11.5 ビジネスプロセスマネジメント専門領域
- ビジネスプロセスを開発するか改善するコンテキストの中でビジネスアナリシスを実行する時、ビジネスプロセスマネジメント専門領域、のユニークな特性が強調される。
- ビジネスプロセスマネジメント(BPM)は以下の一連のアプローチである:
・組織が多数の機能分野を横断し顧客とステークホルダーに価値を提供する活動をどのように行なうかに注目する
・組織全体にわたる価値提供についてのビューの狙い
・プロセス中心のレンズによる組織のビュー - BPM変革イニシアチブは、組織で行なわれる仕事のやり方の改善により価値を提供する。
- BPMは、マニュアルプロセスと自動プロセスがどのように作成され、修正され、キャンセルされ、統制されるかを決める。
- プロセスの中心のビューの組織は進行中の努力として、また組織の進行中の管理とオペレーションの不可欠な部分としてBPMを扱う。
11.5.1 変革スコープ
- ビジネスプロセスマネジメントの専門領域に働くビジネスアナリストは、限定されたスコープにおける単一のプロセスに取り組むこともある。または、組織のプロセス全体に取り組むこともある。ビジネスアナリストは、組織の目標を改善し満たすためにどのように組織のプロセスを変更することができるかにしばしば注目する。
- 一般的なBPMライフサイクルはビジネスアナリシスのやり方を次のように変更する:
設計:
プロセスの特定とその現状(as-is)の定義と、将来の状態(to-be)に私たちがどのように到着するか決めることである。この状態間のギャップはステークホルダーがどのようにビジネスを経営するべきかという期待を指定するために使用してもよい。
モデリング:
現状(as-is)と将来の状態(to-be)の比較と同様にプロセスのグラフ表示とプロセスを文書化する。BPMライフサイクルのこのフェーズでは、その潜在価値を分析するのと同様に要求とソリューション設計仕様にインプットを提供する。プロセスのバリエーションによる潜在価値を分析、比較するために、シミュレーションは量的データを使用するかもしれない。
実行とモニタリング:
モデリングとプロセスの実際の実行において、同じタイプのインプットを提供する。実際のビジネスプロセスフローの結果集められたデータは非常に信頼できて客観的であるので、価値を分析し、設計改善に代替案を推薦する際に非常に強い財産となる。
最適化:
最適化は進行中の繰り返しまたは直前のフェーズを反復する行為である。ビジネスプロセスの実行とモニタリングの結果はモデルと設計を修正するために活用されるので、非能率作業はすべて削除され、より多くの価値が加えられる。最適化は、ステークホルダーとユーザ・コミュニティーから直接来る要求とソリューションデザイン定義の源泉となることがある。プロセスの最適化は、さらに示唆されたソリューション修正の価値を実証し、かつプロセスと製品改善のイニシアチブを正当化するのによい方法である。
.1 変革の幅
省略
.2 変革の深さ
省略
.3 提供される価値とソリューション
省略
.4 デリバリのアプローチ
- 組織スコープを横断するBPMイニシアチブのためのデリバリアプローチは、一連の戦術的方法で単独プロセスの改善に注目するものから、組織プロセス全体にわたりマネジメント分野全体を改善することに注目するものまである。プロセス改革の主な目的は、組織がステイクホルダーに価値を提供するためのビジネスプロセスを特定し、優先順位付けし、最適化するのを支援することである。
- 組織は、キー・プロセスの定期的アセスメントを主導し、プロセスの優越性を達成し維持するために進行中の継続的改善に取り組む。組織におけるBPMの成功はBPMをどのように実践するかに依存する。BPMを実践するために使用するいくつかのメカニズムがある:
・ビジネスプロセスリエンジニアリング(BPR):
エンタープライズを横断する主要プロセスの再設計を目指す手法。
・進化的変革の形式:
全社的目標を基にプロセスが設定され、次にそのゴールと整合したサブプロセス個別の変革を実現することを狙いとする手法。
・本質的な発見:
組織的なプロセスが不確定の場合、あるいはプロセスの文書化されたバージョンが使用中の実際のプロセスとは本質的に異なる場合に使用される手法。
・専用BPMSアプリケーション:
BPMSアプリケーションはBPMイニシアチブを支援し、かつプロセスモデルを直接実行するように設計されている。しばしば、自動化アプローチに整合するために組織のプロセスを変えなければならない。組織は、この変更が彼らの戦略と目標を支援することを保証しなければならない。
- プロセス改善アプローチはその原点、そのソリューションが主として組織的か(人ベース)、技術的か(ITベース)の点から分類することができる。次の組織文化の法則に基づいて応用すると、前節で言及したことから、組織はよりよくプロセス改善方法論を理解することができる:
トップダウン:
このイニシアチブは、典型的に上級管理層によるコントロールの中心から指揮され、エンド・ツー・エンドのプロセスまたはビジネスの主要部分をターゲットに、組織全体に及ぶ。
ボトムアップ:
このイニシアチブは、典型的な戦術上のアプローチで、個別プロセスと部門のワークフロー、あるいは組織のより小さな部分の中のサブプロセスの改善を目指す。
人中心:
主要な変革が組織中の活動とワークフローにあるイニシアチブ。
IT中心:
このイニシアチブは、プロセスオートメーションに注目する。
.5 主要な前提条件
- ビジネスプロセスマネジメント専門領域の主な前提条件:
・プロセスは、一般に情報技術システムによって支援される。しかし、そのシステム開発のほとんどはBPM方法論だけではカバーされない。ビジネスアナリストは、既存のITシステムに基づいた追加のビジネス要求(ステークホルダー要求の間違い?:清水)を提案することがある。
・BPMイニシアチブは上級マネジメント層に支援される。ビジネスアナリストは組織戦略に基づく追加のビジネス要求の提案に関与することがある。
・BPM方法論は組織戦略への厳密な統合を要求する。しかし、ほとんどの方法論は、そのパースペクティブのスコープ外の戦略の開発には取り組まない。
・BPMイニシアチブは組織において機能横断的であり、エンド・ツー・エンドである。
11.5.2 ビジネスアナリシスのスコープ
.1 変革スポンサー
- エンタープライズ全体に渡るBPMイニシアチブは、典型的に経営幹部により始められる。そのやり方はまず価値と結果に注目し、次にその戦略の目標に対応し、その目標を最も緊密に支援するビジネスプロセスにリンクする。
- BPMイニシアチブは、頻繁にビジネスニーズを生成する外的状況が引き金となる。エンタープライズレベルのビジネスアナリシスの実践はBPMイニシアチブ用のビジネスケースを開発するために適用される。
- プロセス改善は、典型的に組織の任意のレベルのプロセスマネジャーによって始められるか少なくともマネジメントされる。プロセスかサブプロセスのスコープは、通常プロセスマネジャーの権威を決定する。
.2 変革ターゲット
- BPMイニシアチブのありうる主要な変革ターゲット:
顧客:
あらゆるBPMイニシアチブにおける主要なステークホルダー。主な焦点は外部顧客である。しかし、内部顧客も考慮する。BPMが本来顧客中心なので、顧客はプロセス改革の効果の妥当性を確認するためにBPMイニシアチブの一部となる。イニシアチブの初期に顧客を巻き込むことは、プロセスデリバリのゴールが顧客の期待に確実に整合することになり、失敗のリスクを最小化する。
規制者:
いくつかの組織において、要求をコンプライアンス(法令順守)とリスク管理に進化させる任意のBPMイニシアチブのステークホルダーである。規制者は、公共の安全、透明性、雇用の機会均等、無差別のような懸案事項に関する法律の変化によりBPMイニシアチブを引き起こすことがある。
プロセスオーナー/プロセス責任者:
あらゆるBPMイニシアチブにおける重要なステークホルダーで、影響を受けるプロセスへのあらゆる変更に関する最終決定の職務権限を持つ。さらに、プロセスオーナーはプロセスパフォーマンスの測定に責任を負う。
プロセス参加者:
評価されるプロセスに直接あるいは間接的に参加するステークホルダー。この参加者は、プロセスのアクティビティを定義する。プロセス参加者の利益を確実に満足させるために、プロセスオーナーはプロセスのデザインの最中に彼らを取り込む。
プロジェクトマネジャー:
BPMイニシアチブを管理し、そのデリバリの責任を持ち、決定をドライブする。プロジェクトマネジャーは、プロセスアナリスト、プロセスオーナーとプロセスデザイナーで構成されるチームと共に働く。プロジェクト・マネージャーは、計画、スケジュール、コミュニケーション管理、変更管理、リスク管理に責任を負う。
実装チーム:
BPMイニシアチブの計画書をビジネスプロセスの機能に変換する。BPMイニシアチブの成功は、顧客のニーズを満たす機能をすべて統合する能力である。
.3 ビジネスアナリシスのポジション
- ビジネスプロセスマネジメントの専門分野で働くビジネスアナリストが引き受ける様々な役割:
・プロセスアーキテクト:
モデリングに責任を負い、分析して、展開して、モニターし、継続的にビジネスプロセスを改善する。プロセスアーキテクトは、ビジネスプロセスを設計する方法、およびそれらのプロセスを手動またはBPMプラットフォーム上の自動ビジネスプロセス実行方法に詳しい。プロセスアーキテクトは、特定のBPMイニシアチブに関して組織の目標に合致するため、どのプロセス知識、方法論、技術が必要なのかを決定するガイド役を果たす。プロセスアーキテクトは技術的に強化され実行可能なプロセス・テンプレートへビジネスプロセスを変換する。BPMイニシアチブによって、プロセスアーキテクトはビジネスパフォーマンスの管理あるいはビジネスアクティビティにマッピングするテクニックに集中する。プロセスアーキテクトは、標準の開発と維持、製品とサービス用参照モデル、ビジネスプロセス、KPI、クリティカル・サクセス・ファクタ(CSF)のリポジトリに責任を負う。そしてプロセス分析と変革のイニシアチブに関与する。
・プロセスアナリスト/デザイナ
深いプロセス知識、技術、興味を持つ。彼らはパフォーマンスの傾向と共にプロセスデザインを文書化し理解するエキスパートである。プロセスアナリスト/デザイナーは全面的なビジネスパフォーマンスを強化させるビジネスプロセスの最適化に興味を持っている。そのゴールは、詳細なプロセスについての理解を要求し、プロセス最適化のための必要な分析を行なうことである。それらは、AsIsのプロセスの分析および評価を行ない、代替えプロセスデザイン選択肢を評価し、様々なフレームワークに基づいた変革を推奨する。
・プロセスモデラ―
ビジネス(AsIs,ToBe両方の)プロセスを捕らえて文書化する。プロセスモデラは、頻繁に実装あるいは情報技術システムによる支援のプロセスを文書化するために働くプロセス・アナリストである。
.4 ビジネスアナリシスの成果
- ビジネスプロセスマネジメント専門領域で働くビジネスアナリストの成果:
・ビジネスプロセスモデル、
・ビジネスルール、
・プロセスパフォーマンスメジャー
・ビジネス意思決定
・プロセスパフォーマンスアセスメント
- ビジネスプロセスモデル
ビジネスプロセスモデルは、プロセスの分析のためのアウトプットと発点の両方に役立つ。それらは、現状(AsIs)と将来の状態(ToBe)のモデルに分割される。現在の状態のモデルは現機能をそのまま、改善しないでプロセスを描写する。将来の状態モデルは、改善オプションをすべて組込み、プロセスを見える化して構想を描く。現在の状態モデルを開発するメリットは、ビジネスアナリストがプロセス改善の影響を測定し、かつプロセスへの変革を優先的にすることを可能にすることにより、プロセスへの投資を正当化することである。 - ビジネスルール
ビジネスルールはビジネスプロセスをガイドし、ビジネス構造を主張するかまたはビジネスの振る舞いに影響を及ぼすように意図される。ビジネスルールは要求の引き出しとプロセス分析中に識別され、計算、アクセス・コントロール問題、組織のポリシーの発見に集中する。ビジネスルール分析は、ビジネス機能とプロセスがどのようにビジネスのゴールと目標の達成に寄与するのか洞察を提供する。ビジネスアナリストは、ビジネスルールの存在の理由を分析し、それを改善するかデザインを変更する前にビジネスプロセスへの影響を研究する。ビジネスルールは適切なところで、プロセスのパフォーマンスと厳密な関係がなければ、それがする決定を通じて個別のプロセスにマッピングされる。 - プロセスパフォーマンスメジャー
プロセスパフォーマンスメジャーはプロセス改善機会を特定するために使用されるパラメーターである。プロセスパフォーマンスメジャーはイニシアチブのビジネスニーズと戦略目標にプロセスが確実に整合するために定義され展開される。プロセスパフォーマンスメジャーは、品質を含むプロセスの多くの様相に扱うことができる。時間、コスト、俊敏性、効率、有効性、反応性、順応性、柔軟性、顧客満足度、速度、変わりやすさ、視界(種類)、手戻り、ボリューム等である。プロセスパフォーマンスメジャーの多くは、プロセスゴールが達成される程度と同様にプロセスの有効性と効率を測定することを目指す。事業を超えて展開した時、プロセスパフォーマンスメジャーは組織の中のプロセス文化の成熟度レベルを示し、組織を横断しプロセスパフォーマンスについての理解を共有することができる。 - ビジネス上の意思決定
ビジネス上の意思決定は、特定の種類のタスクまたはビジネスプロセス中のアクティビティであり、プロセスが実行する一連の選択肢の中からいずれかを決定する。意思決定は下さなければいけない(タスクかアクティビティを使用して)、そして実行しなければならない(しばしばゲートウェイまたはプロセスの分岐で)。意思決定は手動のこともあれば自動化されることもある。また、独立してモデル化することができるし、モデル化するべきである。それは、ビジネスルールを使用して記述するのが最良の方法である。 - ビジネスパフォーマンスアセスメント
任意のBPMイニシアチブの成功は、ターゲットとされたビジネスプロセスの実行を連続的に測定しモニターする意図と能力に基づく。
アセスメントは、静的な場合はアセスメントレポートとスコアカードで文書化することができ、または動的な場合ならダッシュボードで提供できる。アセスメントはプロセスパフォーマンスのゴールを達成するためにリソースを再度展開させて調整するために、組織の意思決定者に必要な情報を提供する。
11.5.6 メソドロジーとテクニック
.1 メソドロジー
- 適応的ケースマネジメント(ACM)
固定的でないか、静的でないプロセスで、多くの人の相互作用がある時に使用される手法。ACMプロセスは、実行ごとに異なる。 - ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)
組織と組織オペレーションの劇的な変革に帰着し、根本的に異なる将来の状態を達成するための、組織内プロセスの完全なリストラクチャリング。 - 継続的改善(CI)
ゴールやパフォーマンス目標に到達するように既存プロセスの継続的モニタリングと修正。変革する組織のパーマネント・コミットメントを表わし、その文化の重要な部分でなくてはいけない。 - シックスシグマ(6σ)
プロセスの結果における変動の排除に注目する継続的改善手法。統計を重視したデータ中心のアプローチ。 - リーン
プロセスにおいて、顧客にとって重要でない仕事(ムダ)、を排除することに焦点をあてた継続的改善手法。 - 全社的品質管理(TQM)
組織のプロセスが内部・外部の顧客・ステークホルダーに、最も高い品質の製品・サービスを提供するべきであり、またこれらの製品またはサービスが顧客とステークホルダーの期待通り、または期待以上のものを提供するという根本原理を守る経営哲学。 - フレームワーク
特にプロセスアーキテクチャーに使用される多くのフレームワークがある。これらのフレームワークの多くは業界に特有で、その業界の中で使用される一連の共通のプロセスについて記述する。これらはBPMプロジェクト用の業界特定のテンプレートとして役立つ。 - 制約理論(TOC)
3つの変数の管理により組織の業績を最適化することができると考える手法: プロセスのスループットはそのスループットを生産するためと製品在庫の運用コスト。プロセスのパフォーマンスはいつでも、1つの主要な制約によって支配される。また、プロセスはその制約のパフォーマンスの改善によりのみ最適化することができる。
.2 テクニック
(後述する)