どこでもビジネスアナリシス (36)

36 なぜそうなのかを考える

36.1 意見やニーズには背景がある

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ビジネスアナリシスの実行には多くの情報が関係します。それらの中には一般的な情報の他に、意見や要望、システムに関するニーズなど、関連する組織や人びとが発信する情報が重要な意味を持つことが多いと言えます。 そのような情報は、意思決定をしたり、システム構築をしたりする基礎となりますが、多くの情報の中には、互いに不整合であったり、一般的な常識から離れた意見やニーズなどが含まれていたり、中には全く反対の意見が含まれていることは珍しくありません。 そのような情報について、誤りではないかという確認をしなければなりません。意見やニーズなどにはそれが発信された背景がありますから、表面的に指摘されている事項が納得できない場合には、「なぜそうなのか」という背景を知り指摘内容を理解することが重要です。指摘事項が誤りであることの発見にもつながります。 また、同じ表現の情報にもその背景が全く異なることもありますので、注意が必要です。

36.2 理想や期待と現実

多くの関係者が関与してくる問題の解決やシステム開発においては、相反する意見や要望、あるいは理想的な目標などが提示されることがあります。 一般に、幹部から出る指示や要望は高度な目標が設定され、現場からの要望や方針は確実性を基本として具体的であることが多いと言えます。 また、外部との関係ではサービスの提供者と利用者との関係や、幹部と現場との意見の相違は常に発生します。異なるステークホルダー間の異なるう意見の調整には当事者間の議論と合意により落としどころを決めなければなりませんが、問題の置かれている環境と現実を理解して、実行可能な判断が求められます。理想を求めて、実行困難な目標を設定したのでは問題解決に至らなばかりか無駄なエネルギーを使うことになります。理想と現実とのバランスの中で、真の目的を着実に解決するプロセスを選ばなければなりません。

36.3 異なる要求のどちらを選択するか

異なる意見や要求に関して、どのような判断をするかは、その場面における重要性によって選択は異なります。意思決定の判断基準としては、内容の重要性、実行能力、時間的制約、コスト、などに関して、当該プロジェクトの基本的目標に照らして判断されるべきです。 ここで判断の基準として大切なのは、「なぜそうなのか」という背景の理解です。 期待や要求に関しては、深く検討された結論である提示と、単なる希望的期待などが混在します。 それらの要求の背景が妥当であればそれを実現する方向で調整の努力をしますが、合意に至らない場合には責任者の判断に任せるしかありませんが、決定の責任者は実行可能な選択をしなければなりません。

36.4 第三の結論もある

多様な意見や要望がある中での意思決定は、それぞれの意見の背景を理解することにより、より効率的に調整できる可能がありますが、提起されている意見のいずれかのケースという選択ではなく目的を達成するための第三の意見を構築することも可能です。その場合にも大切なのは「なぜそうかのか」という背景状況を認識し理解することが重要になります。このような調整は常に行われていますが、関係者たち相互の理解と、協調、最終的な目標に対する意識の一致が大切です。 システムを構築することではなく、ビジネス実務の目標達成が本当の価値であることを理解するならば、個々の主張にこだわることなく、関係者相互の理解により現場で効果的、効率的に利用できる仕掛けやシステムを構築することに全員が協調しなければなりません。