どこでもビジネスアナリシス (31)

31 組織を取り巻く課題-内部の課題

31.1 マネジメントのリードと実行の意識

組織内部の種々な障害については先に述べましたが、ビジネスアナリシスを実行する上での基本的な課題を認識しておくことは重要です。その原点は組織のトップマネジメントの実行に関する意識と実行に対する積極的なリードです。緊急な問題解決の場面では切迫した背景があり誰もが真剣に実行に取り組むのですが、人や組織の意識や着想により実行するビジネスのイノベーションを展開しようとする場面においては、組織全体の意識高揚のためにも、トップの意識とリードは最も重要な課題です。手法や技術以前の問題として大切です。

31.2 現場の意識と協調、協力、コミュニケーション

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トップの実行意識をサポートして、課題解決やイノベーションの実現に寄与するのは現場の意識と組織全体の協調と協力の行動です。実行担当者の積極的な活動がなければ何も実現しないと言っても過言ではありません。トップと現場の間の緊密なコミュニケーションにより、両者の意思の疎通をはかり、同じ目的に向かって具体的な実行体制を構築し、効果的な推進をはかることができます。この活動の中には高度な行動手法やビジネス処理手法があることは少なく、一般的には平易な手法の組み合わせによる決められた行動を着実に実行することが成功に導く鍵だと言えます。実行プロセスの途中においてはトップと現場とが協力して状況を分析し、その結果判明する必要な修正を迅速に反映するサイクルを繰り返すことによってさらに行動を加速できます。

31.3 必要なリソースをどこまで投入できるか-人材、資金、時間

課題解決を実行するには種々なリソースの投入が必要になります。もっとも重要なリソースは人材ですがそこには実行を誘導するマネジメント、種々な知識やノウハウとしての能力や技術力、実行力なども含まれます。組織内に不足する能力は外部リソースの活用や調達も可能です。さらにあらゆる処理行動や設備投資などの資金力が必要ですが、限られた資金を重要性に応じて最適配分すること、時間的に分散配分することも考えます。これも必要であれば組織外部との連携や分担協力、リースなどの一時的負担などにより支出を抑えることができます。 解決に必要となる時間も重要なリソースです。時間を補うためには並行して複数の行動を同時に実施して必要時間を短縮したり迅速な処理により処理時間を短縮したりして時間効率を倍化することも有効です。

31.4 実行の推進力-計画、推進体制、実行力、技術力

重要なリソースである人材の機能として種々な能力を要求されますが、具体的な実行体制の構築を基本として、多様な技術力や実行力が必要です。組織や体制の構築は実行の基礎であり、どのような計画をどのような体制で実行することが最も有効であるかを判断することは重要な能力の一つです。計画の策定はプロジェクト実行の中で最も基本的かつ重要な部分ですが、実行の成果や効率に注意が向き、計画の評価には注意が疎かになる傾向があります。同じ成果を得るにおいても、計画の良否により少ない資源とエネルギーにより達成できることを理解することは重要です。なお、実行途中での状況判断により柔軟に計画を修正する能力は、代替案の準備能力と共に大切です。

技術力を組織内部に維持することは特別な仕掛けを構築する上で重要ですが、外部から必要な支援を受けることも可能です。大切なのはそれらの技術能力をどのように組み合わせて効果的に活用するかの組織能力です。同様に、推進の実行力が最終的な成果を左右しますが、それは組織全員の意識の統一に基づく集中的な実行と、緊急な問題に対しては迅速な行動と判断による経過の評価と必要な修正能力が大切です。