9.5 人間関係のスキル
- 人間関係のスキルは、経営者、スポンサー、同僚、チームメンバー、開発者、ベンダー、学習と教育専門家、エンドユーザ、顧客、SMEなどの異なる種類の人々と関係し、協力し、コミュニケーションするビジネスアナリストの能力を示す。
- ビジネスアナリストは、ステークホルダーとコミュニケーションを促進し、リーダーシップを発揮し、ソリューションの価値を納得してもらい、変革案をステークホルダーに支援してもらうというユニークな立場にある。
- 人間関係スキルのコアコンピテンシの例:
・ファシリテーション
・リーダーシップと影響力
・チームワーク
・交渉とコンフリクトの解消
・教えるスキル
9.5.1 ファシリテーション
.1 目的
- ビジネスアナリストは、決定するか、問題を解決するか、アイデアや情報を交換するか、または要求の優先順位と性質に関して、コンセンサスに達することを支援するためにステークホルダー間の人間関係を促進する。ビジネスアナリストは、さらにセクション「9.5.4交渉とコンフリクトの解消」で議論されるように、交渉とコンフリクトの解消のためにステークホルダー間の人間関係を促進する。
.2 定義
- ファシリテーションは、参加者全員が討議中のトピックに関する見解を有効に明瞭に言葉で表現できるようにし、かつ議論の参加者たちがその言葉で表現した異なる意見をお互いに確実に認め合うために、グループ内の議論を促進するスキルである。
.3 有効性の判断基準
- ファシリテーターはプロセスの第三者であり、意思決定者でもなくまた、トピックの責任者でないことを参加者に明確にしている
- すべての出席者に参画を勇気づけている
- 中立性を保ち、どちらの立場もとらない、しかし、同時に、公平であるが、要求に応じ介在し、提案したり洞察を提供している
- 提案には耳を開く、現実を見る、アイデアを無視しない、他のものに自身で話しもらう、というような基本原則を確立している
- 議論の参加者が正確に互いの立場を理解すること確実にしている
- 的を得た、整理された議論をするためにマネジメントスキルとツールを使用している
- 議論が脱線して無関係のトピックにそれないように未然に防いでいる
- すべてのグループの利益、動機、目標を考慮している
9.5.2 リーダーシップと影響力
.1 目的
- ビジネスアナリシス情報およびソリューション選択肢の調査の間にステークホルダーをガイドする場合、ビジネスアナリストはリーダーシップおよび影響を及ぼすスキルを使用する。それはコンセンサスを作り上げ、変革中にステークホルダーからの支援と協働を促進する。
.2 定義
- リーダーシップと影響力は、共有ゴールと目標を達成するために共に働くことを可能にする方法で、人々の行動を動機づけることである。個々の動機、ニーズ、各ステークホルダーの能力を理解し、それがどのように有効に働くかを理解することが、組織の共有目標を達成することに関してビジネスアナリストの役に立つ。ビジネスアナリストが、ビジネスアナリシス情報を定義し、分析し、コミュニケーションする責任は、リーダーシップを発揮し影響を及ぼす良い機会である。単に形式的にビジネスアナリストに報告する人はいないだろうか。
.3 有効性の判断基準
- 必要な変革に対する抵抗が減少した
- 望ましい将来の状態を明瞭で感化するビジョンを用いて伝えている
- 他のものを感化してビジョンを行動に移している
- ステークホルダーに影響を与えて、相互利益を理解する
- 影響を及ぼす協働スキルを有効に使用している
- ステークホルダーの意思決定に影響を及ぼし、個人のモチベーションに関するより広い目標を考慮している
- 共有ゴールに向かうステークホルダーに影響力を与え、再構築すなわち大がかりな代替パースペクティブが理解され、受け入れられている。
【解説: リーダーシップと影響力】
大変興味深いコアコンピテンシです。いわゆるウォーターフォール型のプロジェクトマネジャーのリーダーシップと異なるかもしれませんのでご注意ください。
プロジェクトマネジャーの場合、プロジェクトマネジメントの全責任はプロジェクトマネジャーが持つと思いますが、BABOKのリーダーシップの定義は「共有のゴールと目標を達成するために共に働くことを可能にする方法で、人々の行動を動機づけること」となっています。目標はリーダーだけが責任をもつのではなく、チームメンバーも共有するのです。新しい考え方のリーダーシップです。最近のアジャイル開発のスクラムマスターやリーダーに共通する考え方であることを理解してください。
9.5.3 チームワーク
.1 目的
- チームワークスキルは、有効にソリューションを開発し、実装することができるように、チームメンバー、ステークホルダー、他の既定のパートナーとビジネスアナリストが生産的に仕事をすることを可能にする。
.2 定義
- ビジネスアナリストは、しばしば他のビジネスアナリスト、プロジェクトマネージャー、ステークホルダー、SMEと共にチームの一員として働く。それらの役割中の人々との関係は、任意のプロジェクトあるいはエンタープライズの成功のカギを握る最も重要な部分である。チームがどのように組織されて機能するかを理解することはビジネスアナリストにとって重要である。さらに、チーム力学、およびプロジェクトの様々な段階を通じてチーム進捗と共に、それらがどのような役割を果たすかを認識することは重大である。いつ、どのようにチームがプロジェクトライフサイクルを進行しているかを知り、それに適合することによって、チームに影響力を与えマイナスのインパクトを低下させることができる。
- チームメイトの信頼の構築と維持は、チーム全体の整合性に寄与し、チームがその最高の能力を発揮することを支援する。チームメンバーが環境をプラスに、信頼するチーム力学のために積極的に助長する場合、困難な決定および挑戦はよりやりやすくなる。
- チームのコンフリクトは一般的である。もしうまく扱えば、コンフリクトの解消はチームに役立つ場合がある。コンフリクトの解消はすべてのチームメンバーの立場、前提、観察、期待の検討に注目することをチームに要求する。そのような問題に対処することは、分析とソリューションの基礎を強くする有益な効果があるかもしれない。
.3 有効性の判断基準
- 協働の作業環境の助長している
- 有効にコンフリクトを解消している
- チームメンバーの間の信頼を開発している
- 高い達成基準をチーム間で共有することを支援している
- チームゴールに対する共有オナーシップの感覚を促進している
【解説: チームワーク】
「リーダーシップと影響力」と同様に、ゴールをチームで共有するという考え方です。有効性の判断基準の最後にある「共有オナーシップ」の意味をご理解ください。
9.5.4 交渉とコンフリクトの解消
.1 目的
- 時々、ビジネスアナリストは、共通の理解あるいは合意に達するためにステークホルダー間の交渉を仲介する。そうする場合に、ビジネスアナリストは、ステークホルダーとチームメンバーと共に働く関係を維持、強化することに留意しながら、コンフリクトと意見の相違を解決するのを支援する。
.2 定義
- 交渉とコンフリクトの解消は、トピックに関する異なる見解があることを認識し、違いを解消し、参加者全員の合意がある結論に達するのを支援するために参加者間の議論を仲介することである。成功する交渉とコンフリクトの解消に必要なことは、当該グループの基本的な利害を識別し、かれらの利害とかれらが主張する立場を区別し、当該グループがかれらの基本的な利害を満足するソリューションを識別するのを助けることである。ビジネスアナリストは、当該ソリューションの結果が全体的なソリューションとビジネスニーズと整合することを確実にしながら、これを遂行する。
.3 有効性の判断基準
- 伝える声の調子、態度、使用する方法、相手側の感情とニーズに対する懸念を考慮する交渉を確実に考慮するように計画されたアプローチ
- 両グループのニーズは必ずしも対立するとは限らなく、どちらも損をすることなく両方のグループが満足することが可能なことがよくあることを認識する能力
- 問題を確実に解決する客観的アプローチは人と問題を分けることである。そうすれば、本当問題は相手との協力関係を損なうことなく討議できる、
- 有効な交渉とコンフリクト解消は、必ずしも単一の独立したミーティングで達成されるとは限らず、何回かのミーティングが表明されたゴールを達成するために必要であることを認識する能力
9.5.5 教えるスキル
.1 目的
- 教えるスキルは、ビジネスアナリストがビジネスアナリシス情報、コンセプト、アイデア、問題を有効にコミュニケーションすることを支援し、そして情報がステークホルダーによって確実に理解され保持されることを支援する。
.2 定義
- 教えることは、他の人に知識、事実、コンセプト、アイデア、意見を獲得させるプロセスである。ビジネスアナリストは伝達した情報がステークホルダーによって理解されたことを確認する責任がある。ビジネスアナリストは、ステークホルダーに、調査しているニーズのコンテキストと価値に関して学習することにより、曖昧なものから明瞭なものを発見させる。これには、現在の曖昧な情報を伝える際に、視覚的、バーバル、文書化、運動型のアプローチの異なる学習スタイルに適合する教えるテクニックを使用する必要がある。意図は明瞭さを獲得するためにステークホルダー関与および協働な学習を引き出すことである。ビジネスアナリストは新しい情報をしばしば引き出し学習し、次に、意味ある方法でステークホルダーにこの情報を教える。
.3 有効性の判断基準
- ステークホルダーによって学習される情報のコミュニケーションに異なる方法を活用している、
- ハイ・レベルのステークホルダー関与による新しい情報を発見している
- その聴衆が学習することを意図した、主要メッセージについて明瞭に理解していることを確認している
- ステークホルダーが新しい知識、事実、コンセプト、アイデアを実証する能力を持っている