織の能力を育成し、必要に応じて外部の力を利用することも能力や知恵であって、弱わければ負けるという方程式は正しくありません。考える力、即ち、思考力、計画力、企画力が不足すれば実行の開始点から成功確率は低くなったり、成功レベルが低くなりますので、開始時点のレベルは非常に重要です。現場レベルの能力の向上は、教育の努力により向上できますから、それに気づき実行する上位管理者をもつことも能力です。

 20.3 組織の境界

いろいろなところに境界があります、その中でも組織の境界はビジネスにおいて最も問題を発生しやすい境界です。その要因の一つは、組織は同じルールが適用される限界だからです。また、責任の境界でもあります。従って、組織の中での団結力は強く外部に対して自己主張し、権利を維持しようとします。組織をまたぐ合意を求めようとすると大きな抵抗が多々発生します。 もう一つの要因は、組織の境界を越えてコミュニケーションをする場合に発生する解釈の相違です。同じ言葉で表現されていても異なる理解を示すことが珍しくありません。異なる組織は異なる背景と環境で理解します。問題の発生を避けるために言葉の統一を試みますが、それでも解釈の統一には大きな努力が必要です。いくら文書で書いても、歴史的、文化的背景が障害になることがあます。

20.4 人間関係は重要な鍵

災害のような自然現象による問題発生は規模も大きく現象は明確ですが、被害を大きくした背景など何らかの原因が存在する場合にはビジネスアナリシス視点の分析と対応策が有効です。日常のビジネス上の問題発生にも種々な障害の発生が要因になっていることが多くあります。上記した意識や認識、能力、組織の境界などは典型的な要因ですが、法令や規則、文化や習慣、あるいは抵抗勢力の存在、グローバルに国際情勢や国際政治、経済情勢や為替問題、国際紛争や国家利権の主張などビジネスの上での障害の発生は無数にあります。

認識しておかなければならないのは、障害の発生には人間の関係が存在することが多いことです。小さなビジネス組織での問題から、社会活動一般、政治経済から国際情勢に至るまで、多くの人間関係が障害の発生に関与しています。 人間関係をマネジメントすることはビジネスを潤滑に進める上での重要な鍵であることを忘れてはなりません。

 

参考:BABOK®における基礎コンピテンシー: 【組織の知識】

定義:分析対象の組織のビジネスアーキテクチャの理解。組織のビジネスモデルの理解。組織構造、ビジネスユニット間の関係、意思決定を左右する人物。非公式なコミュニケーションと権限の系統、意思決定に影響する組織内政治の理解。

有効性の評価基準:

  • 組織で使用される用語や隠語の理解
  • 組織の提供する製品・サービスの理解
  • 組織内のSMEを識別できること
  • 組織内の人間関係と政治の理解